【星色デザイア】初めての東方アレンジを解説してみた【歌詞編】
どうも、東方同人音楽サークル「ギャラクティック・リボルバー」代表のフォカです。先日の第二十回博麗神社例大祭で初の東方アレンジシングル「Borderless Phantasm」を頒布しました。このカップリング曲である「星色デザイア」は、正真正銘僕が初めてアレンジ・作詞をした曲となります。今回は、この曲について自分で解説していきたいと思います。
まあこのnote読んでるような人は大体すでにCDを購入済みかと思われますが一応BOOTHのリンクを張っておきます。DL版で300円です。
※この記事は後編です。前編はこちらから。主にアレンジの解説です。
楽曲コンセプト
表題曲の「Borderless Phantasm」が東方になぞらえて現実のことを歌う曲であるのに対し、「星色デザイア」は純粋な霍青娥のキャラソンとなっています。
僕はデザイアドライブ及びそのアレンジをこよなく愛しており、(過去note参照)そのため、初めての東方アレンジはデザイアドライブと決めていました。
この曲で伝えたかったことは主に3つです。
①霍青娥の可愛さ(ただし、聊斎志異前半のものに限る)
②デザイアドライブの旋律の美しさ
③「欲望」と「星空」という、デザイアドライブ2大テーマの共存
この二つの観点から構想を練っていきました。この観点を元に考えた歌詞の解説を行っていきます。
歌詞解説の前に
「聊斎志異」とは
そもそもこの曲を作ろうとしたきっかけは昨年の今頃にふと霍青娥の元ネタ「聊斎志異」を読んでみたところから始まります。
「聊斎志異」(りょうさいしい)とは中国の古典(といってもせいぜい清代、1600~1700年ごろ)小説集で、そのうちの一説「青娥」という物語に霍青娥が登場します。(厳密には霍の苗字を引き継いだ記述はない)
大まかなあらすじはこちらの記事から引用させていただきます。
「青娥が人妻である」ということはどこかで聞いたことがある人も多いでしょう。その夫にあたるのが「霍桓」で、「星色デザイア」においても非常に重要な役割を果たしています。青娥の壁抜けの能力も元々は桓の持つ鑿によるものだったわけですね。(まあこれも貰い物なのですが)
僕は実は元々東方Projectにおける霍青娥というキャラクターはそこまで好きではなかった(というより嫌い寄り。なぜなら性格と倫理観が終わっているため)のですが、これを読んでから青娥の新たな一面に気が付きました。このあらすじではわからないかもしれませんが、物語序盤における青娥って割と純粋無垢なんですよね。(実際のところ諸説。俺が霍青娥に対して幻想と理想を抱きすぎているだけかもしれない。でもまあそれが許されるのが二次創作ってことで)
星色デザイアのストーリー
この聊斎志異を元に「星色デザイア」のストーリーを構築しました。
ここでは実際に歌詞すべてを見ながら説明していきます。
星色デザイアのストーリーは一番と二番で対称となっています。登場人物は青娥と霍桓の二人のみで、視点は常に青娥です。
一番:「桓」が「青娥」を迎えに行く(聊斎志異前半に準拠)
二番:「青娥」が「桓」を迎えに行く(オリジナル)
一番については基本的には聊斎志異半に準拠しています。箱入り娘(諸説)である青娥を桓が「迎えに来て」「解放」していたり、道教の道に進んだ青娥を再び呼び戻していたりします。
二番については、ここでは逆に青娥が桓を迎えに行く構図を取っております。これは聊斎志異には登場しない話の流れであり、妄想純度が高めです。(ちなみに「迎えに行く霍青娥」というのははにぽけの熱帯夜に影響されているところが結構あります。あの曲の青娥はかわいくて良いやつそうなので好きです)
非常に単純ですが、全体のストーリーはこの二つ(あと落ちサビ)となっています。まずはこれを踏まえてもう一度歌詞を読み返してみてほしいです。この青娥は結構かわいいんじゃないでしょうか。純粋に恋愛している乙女ですよ。
詳細解説
作詞においても既存のデザイアドライブアレンジから共通する部分・頻繁に使われる言葉を掘り出し上げました。具体的には以下のようなものがあります。
・Bメロのメロディは反復であるため、歌詞も対比構造を多くとる
・「壁」という言葉は頻出。特に一般的な曲で「壁」という言葉が出てくるとたいていの場合は「超える」「壊す」という表現が来るが、デザイアドライブアレンジ(あるいはユアンシェン)においては「すり抜ける」という表現が見られるのが特徴的
・「欲」「星」「道(みち)」「道(タオ)」などといった、デザイアないしは道教にまつわる言葉も頻出
これらの前提知識を元に詳細な解説を行っていきます。
1番Aメロ
一人きりでいた青娥の元に桓が現れる。これは「聊斎志異」に準拠する話です。物語中、霍桓は二度(冒頭と、青娥がいなくなった後)青娥を迎えに行きますが、前者のものをイメージしています。
1番Bメロ
「壁は壊さないの 超えもしないの すり抜けてしまえばいいの」
この歌詞、めちゃくちゃ気に入っているんですよね。気に入ってるので2番でも使いました。困難に対して真っ向から立ち向かうわけではなく「抜け道」を考える。そんな霍青娥の性格を、能力と交えて歌っています。さらには前述の「デザイアBメロ特有の反復」の条件も満たしています。
1番サビ
「客星が」
ここはわかりやすく「霍青娥」とかけています。このように言葉遊びをしたくなったのはDESIRE OVERDOSE(A-One×魂音泉)の影響が大きいです。あの曲では「覚醒が」と「霍青娥」をかけていますね。僕は元々このデザイアドライブアレンジには星の要素を入れたかったので「客星」という言葉はピッタリでした。(一応客星がわからない人のために説明しておくと、いわば超新星爆発の古い呼び方です。ちなみにこれは後付けというか偶然でしかないのですが、聊斎志異成立時期にも中国で客星が観測されたりしたそうです。面白いですね。)
さて、1番は「霍桓が青娥を迎えに来る」ストーリーであるということは既に説明済みです。このサビもそれに準じていることがわかるでしょう。ところで、サビの終わりは「あなたのその鑿(のみ)で私を迎えにきてよ」となっています。ここは結構重要な伏線なので覚えておきましょう。
(ちなみに「ねぇ デザイア」の反復がスターオーシャン(TaNaBaTa)の「ねぇ ダーリン」と類似していることに気づいたのはボーカルミックスに突入したあとのことでした。許してケロ~~~)
2番Aメロ
2番からは1番とは対比的に、「青娥が霍桓を迎えにいく」ストーリーとなっています。これは聊斎志異には存在しない話なのでオリジナルというかifの物語のようになっています。このあたりの青娥はなかなかどうして、可愛らしい感じに描けているのではないでしょうか。おれも青娥にガチ恋しようかなと思いましたが普通に霍桓が強すぎてやめたことがあります。
この辺りはデザイアドライブの「欲」にも焦点が合っているものとなっているでしょう。
2番Bメロ
冒頭のフレーズは1番と同じです。中々執着が強くなって来ているようにも見えますが、あくまでも青娥は純粋に恋をしているだけです。極めて純真無垢です。
「枝の馬」「竹の竿」についてはどちらも聊斎志異に出てくるワードですね。
2番サビ
基本的には1番サビとの対比になっています。その中でも特に重要なのが最後の「私の簪(かんざし)で今すぐ迎えに行くの」です。ここは1番では「鑿」となっていましたが、ここでは「簪」となっています。この理由について考えてみてください。
ここは、「鑿」と「簪」で、主体の変化を表現しています。すなわち、ここの単語の違いで「1番は桓→青娥だったのが、2番では青娥→桓」となっていることを表現しています。霍青娥が壁掛けの能力を持っていることは今更語るまでもないでしょう。そして、その壁抜けの能力が頭の簪によるものであるということも皆さんご存知かと思います。この簪が実は鑿であるということも、まあ皆さん知ってるんじゃないかなーと思います(見た目通りですしね)
さて、ここで聊斎志異の話をおさらいしましょう。元々、壁抜けの能力は青娥ではなく霍桓が持っているものでした。そして、それは不思議な仙人から譲り受けた鑿の力によるものでした。このとき、すなわち星色デザイア1番においてはこの「鑿」はまだ霍桓の所有物です。そのため、「迎えに行く」主体となりうるのは青娥ではなく霍桓なのです。
これを踏まえた上で2番に移ります。聊斎志異の中盤以降は、「鑿」は青娥が所有し、青娥が壁ぬけの能力を手に入れています。このとき、青娥はこの「鑿」を「簪」として利用しています。実際、東方Projectにおける霍青娥もこの話に準拠して、鑿を簪として身につけていることとなっています。とにかく、この「壁抜けの道具」が「鑿」から「簪」に変わったということは、すなわち「壁抜けの能力」を持つもの、ひいては「迎えに行く主体」が霍桓から青娥に移り変わったことを示しています。
なぜここの部分を殊更に強調しているか。それはこの曲の構造(1番と2番の対比)自体が、ここの鑿→簪という変化を記述したかったためです。この曲の作詞に取り掛かるとき、大まかなテーマは決めてありました。
聊斎志異のストーリーをなぞり、純粋で可愛らしい青娥を星空と交えて描く
というものです。実際のところ、具体的な構想に取り掛かる前に、作詞に使えるフレーズを洗い出すところから始めました。そこで注目したのがこの「鑿」と「簪」でした。どうにかしてこの二つを区別して歌詞に落とし込めないか。そう考えて思いついたのが、
1番と2番で迎えに行く主体を転換させる
というストーリーでした。つまるところ、鑿→簪の変化がこの曲の根幹を担っているわけです。そのために、このnoteでもここの解説にここまで長い枠を取らせていただきました。
落ちサビ
ここは青娥の内に秘めたる欲望を歌っています。あくまで胸の内に秘めているだけなので、誰にも伝えていません。そのため、ここの落ちサビではいわゆるラジオボイス(電話やラジオを通したように、あえて音質を悪くする)という加工をボーカルに対して行っています。
さて、ここまで僕は「青娥の純粋な恋心」を描いて来たと言いましたが、そうは言ってもやはり邪仙。聊斎志異の終盤に関しては見るに耐えない倫理観のなさですよこの女。なんで夫連れて二度子供捨ててるんだよ頭おかしいんか???
という愛憎はさておき、とにかくここでは青娥の内なる思い、すなわち「他の全てを捨ててでも霍桓と一緒にいたい」という感情を歌っています。
ちなみに「あなたがくれたもの」は「鑿=簪=壁抜けの能力」であると解釈することもできますし、「欲や恋心」と捉えることもできます。
ラスサビ
1番と2番のサビの後半と同じものとなっています(オケは微妙に変わっていますが)
さて、落ちサビを聞いた後ではここの歌詞はやや意味合いが変わって聞こえるのではないでしょうか?最後の解釈のみは個々人に委ねるとしましょう。
終わりに
以上が僕の初めて作成した東方アレンジ「星色デザイア」の全容となります。世界観的にはなかなか良いものが作れたと思っております。デザイアドライブの旋律の美しさと霍青娥の可愛さが伝わったのであれば幸いです。
ギャラリボの大まかな方針は今回の2曲と変わらないでしょう。すなわち、すてぃんがー☆が「Borderless Phantasm」のような
「東方要素を交えて現実のことを歌う。同時に原曲からも多少崩す」
アレンジを作り、僕が「星色デザイア」のような
「キャラソンとして成立しうるような歌詞で、原曲に忠実な」
アレンジを作ると思います。どちらが好みの人でも楽しめるサークルとなっているかと思いますので今後ともぜひごひいきにお願いいたします。
あと、三次創作とか生まれたらめちゃくちゃうれしいんで誰かやってください。泣いて喜びます。
おわり
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