靴の踵が硬い理由
私たちは物心がついたときから当たり前のように靴を履いています。靴は服と同じように、デザインやサイズ感で選んで買う方が多いと思いますが、実は機能がとても重要です。今回は数ある靴のパーツの中から、重要な機能を備えている「踵」についてクローズアップしたいと思います。
靴の踵はなぜ硬い?
どんな靴でも、踵は硬く作られています。その理由は、一つは形状保持のためでもありますが、大きな理由は「踵をしっかりと包み込む」という役割があるからです。
踵には踵骨(ショウコツ)という骨があり、そこには体重の約50%がかかっています。この骨がずれると体にさまざまな影響があるので、硬い踵の靴で安定させているのです。
どんな材料が使われている?
靴の踵を硬くするために、まずヒールカウンターという材料を使用します。
この材料は大きく分けると4つあります。
1:古くから高級革靴等に使われるタンニンで鞣された革を用い、月型に手作業で漉いたもの
2:溶剤に浸し柔らかくさせ、乾燥すると硬くなるケミシート
3:モールド(金型)を使って作る樹脂製のもの
4:サーモプラスチック/ホットメルトと呼ばれる熱可塑性樹脂(ネツカソセイジュシ。熱をかけ柔らかくし、冷やして硬くする)を使ったもの
この中で最も多用されているホットメルトヒールカウンターの成形方法をご紹介します。
単にホットメルト材といっても厚み・硬さ・溶解度の違いなど種類はたくさんあり、表地に使う材料の厚みや、メンズかレディースかなどによって使い分けます。
踵の形にする方法
一般的には、シート状になっている材料を半月に近い抜型で裁断し、千鳥ミシンで立体に縫い上げ、ヒールカウンターにします。
そのヒールカウンターを表材と裏材の踵部分の間に差し込み、クセ付け機にかけて成形します。
このクセ付け機というのは、ヒールカウンターを差し込んだ踵部に片足平均140℃/20秒程度熱を加えたのち、マイナス温度に冷却されたモールド(踵を模した金型)でまた20秒程冷やし固め、成形するという機械です。
ここで使う冷却成形用のモールドにはたくさんの種類があり、メンズ・レディースはもちろん、それぞれヒールの高さによっても違い、スクエア、シークレット、ダウンステッチ、スニーカー、ドレスシューズ、などなどあらゆるタイプとデザインのものが揃っています。
モールドにはサイズ別に高さを測る目盛りが刻んであります。ブーツのような長寸のものには左右の高さを同じにするため、物差しのような金具を取り付けて作業します。
こうしてホットメルトヒールカウンターを使用し踵は丸みを帯び、しっかりと硬く成形されます。
靴の中でとても重要な機能を有し、手間ひまかけて硬く頑丈に作られている踵部分。健康や安全のためにも、ぜひ靴の踵は踏まずに、大切に履いてください。
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