運命

人生の全てが自らの自由な選択の結果であり、自らの意思でつかみ取ったものだと考えることは、根本的に誤りである。

人は自身の外から現れるものを完璧に制御することができない。

しかしながら、外から現れたもののうちで意にそぐわないことを、意識的にであれ無意識的にであれ限りなく無視することはできる。あるいは外から現れるものを経験から予測し、予定調和と化すことができる。故に人は人生の全てが自身の手中にあると勘違いすることが可能である。

自身の外にある根源的に恣意性のない事象に、生まれ落ちた瞬間から絶え間なく晒され、ただそれに対するレスポンスにより人生が形成されている事実を見たとき、むしろ人生の全てにおいて自身が存在していないことが理解できる。

人は人生のあらゆる部分を任意に自身の選択であると考えることができるように、人生のあらゆる部分を任意に運命であると捉えることも可能である。

運命とは力である。運命は時に絶望でもあるが、それが運命であるがゆえに希望でもある。その点において人生には常に救いが存在している。


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