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アザレア #1

不意に呼ばれた気がして、開けてみた。
あれからときは流れても、ずっと放置したままだった。進まないストーリー、レベル上げに疲れたRPGのように終わりを迎えていたのだけれど。

見つかったのは、どうしようもない私の心。
誰かに聞いて欲しくて、でも言えなくて、繰り返しの葛藤。

あなたは気づきもしなかっただろうけど、
わたしは想っていたよ。明るい太陽のようだと。


眩しかった。
素直でまっすぐで、不器用なあなたが。
眩しすぎて、つい手を伸ばしたくなってしまったみたいに。

丁寧に綴られた言葉は、飾り物のよう。
不器用なあなたが世を生き抜くために身につけた、鎧のよう。

そこまで畏まらなくていい、丁寧すぎる言葉は不信感に感じるほど。
それでも、それがいいと言ってくれる人たちのいる世界で、あなたは生きているのだなと、浮世離れした世界に思いを馳せてみたり。堅苦しい世界だと嫌味に感じてみたり。


好きだと言われると好きになる。
好きにならないまでも、気になってしまうものだよ、きっと誰もが。

本能で好かれたい気持ちは誰でも持っているからね、と誰かは笑っていたっけな。
本能に抗えない性がそうさせた。
太陽に恋する向日葵みたいに。
あなたをみていたくて、追ってしまったのかもしれない。


始まらないはずの物語が、始まりの時を迎えた。
きっかけは、わたしから。
どうしようもない衝動性に抗えない、こちらだって真っ直ぐな性格。

猪突猛進な赤い炎を宿して。
ぶつかりたいんだ、壊れてもいいから。
進んでみなくちゃ、それが壁かどうかはわからないから。

ただ真っ直ぐな愚問が脳裏から離れなかった。聞いてみたかった。

「一目惚れなんて、そんなことある?」

わたしの辞書にはなかったから、そんな思いを言葉にするあなたの頭の中をのぞいてみたくて。子供みたいな好奇心しかなかった。

あなたは、怒ったように、
でも、言葉を選んで、
答えは、決まっていただろうに。

こちらが萎縮してしまうくらいには、きっと、腹立たしい思いだったのだと。
・・・一瞬の思いを行動に移したのか。悔しがるほどに、相手のことなど思いやれないほどに、傲慢に直球で。


一目惚れの正体を知っていたのだろうか。

そのときはまだ、わたしも知らなかったよ。
だから嬉しかったのかもしれない。初めての感情をぶつけてくる不躾な衝動にさえ、押されて。

それが本心だと信じられていたあの頃に嫉妬する。
ただ待つ夜が楽しかったあの頃に。
あなたを傷つけているとは気づかずにいたあの頃に。



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fuminocrycis
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