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マティーニ

幸せってもっと簡単なものだと思ってた。 

そう言いながら眼鏡越しの綺麗な目。 

僕がいるのに?
幸せじゃないの?

僕の目をじっと見て
貴方、私のどこが好きなの?
僕を見る目が蛙を見る蛇の様に鋭く、
まるで恨みを抱いているかのようだった。 

息を飲んでいるとここは奢るわ。
今日はもう帰るわね。 

そう言いながらそっと席を立った。
ドアの近くにいた女の客たちが 
ざわついている。

先ほどの女性は・・・
バーテンダーが聞いてきた。 
主演女優賞取ったカツミ。
少し上からそう伝えた

バーテンダーはにやりと笑い
どおりで淋しい役が似合うはずだ。

僕がムっとしていると。
いやいや、
この店でマティーニを飲む女性は
凄く魅力的なんですが
淋しい影の方が多いんですよ。

そう言いながら
グラスを磨いて薄暗い店内を見回す。
スマホが鳴りさようなら一言書いてあった。

マティーニくれるかな。
そういうとバーテンダーはまた、
にやりと笑い

この店でマティーニを頼む男性は、
少し鈍感な方が多いんですよ。

ムっとした僕に、
綺麗な宝石は渡り歩くものですよ。
そう言いながらマティーニを差し出し、
綺麗なものほど
満たされないのかもしれませんね。
そう言いながらグラスを磨く。 

僕は彼女をブロックしながら
扉のそばに居る女性たちを見つめ
僕は謳歌するタイプだからね。
マティーニを飲み干した。 

バーテンダーはにやりと笑い
歳を取ればあなたもきっと
宝石の価値がわかるでしょう。
そう言いながら磨いたグラスを
さらに綺麗に磨き上げていく。 

ドアのほうに向かうこの店には二度とこないそう思いながら。

女たちが僕を見る。

#創作大賞2024
#オールカテゴリ部門
#短編小説
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自分探しの旅を続けて 色々な人に会って色々な自分を発見することも 出来ました。 そんな私に応援していただけると嬉しいです( ´∀` ) 宜しくお願いいたします('◇')ゞ