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みかんの皮で雑巾掛け

パンダがマンホールから顔を出してお前はそろそろ大人として振る舞うべきだと言ってきた。お前みたいに白黒ハッキリしろということか。マーブル模様の私は受け入れてもらえないということか。

誰が本当かわからない、誰が嘘かわからない。それなら私が嘘役をするからお前ら全員、赤ん坊から老人まで全員、本当役に徹してくれよ。そしたら今日は安心してコンクリートに足を任せられる。

女をたらし込んで寄生しているてめえに、お前のことなんて好きじゃない。と吐き捨てられた。脱ぎ捨てられた。私は表情を変えずに、私だって読む本はたくさんあるわ。てめえはブックオフにでも骨を埋めてろ。と答えた。そんな夢だった。


サプリはグミで摂る時代!
愛はサブスクで貰う時代!


月に5000円払うから波のない平坦な愛をくれよ。五分五分の愛がいいんだ。平等で曲線のない愛がいい。高い声で叫ぶよりも掠れて消えそうな声でおはようと言うだけでいい。毎朝コーヒーを淹れなくてもいい。築60年のアパートにつたう草が風に揺られて、今日は風が強いんだねと言うだけの一方的な会話でいい。税込5500円の愛を毎月くれたらそれでいいんだ。

不燃物も燃やすほどの情熱をもって「死なないでくれ!お前がよくても私が納得いかない!」と死にかけの鳥に言ってみた。死にかけの鳥はなんとも情け無い声で鳴(泣)いていた。勝てない食物連鎖に抗わずに生きているこいつは私よりも強いと思い、唇を噛んだ。


素敵な方だと思っていたのに、残念です。と言われた。

別に私は自分のことを"素敵な人間です、みなさん愛してください、期待してください。"なんて一度も言っていない。そんな覚えはない。皮を脱げば肉片と骨だけだ。私はそもそもお前に期待なんてしていないのだから、お前も私に期待なんてしないでくれ。私は吐いた息を吸うだけの人間だ。


普段食べない全粒粉パンを食べたせいだろうか、私はいつもより随分と捻くれている夜をむかえた。

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