引き篭もりのススメ
私と一緒に引き篭もってみませんか。
東京に来てからは割と外に出るようになったけれど家が好きなんだ。やっぱりブン家はいいよ。
ちょっとだけ早起きをしよう。
洗濯物は朝のうちに済ませようよ。
コーヒーはね君のためならドリップしてあげるよ。
普段はペットボトルのコーヒーをチンして終わりだけどね。
朝ごはんはブンスペシャルだよ。
トーストにピーナッツバターを塗って目玉焼きは硬めに焼いてさ、雑に乗っけても良いかな。
本当はさ朝ごはんなんてものはゆっくり食べたいはずなんだろうけれど、私は早食いなんだ。ごめんね。
食べ終わったお皿はお水に浸けてくれたら嬉しいな。
タバコは換気扇の下で吸ってね。一応ね。
今日は映画を見よう。
私の好きなエンパイアレコードがいいな。
あの映画に出てくるA.J.はカッコ良すぎるよ。
グランジスタイルの申し子だからね。
昔A.J.に憧れてグランジハマってた話も一緒にさせてよ。
私の初恋は、芹沢多摩雄とA.J.なんだ。
そうだ、今度メルカリでクローズを大人買いする予定だからさ、一緒に読もうよ。私読むの早いから先に一巻だけ早足で読むね。追いかけるように読んでくれたら嬉しいな。
ついでにお香も炊いとくから。
少し高めのお香立ては大きいけれど、怠惰な私にとってはすごく有難いんだ。
灰でパンパンになるまでは捨てないつもりだから、勝手に掃除なんてやめてね。
目が疲れてきた頃にファッションショーをしようよ。
ブン家の服は可愛い服ばかりだよ。
自分で言うのも恥ずかしいけれど、君が気に入ってくれる服もあるよ。
おばあからもらったもの以外で私より似合う物があればあげても良いわ。
あ、でも玉蟲色のコートだけはダメだからね。あれすごくお気に入りなんだ。
君に似合う服を選んであげるからその代わりに私のコーディネートも考えてくれないかい。
お昼ご飯は作ってあげない。
私お昼ご飯いらないんだよね。
お腹空いたらカニカマが冷蔵庫にあるから勝手に食べて良いよ。お菓子ならたくさんあるよ。
おもてなし苦手なんだ。
その代わり夜ご飯はとびきり美味しいポトフにしよう。
近所のスーパーはさ、根菜類がすごく安いんだ。
ベトナム人の女の子はすぐ私にオクラをタダで持っていくように言ってくれるしさ。
ご飯の前に少し仮眠を取りたいな。
少しだけね。
ジャガイモの皮は私が剥くからさ、鶏肉の筋は君に託したよ。ローリエは絶対入れてよね。味付けは私がするから。少しだけオイスターソース入れると美味しいよ。そんなに驚かないで。中華の味にはならないから。安心してね。
夜ご飯を食べ終わったら、私に書く時間を1時間だけくれないかい?
書いてる時はすごく静かになっちゃうけれど怒ってるわけでも機嫌が悪いわけでもないからね。
そんな休日もいいでしょ。
引き篭もりはねたまにすると楽しいよ。
1人じゃなくてたまには2人でさ。
インスタントじゃなくて手作りの引きこもりをしようよ。
そしたらさ、次はさ君の家で引きこもりの手伝いをするよ。