ありがた迷惑
別に頼んでいるわけではない。むしろしていらない。だけど、何を間違えたか相手は好意でしてくれている。いわゆる"ありがた迷惑"。
これが派生したものが、少し前話題になった"教え魔"だ。
先日、そんな"教え魔"が猛威を振るう一幕を見た。
私のバイト先の打ちっ放しに、若い男性2人組が来た。私と同い年くらいの風貌。会話を聞いてみたところ、仕事帰りのようだ。
自分と同世代で既に社会に出て闘っている。そんな彼らに本当に頭が上がらない。
時を同じくして、彼らと少し離れた打席で、ロン毛パーマで、元サッカー日本代表の本並健治さんのような風貌のオッサンが練習していた。
しばらく時間が経ち、オッサンがタバコ休憩へ。体を健康に保つ施設なのに、体を痛めつけるタバコを吸う。まさに矛盾。
そんなことはさておき、喫煙所から打席戻るオッサンが若者2人組の打席の後ろを通る。
すると、
オッサン 「よぉっ!ゴルフ始めたん!?」
A君 「はい! 最近始めました!」
どうやらオッサンと2人組の1人A君は知り合いだったようだ。
こうした光景は打ちっ放しではよくあることだ。側から見ていると、ドラマの終盤に「実はこの2人は繋がっていた!」みたいな発見をした時のような感覚になる。
しかし、この時、この後に待っている"教え魔"の恐怖を私も2人も知らなかった。
オッサンは得意げにA君のクラブを手に取り、頼まれてもないのにノリノリで打ち出す。
その打球は、、、右側へ大シャンク。まさに恥さらし。
「ごめんごめん!調子悪いねん!」
オッサンは必死の言い訳。A君の顔が引きつる。
その後もオッサンはA君の打席で打ち続ける。も、シャンクの連発。A君の背中から「早よ退いてくれへんかな。」と聞こえてくる。
ようやく代わったと思えば、オッサンはA君の後ろに仁王立ちで陣取る。
そうだ。教え魔のスタンバイ完了だ。
自ら晒した恥が油になったのかなんなのか、オッサンの教え魔魂に火が着く。オッサンの能書きが止まらない。
その燃え盛る火は、オッサンと全く面識の無いA君の友達のB君にも燃え移る。
知り合いの息子かの如く、初対面のB君にも熱血指導。もちろんB君が頼んだわけではない。
オッサンの能書きは止まる気配はなく、気付けば営業終了時間。館内に「蛍の光」が鳴り響く。
「もうやめてくれ〜」と言わんばかりのA君B君の表情がスパイスとなり、いつもよりも「蛍の光」が切なく聞こえる。
「大変やったな〜」と思いながらも自分の担当フロアの掃除をすること15分。掃除が終わり、窓から駐車場を除くと、、、
オッサンがクラブを取り出し、駐車場で身振り手振り熱血指導。その前で呆然と立ち尽くす2人。
まさかまさかのアンコールだった。
まさに"ありがた迷惑"。自分が彼らの時間を奪っているという自覚はないのだろうか。
と言いつつ、自分も皆様の時間を奪って読んでいただいている。そんな俺は"書き魔"か?
長文失礼いたしました。