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お山の大将
今から綴ることは、あくまで私の推論である。実際にどうなのかは分からない。ただ、その光景を見ていた私は、何とも言えない悲哀を感じた。
これは先日のバイト中のこと。以前にも綴ったが、私はあるスポーツの練習場でバイトをしている。その日もいつものごとく、お客様の多種多様のスイングをあらゆる商品が並べられたショウケースを眺めるように見ていた。
そこで、私はある4人組のグループに目を向けた。季節外れの日焼け具合に、その日焼けをさらに際立たせる白いワイシャツの胸元を開け、ダンディに見せる40代後半ごろの男性。小綺麗な洋服に身を包み、黙々と練習を続ける同い年ぐらいの男性。そして、1人目の男性に一方的に指導を受ける、頭の方が少しもの寂しく、ひょうたん型の体を作業着に包まれた、これまた40代後半頃の男性2人。
見た目だけで既に、それぞれの社会的地位を現しているようだった。得意げに身振り手振りで教える男性。それを「へぇへぇ」と聞く男性。どこかしらか、指導を受ける男性2人の目からは「もうええねん。好きにやらしてくれや。」と聞こえてきた。
一方で、指導をする男性は「ほらほら!見て!こうやって教えてるねん!やっぱ地位もゴルフも格がちゃうやろ!」と、言葉にはしないにせよ、顔から佇まいから言葉遣いから態度から漏れ出していた。
正直、裸見ていていい気はしなかった。そもそも、大の大人が大の大人に手取り足取り教えなくてもいいと思う。それぞれ体のコンディションも違う、体の特性も違う、それぞれの体に合った動きがある。
それ以上に、自分を棚に上げて他の2人を格下と見なしている感があった。
何とも物悲しい。指導を受ける2人の男性の背中が小さく見えた。でも、その小さな背中は小さくとも力強い。生き抜く力がある。窮地に立たされた時、最後に笑うのは小さくとも強い背中だ。