乗り切った
もう帰りたいと思いながら顔合わせに向かった。
今日は発表会に向けてバンド練習の日程を話し合って決めるので、欠席は許されない。
息子2人は「よくわからないけど楽しみだな〜」とニコニコしている。
30人くらいだろうか、想像以上の人数が集まっている。
でもお好み焼き屋だから席はそれぞれの卓で完全に分かれていて、大人数で話さなくて済みそう。助かった。
先生の奥さんと、思春期真っ盛りな中学生男子の生徒さんが目の前に座った。奥さんもここで別の先生からベースを習っているらしい。
「はじめまして〜!先生の奥さんです!お名前聞かせてもらえますか?」と自己紹介してくれた。
グループラインにアップされていた合宿の写真を見て、先生と同じ結婚指輪をしてるこの人が奥さんだなと既に特定済みだったが「はじめまして〜!(知ってますよ〜!)」と挨拶をした。
我ながらこういうところが気持ち悪い。
奥さんも先生と同じく全身からいい人オーラを放っていて、誰にでも分け隔てなく接してくれる人だった。いじめっ子から守ってくれそうな頼もしさもある。
先生がみんなの前で「これから顔合わせをはじめます…」と言ったら、奥さんがすかさず「声が小さいっ!」と喝を入れていて笑った。
先生の髪の毛は、ロン毛好きな奥さんの意向で強制的に伸ばさせられてることを知ってまた笑った。
会話は奥さんが仕切ってくれて、完全にそれに乗っかるかたちで事なきを得た。先生から「人見知りらしいからガンガン話しかけてあげて」って頼まれたんじゃないかな。申し訳ない。
私はというと目の前の寡黙な中学生相手にも人見知りを発動し、考えてきた質問リストを思い出して「あのう…発表会に参加するのは何回目ですか?…やっぱり緊張しますか?」などと敬語で話しかけたものの会話は弾まなかった。情けない。
しばらくしてその中学生のお母さんが遅れてやってきた。スクールに通って20年という大大大先輩で「このスクール、よく見つけましたね!当たりですよ!みんないい人ばっかりで、毎週遊びにきてるような感覚なんです。」と絶賛していた。
「夏の合宿もぜひ参加してくださいね〜!」と超ウェルカムで、本当にいい人ばっかりだと早速実感した。
となりのテーブルは青春真っ只中な感じの中高生たちが座っていた。大大大先輩なお母さんが「となりのこの子たちもねぇ、小っちゃい頃からずっといるの。これ昔の写真。」と4〜5歳くらいの時の集合写真を見せてくれた。みんな立派に育ったねぇ。
ふと先生を見ると、バンドの練習日程の調整に追われて大変そうだった。入れ替わり立ち替わり誰かがやってくるので、全然お好み焼きに手をつけていない。
先生も20年前からここに通っていて、今ではスクール全体をまとめる立場になってるなんてすごいよな。大変よな。
ラルク歌いませんか?って言われたくらいで心を閉ざしてる自分がちっちぇなと思ってしまった。
帰り際ピアノの先生に「次こそはボーカル頑張りましょうね!」と言われて「何でだよぉっっっ!!」と膝をつきそうになった。
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