ボクと魔王【PS2 全タイトルレビュー】#152
発売日: 2001年3月15日
ジャンル: ロールプレイングゲーム(RPG)
発売機種: PlayStation 2(PS2)、ゲームアーカイブス(PS3のみ)
『ボクと魔王』は、ソニー・コンピュータエンタテインメントが発売し、ツェナワークスが開発したPS2初期のコミカルでダークなファンタジーRPGです。開発当初は初代PlayStation向けに進められていましたが、PS2発表直前にプラットフォーム変更が指示され、大幅な作り直しが行われました。このゲームは、影の薄い少年「ルカ」と、彼に取り憑いた自称「大魔王」スタンとの奇妙な冒険を描き、独自のダークファンタジー世界観と人形劇のような雰囲気で人気を博しました。
概要と特徴
概要
「正義の勇者」と「悪の魔王」が定番のRPGながら、ルカはただの平凡な少年であり、スタンも魔王の威厳を欠いた影のような存在です。物語はコミカルな始まりながら、次第にシリアスなテーマや哲学的要素が浮かび上がり、最終的には「世界とは何か」「勇者や魔王の役割」など深いテーマに迫ります。また、本作はキャラクターや町の住人、登場する敵まで個性豊かで、それぞれのキャラクターが役割や背景を持ち、徹底した作り込みがされています。町ごとのロケーションの少なさを補う広大なフィールド設計も、PS2の描画力を活かし、RPGとしての没入感を高めています。
特徴
本作は他のRPGに見られるような正義感溢れる冒険とは異なり、ダークなファンタジーと不条理なギャグの融合が最大の特徴です。主人公ルカは影が薄く無口で、プレイヤーの操作によって一部選択肢が変わるだけで台詞はほぼありません。またスタンは「子分」と呼ぶルカをぞんざいに扱う一方で、ルカがピンチに陥ると自動で助けに来ることもあり、彼との関係が次第に変化していきます。
ストーリー
あらすじ
主人公のルカは妹を呪いから救うため、魔王スタンに影を乗っ取られる形で「偽魔王」を倒す冒険に巻き込まれていきます。旅の途中、様々な仲間と出会い、物語が進むにつれ、ルカの周囲で変わっていく人々や町の人間関係、そしてスタンの隠れた一面が描かれます。ルカと仲間たちは「分類」の概念で成り立つ世界の秘密に触れ、終盤にはシリアスなクライマックスが待ち受けています。
章構成
第一章: ボクと魔王が地下室で
第二章: ボクと魔王とピンクの勇者
第三章: ボクと魔王とワガママ娘
第四章: ボクと魔王とあやしいヤツら
第五章: ボクと魔王が街から消えた
第六章: ボクと魔王と夜とカゲ
第七章: ボクと魔王が図書館で
それぞれの章が異なる町やフィールドでの出来事を追い、登場するキャラクターやNPCにも多様な性格や背景が設定されており、プレイヤーは世界観と物語の変遷を体感しながら冒険を進めます。
登場キャラクター
ルカ
本作の主人公であり、控えめで影の薄い16歳の少年。ルカはほぼ無言のキャラクターで、選択肢によってのみ自己主張する場面があります。また、冒険が進むにつれ複数の女性キャラクターから好意を寄せられるなど、無意識のうちに人を惹きつける魅力を持つ存在です。スタン
300年前に封印され、壺の中から解放された自称「大魔王」。ルカの影に取り憑き、物理的な姿はジャック・オ・ランタンのような顔の付いた黒い影です。スタンはルカに大魔王としての威厳を取り戻すことを期待しており、ルカを「子分」や「下僕」と呼びますが、しばしば頼りない面を見せます。ロザリー
22歳の元エリート勇者で、スタンと3年前に遭遇して以来影が蛍光ピンクになっています。エリートの道から転落した過去を持ち、スタンへの復讐心とルカへの愛情から共に冒険に出ます。キスリング
自称オバケ研究の権威で、どこか抜けた性格を持つ変人学者。オバケの正体を解き明かすためにルカたちに同行し、しばしば鋭い分析で場面を観察します。ビッグブル
ニセ魔王の一人で、ルカと出会った後仲間に加わります。筋肉と力を誇るタフなキャラクターで、冒険の力強いサポーターとなります。リンダ
スタンをコーチと慕うアイドル魔王。彼女は独特の言葉遣いと性格で、ルカや他のキャラクターと関わりながら成長を見せます。
システムと戦闘
戦闘システム
戦闘はアクティブタイムバトル方式で進行しますが、技の発動に毎回詠唱モーションが挟まれるため、戦闘のテンポが少し遅く感じられます。フィールド上でオバケシンボルと接触することで戦闘が始まるシンボルエンカウントを採用しているものの、視界の悪さやシンボルの出現頻度が高く、プレイヤーは戦闘を避けづらい場面も多いです。
難点
シンボルエンカウントであるにもかかわらず、回避が難しいほど大量に敵が出現し、カメラワークが悪いためにエンカウントの調整が難しい点が批判の的となっています。また、キャラクター同士のバランスがやや不均等で、序盤のルカとロザリーが非常に強力であるため、中盤以降に加入するキャラクターの役割が限定的になることもプレイヤーからは難点とされています。
評価と影響
総評
本作はユニークなストーリーやキャラクター設定、深みのあるテーマから、発売から20年以上経った現在でも根強いファンが存在する隠れた名作です。しかし、システム面でのテンポの悪さや戦闘の調整不足が、ゲーム全体の評価を分ける要因となっています。発売当時には大きなヒットには至らなかったものの、独特のゲームデザインが国内外で評価され、北米版『Okage: Shadow King』がPS4でも配信されました。
『ボクと魔王』は、PS2の初期において意欲的な試みを見せたRPG作品として、今なお語り継がれています。