花と太陽と雨と【PS2 全タイトルレビュー】#182
発売日: 2001年5月2日
ジャンル: ミステリーアドベンチャー
発売元: ビクターインタラクティブソフトウェア(現・マーベラスインタラクティブ)
開発: グラスホッパー・マニファクチュア
対応機種: PlayStation 2
概要
『花と太陽と雨と』は、『シルバー事件』(1999年)の続編として制作されたアドベンチャーゲームで、開発を手掛けたグラスホッパー・マニファクチュアが描く独自の世界観が大きな特徴です。
前作のテキスト主体のゲームデザインから一転し、本作では「謎解き」と「探索」に重点を置いたゲームプレイが採用されています。舞台は南国の孤島「ロスパス島」で、物語はホテルを拠点に展開される奇妙で不可解な出来事を描きます。
「プレイヤーに新たな体験を提供する」という挑戦的なデザインが盛り込まれた一方で、移動や進行に不便さを感じる仕様もあり、評価が大きく分かれた作品でもあります。
ストーリー
南の孤島ロスパス島を舞台に、探し屋(サーチャー)の主人公モンド・スミオが巻き込まれる謎を描きます。スミオは島唯一のホテル「フラワー・サン・アンド・レイン」の支配人エド・マカリスターから「島に仕掛けられた爆弾の捜索」を依頼されますが、そこに住む奇妙な住人たちとの出会いや、繰り返される一日のループによって、次第に島の隠された秘密へと迫ることになります。
島の名前「ロスパス(LossPass)」は、「Lost Past(失われた過去)」の意味を持ち、物語全体にテーマとして絡んでいます。
物語の進行とともに、爆弾探索だけでなく登場人物たちの背景や、島が抱える「過去の喪失」の謎が明らかになり、プレイヤーは奇妙でシュールな世界に没入していきます。
ゲームシステム
1. 「キャサリン」による謎解き
モンドが持つ万能暗号解読器「キャサリン」を使用して謎を解くシステムが、ゲームの核となっています。
キャサリンは「数字」を用いて謎を解き明かす道具で、鍵の解除や機械操作をはじめとする多彩な用途に対応。
キャサリンを使用する際、プレイヤーはロスパス島のガイドブックを参照して答えを探します。このガイドブックには、島の情報だけでなく、謎解きのヒントも記載されています。
ガイドブックを手がかりにキャサリンを操作し、暗号を解くことで物語が進行します。
2. 探索要素と移動
ロスパス島全域を自由に探索可能ですが、移動手段が徒歩に限られており、広大なフィールドを歩いて進む形になります。特にホテルから遠く離れた場所を何度も往復する必要があるため、このシステムには一部のプレイヤーから賛否が分かれました。
3. ループする一日
物語が進むにつれて、島で「時間のループ」が発生していることが明らかになります。これにより、プレイヤーは繰り返される一日の中で新しいイベントや謎解きに挑戦し、島の真実を解き明かしていきます。
舞台設定
ロスパス島
南の楽園を思わせる島でありながら、不気味さも感じさせる独特の雰囲気を持っています。
フラワー・サン・アンド・レイン(ホテル)
ストーリーの拠点となるホテル。5階建ての美しい外観を持ち、星型の構造が特徴です。上空から見るとその形が際立ちます。カナデルカゼ教会
森の中に佇む伝統的な教会で、結婚式場として利用されることもあります。マルマレバ遺跡
未解明の巨大な石塔。島の過去を象徴する存在として登場します。ロスパス空港
島の玄関口であり、物語の重要な舞台の一つ。モンドの最終目的地でもあります。
この他にも、灯台や迷路のような庭園、プライベートビーチなど、多彩なロケーションが用意されています。
登場キャラクター
モンド・スミオ
本作の主人公で、探し屋(サーチャー)を生業とする男性。冷静沈着で、どんな依頼にも応じますが、愚痴っぽい一面も。相棒は暗号解読器「キャサリン」。
クサビ・トリコ
スミオの夢にたびたび登場する謎の少女。ピンク色のワニ「クリスチーナ」を連れており、ストーリーの重要な鍵を握ります。
エド・マカリスター
ホテル「フラワー・サン・アンド・レイン」の支配人。スミオに爆弾探索を依頼しますが、その言動には謎が多い人物。
その他のキャラクター
ホテルの従業員スー・スディンやスチュアート・ロックなど、個性豊かな住人たちが数多く登場。
前作『シルバー事件』に登場したフリーライター、モリシマ・トキオも島を訪れ、物語に関わります。
音楽
音楽は、高田雅史が率いるチーム「TORN」が担当しています。クラシック音楽のカバーを多用し、物語のシュールな雰囲気を引き立てる役割を果たしています。
主題歌「F.S.R. ~アナタノタメ~」は、須田剛一が作詞を手掛けた楽曲で、物語のテーマ「愛」を象徴する内容となっています。
評価
ファミ通クロスレビューでは、満点に近い34点(ゴールド殿堂入り)を獲得しました。
評価ポイント: 独特の謎解きシステム、ユニークなキャラクター、シュールで幻想的なストーリーが高く評価されました。
批判点: 広大なフィールドを徒歩で移動しなければならない仕様や、万人受けしない難解なストーリー展開は賛否を呼びました。
総評
『花と太陽と雨と』は、「奇妙さ」や「謎解き」を愛するプレイヤーにとって特別な体験を提供する作品です。一方で、ゲームデザイン上の不便さがあり、プレイヤーを選ぶタイトルでもあります。
須田剛一の世界観や独創的なゲーム性を楽しみたい人にとっては、間違いなく注目すべきタイトルです。PS2時代の隠れた名作と言えるでしょう。