五分後の世界【PS2 全タイトルレビュー】#228
発売日: 2001年8月2日
対応機種: PlayStation 2
ジャンル: サウンドノベル
発売元: メディアファクトリー
価格: 5,800円(税別)
村上龍氏の同名小説を原作とし、彼自身が監修したゲーム作品です。独自の「チェーンノベルシステム」を採用し、プレイヤーが複数のキャラクターを操作し、それぞれの物語が相互に影響を及ぼす複雑なストーリーを展開します。
ストーリー
「五分後の世界」とは、現実世界とは五分ずれたパラレルワールド。第二次世界大戦が終結せず、戦争が継続している異世界の日本を舞台に、プレイヤーは現代から迷い込んだサトルをはじめとする7人の主人公を操作し、それぞれの視点で物語を進めます。
各キャラクターの行動が他の主人公の未来に影響を与え、最終的に全てが収束する形で物語が完結します。
ゲームシステム
1. チェーンノベルシステム
プレイヤーは7人の主人公を操作し、それぞれのストーリーを進めます。1人の行動が他のキャラクターの未来に影響し、複雑に絡み合った物語を展開。完全クリアには100時間以上のプレイが必要とされています。
2. ビュークリックシステム
特定のストーリー中に発生するインタラクティブな選択肢システム。画面上の動画内で重要なポイントをクリックすることで、キャラクターの行動が決定し、ストーリーの分岐点となります。
3. ヒストリカルファクト
物語の進行状況に応じて画面上にストーリーの概略や背景情報が表示され、プレイヤーは異なる視点から物語を楽しむことができます。
4. マルチエンディング
プレイヤーの選択により、複数のエンディングが用意されています。エンディングの種類は、各主人公の選択や行動次第で変化します。
登場キャラクター
主人公たち
サカキ・サトル(声:湯浅桃太郎)
現代の高校生で「五分後の世界」に迷い込む。母子家庭で育ち、内向的だが観察力に優れています。ヤエガシ・カツナリ(声:松橋勝巳)
UG(アンダーグラウンド)の大尉で、冷静な戦略家。過去に「五分前の世界」から迷い込んできた経験を持つ。タケウチ・ナルミ(声:武田冒)
五分後の世界の名狙撃手。「八咫烏」を操り、敵を確実に仕留めます。ノーマ・アイカワ(声:宮田圭子)
元新聞記者で、UGに接触するための取材を行います。S・コウモト・ウェラー(声:音尾琢真)
スラムのギャング集団のリーダー。タフな性格ですが、優しさも持ち合わせています。ケイト・マイヤー(声:山田絵美)
天才プログラマー。兵器開発に携わる過去を持ち、その矛盾に苦悩します。ジャック・マクダネル(声:北脇徹)
国連軍の少佐で、ヤエガシをライバル視する熱血指揮官。
舞台設定
五分後の世界の特徴
分割統治された日本
北海道や九州などが他国の支配下にあり、日本は地下に居住空間を構築し、独立国家を維持しています。非武装地帯(DMZ)
国連軍との間で設置された緩衝地域。軍事体制と地下生活
UGは少数精鋭のゲリラ戦術を採用しており、国民は地下トンネルに居住。物資は配給制です。
舞台となる地域
オールド・トウキョウ(旧東京都)
ヒビヤ・スラム
南箱根の森
伊豆DMZ
下田大トンネル
カチドキ橋
評価
良い点
原作の再現度: 村上龍氏の小説の緻密な世界観を忠実に再現。
深みのある物語: 哲学的テーマと複雑なキャラクター関係が新しい体験を提供。
斬新なシステム: ビュークリックやチェーンノベルシステムが物語の深みを増しています。
悪い点
難易度: ストーリー分岐の解明やエンディング到達が困難。
一部の不具合: キャラクター間のストーリー連携が破綻する場面があるとの報告。
総評
『五分後の世界』は、緻密な設定と独創的なシステムで、村上龍の原作ファンやノベルゲーム好きに新たな感動を与える作品です。複数の主人公を操作し、各々の行動が他者に影響を与えるシステムは独特で、物語に深く没入する体験を提供します。ただし、システムや難易度の複雑さから、万人向けというよりはコアな層をターゲットにした作品と言えるでしょう。