コロナ禍で、医療現場に真に役立つフェイスガードを届けよう!⑦: PROTECT物流センター
【承】 物流センターの取り組み
利用価値のある医療資材を
円滑に、そして安全に医療現場に届るために
プロジェクトのキックオフからいよいよチームに分かれての活動が始まりました。この記事では、我々、物流センターの活動を紹介します!
〇チームの発足と役割
フェイスガードを製作したら、医療資源が不足している医療現場へ届けなければなりません。しかし、ただ出来たものを病院に送りつけていては、かえって迷惑になることもありえます。
そこで、考慮すべき点は
・実際に医療現場でどれだけの数のフェイスガードが不足しているのか?
・現在の我々の生産体制でどれくらい供給ができるのか?
・フェイスガード1個あたりの制作コスト、輸送にかかるコストは?
等々いろいろとありそうです…。
『PROTECT』はボランティアベースで発足したとはいえ、製作には費用がかかります。大切なことは、本当にフェイスガードを必要としている医療現場に、我々の供給できる範囲で、効率的に届けることだと思います。
物流センターの役割は、製作ラボと医療現場探索チーム、またそれに関わる学生間の中継役になることです。このチームもプロジェクト成功の鍵を握りそうです。
〇メンバー紹介
物流センターには、バラエティに富んだ5人のメンバーが集まってくれました。リーダーには卓越大学院プログラム2期生の辻本君が名乗りを上げてくれました。(辻本君ありがとう! 私は、Slack担当です。)
<学生>
・辻本 将之 (リーダー、医工学研究科、2期生)
・杉山 成章 (サブリーダー、生命科学研究科、1期生)
・次田 篤史 (Slack(情報共有)担当、生命科学研究科、1期生)
・石飛 綾那 (書記担当、教育学研究科、1期生)
<ファシリテーター教員>
・田中 良和 (生命科学研究科教授)
〇効率よく運用するための流通モデルは?
5月7日(木):第1回物流センター チームミーティング
初めてのメンバーとの顔合わせです。顔合わせと言っても、コロナ禍で仙台でも外出自粛の要請が出ている最中だったため、Zoomでのミーティングとなりました(この時の東北大学のBCP(行動指針)レベルは最大警戒の4でした)。自己紹介と各々の役割を分担して、物流センターとしてのメインタスクである”流通モデル”について話し合いました。
5月1日に行われた全体のキックオフミーティングから、大まかな流通のイメージは出来上がっていましたが、具体的な活動を検討する必要がありました。製作現場(3Dプリンターを持っているそれぞれの研究室)で製作したフレーム部分(孫悟空が頭に巻いている金色の輪っかみたいなものです、ちなみに緊箍児_きんこじ_というそうです)のバリを剥がし、シールド部分(透明なフィルム部分)と組み立てて、現場ですぐに使えるようにしてから供給しなければなりません。
大量生産を目指すとなると、この組み立て作業に、ボランティアの学生をさらに公募するなんてことも考えなければならないかもしれません。
ただこのコロナ禍の状況です、大勢での作業、濃厚接触はNGです。
そこで我々は、3つの流通モデル案を作成しました。
流通プランA
プランAは、製作現場で別々に作られた部品(フレームとシールド)、及び組み立て後の完成品を一旦どこかの拠点に保管し、そこから現場に供給する案です。部品と完成品を拠点で保管するので、それぞれの数を把握するのに都合が良さそうです。
流通プランB
プランBは、プランAをより簡略化して、部品を保管する拠点でそのまま組み立てを行ってしまおうという案です。しかしこのモデルでは、拠点での大人数での作業が問題となりそうです。
流通プランC
プランCは、製作現場からフレーム部分とシールド部分をダイレクトに医療現場に届け、医療現場で組み立ててもらうという案です。これには、製作の段階から簡単に組み立てられるもの(はめ込むだけとか)にデザインする必要がありそうです。
〇フェイスガードは製作方法によってコストもまちまち!
5月20日(水):第2回物流センター チームミーティング
シールド部分とフレーム部分の値段をシールドの素材、使用するプリンターの違いで比べてみました。いくらいいものが出来ても、値段に見合わなければ皆に配ることができません。
【シールド部分】
ラミネート 10円/1枚
OHPシート 50-60円/1枚
シールド部分は、ラミネートとOHPシートで5倍ほど値段が違います。実際につけてフィードバックをもらうとシートの種類で見え方(透明度)に違いがあるのではないかと思ます。続いてフレーム部分も比較します。
【フレーム部分】
東大チーム個人所有の3Dプリンター 30円/1個
東北大学共通機器室の研究用3Dプリンター 3400円/1個
30円と3,400円… なぜこんなに研究用の3Dプリンターで作ると高いんだろう…とチームのみんなで話していました(東大の宮武さんの3Dプリンターについては、後の記事でより詳細に書きますが、研究用の3Dプリンターは機械自体が500万円もするそうです!)。
その原因は、プラスチックの材料の違いでした。個人所有の3Dプリンターは熱可塑性の安価な樹脂を使っており、一方、研究用のプリンターは高価な光硬化樹脂を使用します。それは高いわけだ、ということで研究用の3D プリンターの使用は現実的ではなさそうです。
東大チーム宮武さん個人所有の3Dプリンター Ender-3 Pro
東北大学共通機器室の高性能(超高額...)3Dプリンター OBJET30 Prime
〇チーム内での情報共有をSlackで円滑に!
5月22日(金):第3回物流センター・製作ラボ合同ミーティング
今回のこのプロジェクトで重要な点は「コロナ禍で協力者と接触できない中、いかに情報を素早く共有して、動くか」というところにあったと思います(実際、一度も直接会ったことのない人もいます)。だからと言って、毎日Zoomを開いて会議をするかと言えば、そんなことはできません(プロジェクト協力者は医療関係者、大学教員、大学院生ばかりです。本業を圧迫することはできません…)
そこで”Slack”を使用して、チーム内外の情報共有を図ることが決まりました。“Slack”を使用している方ならわかると思いますが、多くのチャンネル(チームごとにチャットの部屋があります)を同時にフォローするのは簡単ではありません。
現在物流センターは、製作ラボで出来上がった製品の管理と輸送方法、それにかかるコスト調査にフォーカスしていますが、実際に製作ラボが今どのフェーズにいるのか、Slackだけで追跡するのが難しいという意見も出ました。
そこで、製作ラボとの合同ミーティングが行われました。製作ラボからは、沼山先生と大谷さんに参加していただき、現在製作ラボでは、”バリ取り”作業のないフレーム部分の設計を東大の宮武さんと行っているという話を聞くことができ、今まで想定していた流通モデルの見直しが必要だということに気付きました。
バリ取りが必要ないのであれば、東大の宮武さんが持っている3Dプリンターで印刷された、フレーム部分と仙台で購入したシールドを組み合わせるだけで、完成させることができます。大勢での作業や、拠点についても考えなくても良さそうです。
ただ東大で製作したフレーム部分を仙台に送るとなると、生産性を考えると分が悪そうです(某黒い猫の運送会社を毎回使うと最低でも輸送費が1,000円ぐらいはかかります)。3Dプリンター自体が高くないのなら、仙台で3Dプリンターを購入して、生産を行うことも視野に入れて製作ラボとの合同ミーティングを終えました。
〇量産型→個別化というPROTECTの方針転換を受けて!
6月4日(木):PROTECT全体ミーティング
プロジェクトが発足して約ひと月が経ちました。この全体ミーティングで、プロジェクトの方向性に少し変化が生まれます。
以下、6月4日(木)の全体ミーティングをまとめた議事録からの一部抜粋変更となります。(余談ですが、ミーティングの議事録は、あとで見返すのに非常に便利です。過去のSlackを辿りながら、今までのSlack上での会話、議事録を見ればこれまでの遍歴が一発で理解できます。フェイスガード作成だけでなく、プロジェクト成功のための戦略もプログラムを通して学んでいます。)
シールド部分の製作に関して
・現場の消耗は考えず、試作&ブラッシュアップで当面よい
・1日数個、完成品20個程度提供するとした場合のコストは?
・工学部製のフィルムは質がよい(モスアイ(蛾の目)構造を有したフィルム)
→曇りが少なくなる特殊な加工がされている
→シールド部分はこれを採用?
・業者にモスアイフィルムを100個頼むなら、1個500円くらい
・ICUの看護師用に常時60個必要
物流センターの今後のあり方について
・具体的に製作するとなると、物流センターと製作ラボは一緒になった方がいい。
→Slack上でも一緒の方が良い
→物流センターのチャンネルを閉じて、製作のチャンネルを製作&物流に合併
3Dプリンターによるフレーム部分の設計・個別化の方法について
・差別化を図るなら、多少手間はかかるが、1個ずつオーダーメイドで(東大の宮武さんが1人ひとりの頭の形状を計測するソフトを作成中)完全に個人用として提供する方針もあり得る。
・使用者の頭サイズscanが必要。
・iPhoneのフリーソフトからのデータでもサイズ設定できる。
・歯科技工室のスキャナーは一眼レフで計測するため、精度が良いかもしれない。
大切なことは、これまで想定していた量産型のフェイスガードの供給から使用者に合わせ個別化したフェイスガードの供給に戦略をシフトすることで
・コスト面の課題
・我々のプロジェクトで大量生産を行えるかという課題
をクリア出来ることです。
また、新型コロナウイルスの第一波の感染状況が落ち着きつつある状況を鑑みても、この選択が非常にリーズナブルな決断であるように思えます。
物流コスト面を考えても、現在、東大の宮武さんが使用している『Ender-3 pro』を導入して、仙台でも生産を行った方が、東京から毎回輸送するよりも安く済むというのは明らかです。そのため、物流センターと製作ラボを合併し、物流チームでも3D プリンターを使ってフェイスガードを生産することにしました。
物作り屋さんである東大の宮武さんと違って、3D プリンターに関してはまるっきり素人の物流チームの面々ですが、これから製作・物流合同チームとして、新たなアクションがスタートします。果たして、3D プリンターを上手く使いこなせるのでしょうか?
この続きは「転」に書きたいと思います。よろしければ「個別化に向けて」歩き出した製作・物流合同チームの【転】の記事を見てください。それでは!
〇まとめ
物流センターでは、
・製作〜医療現場を繋ぐ流通のモデルを作成し、コスト算定等を行った。
・大勢での作業および製作・流通のコストを考慮して、安価な3D プリンター(Ender-3 pro)を購入して、製作ラボと合同でプロジェクトを進める方向に決まった。
・新型コロナウイルス第一波の状況と3Dプリンターで製作するフェイスガードの強みを鑑みると「量産型→個別化」を視野に入れてプロジェクトを進める方針が決定した。
https://note.com/fm_protect/n/nffa69955fd49
PROTECT:PROactive To Emerging COVID-19 in Takuetsu
文章作成:FM卓越プログラム1期生 次田 篤史
文責:FM卓越ファシリテーター教員 植田 琢也(プロジェクトリーダー)
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代表:プロジェクトリーダー 植田琢也
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