安井仲治「僕の大切な写真」が見せてくれるもの@東京ステーションギャラリー
戦前の写真家の作品は、写真で何ができるだろう、というワクワク感があるというか、カメラの性能もカメラマンの技巧もまだ発展途上なだけに、「こんなことやってみたぜ」みたいな荒削りな作品が多くて面白い。創生期に属した人だけが味わえる、何でもアリな感じ。ということで、新しいものに挑戦する気持ちを味わいに行ってきました。
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202402_yasui.html
なぜか?展覧会サイトのリンクが味気なく出てくるので、展覧会概要をこちらに・・・
ということで、まだ日本の写真が黎明期。「うまい!」というよりも、撮っている方の試行錯誤や、新しいことを試して楽しんでいる感じが伝わる写真でした。例えばコラージュ技術を採り入れはじめた写真は、まだこなれていない風もありつつ、時代感あって良かったです。特にこの大阪中之島のメーデーを撮った、報道写真×コラージュ×トリミングがミックスされた「メーデー」シリーズは、テーマが持つ勢いと発展途上感がマッチ。
安井仲治の写真で独自の世界観があるのは、「半静物」かもしれないのですが、私は微妙・・・ここまでやるならもうちょっと作り込んだ世界の方が好きかも。基本的には、もう少し偶然性というか瞬間を切り取ったような写真ならではの表現が好きだからかなあ。
一方で、人物を撮った写真はどれも表情が素晴らしい!特に、第二次世界大戦中、ヨーロッパから迫害を逃れて神戸にやってきたユダヤ人を撮った連作「流氓ユダヤ」は、時代の空気が伝わる写真。
日本人外交官、杉原千畝が日本領事館領事代理として赴任していたリトアニアで、ナチスに迫害されていた多くのユダヤ人にビザを発給し、亡命を手助けしたのですが、このユダヤ人達は、日本を「経由地」とすることで米国や豪州に亡命できました。まさにこの人達を撮った連作があったとは。
以前、日本橋高島屋で杉原千畝の生誕120周年(あ、今回の展覧会も安井仲治の生誕120周年だ)として開催された「杉原千畝展 命のビザに刻まれた想い」で、当時の記録・写真・ビザの実物や、亡命時に子供だった人が、辛い思い出と杉原への感謝を語るビデオが展示されていたのですが、その記憶が蘇るような写真でした。写真としても美しいのに、ぎゅっと様々な想いや物語が詰まってる。
最後に、今回は写真撮れなかったので、出口のところに飾られていたポスター写真を・・・
<余談:個人的なつぶやき>東京ステーションギャラリーは、毎回ポスター、フライヤー、チケットのデザインが複数あって、なんだかリッチ。今回のフライヤーは2種類(「馬と少女」と「作品 1939年」)でしたが、「大阪の日本画展」とか3~4種類あった記憶が。今回もチケットはもっと種類があった。展覧会によっては「そっちの赤いのを・・」とか恥ずかしながらチケット交換を頼んだことあります。毎回楽しみだからいいんだけれど、どんな人なんだろうなーと、展覧会企画担当の人が気になっています。