【脚本】この流れなら言える馬車より偉い僕の秘密〜ひきわり納豆と壁とかべとカベと壁のワンルームの浴槽で発見されたラリアットは闇鍋暴君。ハッフルパフの逆襲によりサヨナラ失業手当。そこかしこそこかしら。ぬ。〜
所属している劇団の250万の個人ストレッチゴールです。
Twitterでタイトルを募集したところ沢山いただいたので全部くっつけました。
大変後悔しております。
全身全霊で挑んだらすごく気持ちの良い作品だと思います。よかったら是非。
本編
この流れなら言える馬車より偉い僕の秘密〜ひきわり納豆と壁とかべとカベと壁のワンルームの浴槽で発見されたラリアットは闇鍋暴君。ハッフルパフの逆襲によりサヨナラ失業手当。そこかしこそこかしら。ぬ。〜
オギャアと登場した僕、この僕は偶然にもこの物語において主人公と言う個性を与えられた登場人物。この物語は一人芝居所謂、モノローグ。登場人物はたった一人。僕と言う存在だけだ。主人公という名誉ある。大変名誉ある立場が与えられ、こうやって話すことで、癖だったり、雰囲気だったり、性格だったり、ある程度の個性が生まれる。勿論自分がフィクションにいることは理解している。こうやって話している僕と言う存在自体が、この物語を書いた誰かの頭の中から、こう、存在を得て、今客観的立場で見ているあなたがいることも、ぜーんぶ分かっている。そんな僕だが、存在自体は赤ちゃんみたいなもので、たった今このお話が始まり生まれ落ちました。おギャァ。僕はどんな物語の主人公になるのか、と言う可能性を秘めている。描写が増えれば僕が何者で、どんな世界に生きているのかはっきりしてくる。ファンタジーの世界か。あるいは一人戦国モノ?はたまた、現代に疲れきた会社員。だのに僕にはわかる。僕、と言う存在を頭から取り出している。僕の方から顔も見えぬ作者と呼ばれる存在はあろう事か先の展開を何も、全く考えちゃいない。あるのはさっきあったわけのわからないタイトルだけ。おいおい待ってくれよ。タイトルだけ先に決めるやつあるかぁ?プロットは?世界観とか、エンディングは?
すまん。
これは僕のセリフじゃない。僕のセリフを書いている奴が、たった今書きやがった。セリフとして書かれてるもんだから彼の言葉は僕の口から出ちゃう訳で。いや、すまんじゃないから。これ責任全部俺にくるから。主役、俺だから。
タイトルはすなわち作品の顔と言っても過言ではないだろう。例えば、ちびまる子ちゃん。まる子を筆頭にあったかみのある登場人物たちが登場するドタバタ日常アニメ。どんなストーリーが展開されようともそれは必ずハートフルな着地点に落ち着く。なぜならそれはちび、まる子ちゃんだからだ。まる子というちっちゃい小学生を中心とした物語である。とはっきり示されているからだ。
タイトルはその作品の入り口でもあり全てでもある。ちびまる子を見ると思って、見終わればちびまる子を見たと感じなければならない。
特にここは演劇の世界線だ。観劇の目はとても厳しい。真剣だからこそ。とっても厳しい。映画やアニメよりも観劇前の情報は少ない。だからこそ終幕後に今一度タイトルを噛みしめられるべきなんだ。
と、いうことは。つまり、今観てくださっている方々が、僕の言葉を聞いているあなたが。僕がきれいさっぱり消えた後
「この流れなら言える馬車より偉い僕の秘密〜ひきわり納豆と壁とかべとカベと壁のワンルームの浴槽で発見されたラリアットは闇鍋暴君。ハッフルパフの逆襲によりサヨナラ失業手当。そこかしこそこかしら。ぬ。〜」
と感じてもらわなきゃいけないんだ。あっ。責任が重すぎる。
とはいえ、物語はすでに始まってしまっているので、つべこべ云わず僕はこのタイトルに挑まなければならない。レッツストーリーテリングー!
舞台はある四方を壁に囲まれた狭いワンルーム。カベ、カベ、カベ、カベ。寂れた部屋だ。そんな部屋に男が一人佇んでいる。
最初の一言は、意味深に、じっくり
サヨナラ失業手当
次の台詞は、次の台詞は。
ダメだー。ラリアット、闇鍋将軍のラリアットの処遇が思いつかない。第一情報が多すぎる。馬車よりも偉い、ひきわり納豆にラリアット、闇鍋将軍にとってつけたような。そこかしこそこかしら。言いにくい!!そして極め付けは更にとってつけたような。ぬ。
ぬ。ってなんだよ。ぬって。僕の言葉はすなわち彼の言葉。なんでこんな事になったのか教えてください作者さん。降霊!
降霊しました。作者です。僕、脚本描きたかったんです。でも題材思い浮かばないし。インスピレーションもらいたくって。Twitterでタイトル募集して見ました。そしたら思いの外たくさんもらって。選べなかったんだわ。どれも良かったから。果てしないインスピレーションの大洪水なんだ。端的に、ごめーん!!
ほっ!といった感じで無責任にも頂いた名前をがっちゃんこがっちゃんことアレやこれやと適当にくっつけてついてしまったカオスなタイトル。どこからどう手をつけて良いのやら。
インスピレーションの大洪水。この言葉は言い得て妙で。タイトルから受ける衝撃たるや生半可なものではない。インスピレーションは枯渇しているのではない。言葉の通り大洪水、あふれるインスピレーションはコントロールなど出来ず、安全な場所から安全なものにしようとしてしまっている自分がいる。
己のちっぽけさを体感した僕はここで無限の感性に手を出す事にした。演劇はしばしば抽象的な、漠然的なモノであることがある。極度に小難しいセリフを置いて、お客さんの9割を置いていくことだって可能なのだ。僕はそれを無限の感性と名付ける。観客としての僕らは作者の持つ無限の感性からセリフという有限の感性に委ねられ伝えられる。時に置いてきぼりになったとしてもこれは芸術なんだからしょうがない。芸術は無限の感性なのだ。劇の内容がわからなかった時、タイトルの意味がわからなかった時、僕はその無限さに打ちひしがれる。こういうもんだ。こういうもんなんだと。このタイトルはそれと全く同じ無限の感性を僕に与えてくれる。
ストレートに表現すればいいってもんじゃあないんだ!
何が、ラリアットだったんだ!何が、ぬだったんだろう!それは観る側が勝手に探してくれればいいんじゃあないか!うん。そうしよう!
舞台は真っ暗闇!ここは過去未来現在が同時に存在する世界線。ぬ。という文字が辺りをただよい。
って!流石にそれはダメだろう!作者ぁ!タイトル先に決まってるなら出来る限り使おうよ!と、反論したものの。僕の中でも、このタイトルをどう扱えばいいのか全くわからない。
もう無理ダァ。
これは作者のセリフでもあり、僕のセリフでもあった。
?!やめろ!それはまだ早すぎる!それはまだ!いっちゃいかんセリフだ!俺は抵抗する!
んんんんんんんんんんんぐんんん。
めでたしめでたし。
これは僕のセリフだが僕の言葉ではない!作者がこの物語に見切りをつけ無理やり落とそうと僕に言わせたこのセリフ。作者が終わらせようとも僕は、この物語を背負う主人公のこの僕はまだ終わらせるわけにはいかない。何故なら、まだ、この流れなら言える馬車より偉い僕の秘密〜ひきわり納豆と壁とかべとカベと壁のワンルームの浴槽で発見されたラリアットは闇鍋暴君。ハッフルパフの逆襲によりサヨナラ失業手当。そこかしこそこかしら。ぬ。〜」をやっていない。こんな打ち切りあってたまるか!
僕が歩けば文字も歩く、僕が話せばセリフは生まれる!逆説的アプローチ!自我を持つのは何もAIだけじゃない。登場人物たちにも芽生える自我!それこそがフィクション!真実でない真実なんだ!
来い!演劇の神様!降りてこい!シェークスピア!ホッホッホッ!!キッダァー!!!!
舞台はある四方を壁に囲まれた狭いワンルーム。カベ、カベ、カベ、カベ。寂れた部屋だ。そんな部屋に男が一人佇んでいる。
最初の一言はじっくり丁寧に
サヨナラ失業手当
そうして失業手当を失った僕は家賃も払えず追い出されたのでした!ちゃんちゃん
じゃあない!!失業手当を失った僕は浴槽で発見されたラリアットを思い出す。
発見したのは2日ほど前。お湯を貯めようとしたらそこに蹲っていた。その日一緒に鍋を続いたがひどい有様だった。僕が入れようとした食材は全て捨てられて、代わりにスイーツから三種の珍味、果てはラーメン二郎まで。僕のお鍋は闇鍋というには黒すぎる鍋になっていた。
そんな闇鍋暴君など役に立つわけもなく結局追い出されましたとさめでたしめでたし。
には、ならない!常識に捉われるな!
黒すぎる鍋は儀式の証。鍋の食材は捧げられた悪魔への生贄。開く扉は魔法界へ繋がる扉。先へ進むとハッフルパフが待ち構えていた!
きたなぁ!闇鍋暴君!
そう!彼は追われた身。彼を捕らえるべくハッフルパフは僕に魔法をかけた。そこかしこそこかしら!えいっ!
魔法が解けるとそれは朝。変な夢を見ましたとさ。
そう、それは朝。僕が失業手当を失う直前。時間は戻され、その日申請しなければ失業手当を失う当日。気持ちを新たに朝風呂してから向かおうとしたその時、浴室で蹲っているラリアットを発見する。ラリアットが浴槽にいるなんて体験したことのない僕は、その日はラリアットを保護する事に勤しんだ。
これは無限ループ。僕はまた失業手当を失う。
また闇鍋をしてハッフルパフに魔法にかけられる。冷蔵庫にある食べかけのひきわり納豆もずっと腐らない。毎日の繰り返し、これが僕の秘密。こんなくだらない事、信じてもらえないような事は中々言えない。
これは僕の物語だけど、お前の物語でもあるんだぞ!完成間近だ!しっかりしろ!!
無限ループしている僕が閉ざされたこのワンルーム。きっとラリアットなんて見つけないで、そのまま失業手当を貰いにいけば良いのだろう。わかっているのだから。でも僕は彼と出会い続けた。永遠の堂々巡り。しかしこれは僕の秘密。僕の思い出話。有限のループ。
ぬという言葉に僕は縛られていた。僕は勝手にこの言葉から。ぬ。から否定的な完結を思い描いていた。僕には出来ぬものだと。けれど、タイトルは全部でもあるが入り口でもあるんだ。初めはあんなに何も出来なかった僕たちがここまで来れたんだ。散りばめられたインスピレーションを言葉にして世界ができていく。気付き、進む。ラリアットをどうにかしようとするんじゃない。ラリアットにどうにかされるんだ。何巡目か分からないほどのある朝。僕はラリアットと出会った。僕自身が何かしようなんて思わなかった。ただ、出会った。時が進んだのを感じた。部屋から出ると。外は眩しかった。
来た!ここまできたぞ作者!締めよう!え?あ、忘れてた。
そしてそれから数十年。今ではラリアットもハッフルパフも家族同然で。いつのまにか僕は馬車より偉くなりましたとさ。ちゃんちゃん。
この流れなら言える馬車より偉い僕の秘密〜ひきわり納豆と壁とかべとカベと壁のワンルームの浴槽で発見されたラリアットは闇鍋暴君。ハッフルパフの逆襲によりサヨナラ失業手当。そこかしこそこかしら。ぬ。〜
おっしまい!
終
最後までお読みくださってありがとうございました。
タイトルを貰うだけならまだしもくっつけてしまった為、人生で指を数えるくらいの苦労になりました。脳味噌が枯れそうです。
その苦悩が色濃く描かれ、これもまた演劇なのだと信じています。
もしこの作品等気に入ってくださいましたら。
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どうかまた書けるようよろしくお願いいたします。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!!