フィジーの世界遺産、レブカに行ってきた話
2024年6月にフィジーを訪問。最大の目的であった固有種のキンミノヒメアオバトを無事に観察・撮影できてヒマになったので、フィジー唯一の世界遺産「レブカの歴史的港町」に行ってきました。レブカとは、イギリス統治時代にフィジーの首都だった場所。1882年に首都が現在のスバに遷都して以降、大規模な開発などはされなかったため、当時のイギリス統治時代の町並みがそのまま残されており、これが評価されて世界遺産に登録されたみたい。ちなみに、町並みが世界遺産に登録されたのは、オセアニア初らしいです。
しかし、レブカはアクセスがいい場所ではありません。Nadi空港から高速バスで5時間かけてSuvaへ行き、そこからローカルバスに乗り換えて2時間かけてNatoviに行って、さらにフェリーで2時間かけてようやく辿り着けます。
もっとも、飛行機や外国人向けツアーなどを使えば簡単に行けると思いますが、それじゃあつまんないし、何しろ自分にはそんな金は無い。なんとしても地元の人が使う交通手段で最安値で訪れたい。
世界遺産なので訪れたいと思っていたが、なかなか大変そう…。というわけで、フィジーのバス会社やフェリー会社の複数社にメールやFacebookのメッセージを送ってみたところ、「Goundar Shipping Limited」から返事が来ました。どうやら、この会社が毎日バスとフェリーで往復しているみたい。
レブカに行く前日、Suva観光のついでにチケットブースの人に聞いてみると、Natovi行きのバスは明日の午前5時に出発するよ、とのこと。めっちゃ朝早いな。とりあえず、翌日のチケット往復分を購入しました。バスとフェリーがセットになったチケットで片道25FJD(1,500円)です。
↑チケット売り場の場所
当日は、午前4時にSuvaの宿を出発して、バス停を目指しました。やはり夜明け前のSuvaは昼間とは雰囲気が異なり、ちょっと怖い。アジア人とは異なり、メラネシア人はちょっと色黒でガタイがいい人が多いので、ただの浮浪者や物乞いのじいさんでも、普通に威圧感がヤバいですね(笑)
5時出発と言われたので、念の為に早起きして4時半にバス停に着きましたが、結局バスが出発したのは6時過ぎでした。オイコラw、このへんの時間感覚は相変わらずテキトーだなwww
フィジーなどの発展途上国では、バスが停車している時にバスの周りに物売りが集まってきます。これがかなり面白くて、バスの窓越しに路上にいる物売りに向かって硬貨を投げると、お菓子が飛んで返って来ます。他にも靴下やイヤホン(たぶん盗品)、さらには傘も同じシステムで格安で買えます。小銭をたくさん持っていても重いだけなので、お菓子を沢山買ってみました。
その後はバスで2時間かけて、Natoviへ。バスの中で仮眠をとれるかと思いましたが、日本と異なり、バスの車内は音楽がガンガン鳴っており煩くて、全く眠れませんでした笑
もっとも、フィジーでは他の国同様、バスの中でスリやひったくりが多発してるので、爆睡はできませんけどね。でもウトウトくらいはしたかったな…
2時間ほどバスで移動し、Natoviに到着。ここからはフェリーに乗り換えて最終目的地のレブカへ向かいます。
バスを降りて、船着き場で待っていると、レブカ行きのフェリーがやってきました。
んんん?なんか船体に口永良部島とか日本の地名が書いてない??
これって、日本で運航していたフェリーじゃん!!!
まじか、まさかこれから乗る船が日本の中古船だなんて思ってもいませんでした!予想外の展開に大興奮!!
口永良部島↔宮之浦↔島間と書かれていることから、鹿児島県の種子島と屋久島、口永良部島の間を運航していた船っぽいですね。調べてみると、このフェリーはフェリー太陽という名前で2021年まで鹿児島で運航していたみたい。2015年の口永良部島噴火の際はこの船を使って島民全員を迅速に避難させ、奇跡的とも言われる噴火による死者ゼロに貢献した船らしい。口永良部島の噴火は、当時中学生だった自分も割と鮮明に覚えています。
鹿児島の離島の住民の足として、長年親しまれており、災害時には大勢の島民の命を救った本船。2021年に引退したあとは、日本から遠く離れた南太平洋の辺境でこうして第2の人生を送っていたなんて。
そして、そんな船に日本人の自分が偶然巡り会えるとは…たぶんこの船にとっても、私は久々の日本人客なのでしょう。船の名前といい、何か運命的なものを感じて感動しました!
本当ならデッキに出て航路探鳥する予定だったけど、ここは予定変更。こんな面白いサプライズは無いので、船内を探検して日本の痕跡を探すことにしました。日本語表記の看板はそのままになっているのも多く、まるで日本国内を旅している感覚に陥ります。が、船内放送や乗客から聞こえてくる言葉はフィジー語で、なんとも不思議な感覚です。
船内探索に夢中になっていると、君はチャイニーズか?と話しかけられました。いや、ジャパニーズだよと答えると、「日本人なのか!!!この船も日本のキュウシュウから来た船なんだよ。君は日本人だから、特別に操舵室を案内してあげる!僕は船長なんだ!!」
うおお!まじか!!
ホントに操舵室に入っていいの!?!?
というかあなた、船長さんだったの?ラフな格好してるから、てっきり地元住民かと思ったわ笑
お言葉に甘えて操舵室に入ってみました。
まじありがとう!!!
ウキウキで操舵室に入りました。こんな大型フェリーの操舵室に入るのは初めて!そして、見たこともないようなレーダーや装置を見てテンション爆上がり!!
とりあえず、他の乗組員たちと自己紹介をして皆と握手タイム。そして、レーダーとかスイッチとかの説明をしてくれました。
このレーダーはこういう性能だよ、このボタンを押すとこうなるよ、とかを教えてもらったけど、私にとってはチンプンカンプン。一応、私は小型船舶免許は持っているのですが、フェリーになるといくら説明されてもさっぱり分かりません(笑)
う〜ん、フェリーの操縦士すごい…
そのあと、船長から逆に質問されました。「この船がフィジーに来たときから気になってたんだけど、これ何だか知ってる?」
あー神棚ね。ずっと掃除されてないみたいで、荒れているな。
そういや、神棚は英語で何ていうんだ?
よく分かんなかったので、超テキトーにKamidanaって答えておきました笑(正確にはShinto altar だそうです)。これは日本の伝統的なアニミズム宗教のシンボルだよ、とざっくり伝えると、「やはりそうか…私達も何か神聖なものだと思っていた。でも、私達は日本の宗教は分からないから、一切触ることができない。こんなに汚れていると、君たちの神様も不本意だろう。よかったら、君が綺麗にしてくれないか?」とまさかの返答。
おっ!マジで!!
予想外のイベントが発生!まさか、異国の地で神棚の掃除をすることになるとは。
面白そうなので、快く引き受けました。まさか、フィジーで神棚掃除をすることになるとは…こういった予想外の展開が起こるのが旅の醍醐味ですね!!
さあ、お掃除クエスト開始!!!
神棚を覗き込むと、枯れたヤシの葉が置いてありました。日本の元船長が南国に行くフェリー太陽のために、あえて榊ではなくてヤシの葉にしたのかな?
とりあえず、ヤシが枯れていたので、撤去して中を綺麗に整えました。枯れた植物をいつまでも神棚に置いておくことは、良くない事とされていますもんね。そのあとは、色々と中の物を取り出して掃除しました。
とはいえ、植物が無い神棚も何か味気ない。レブカからサカキの代わりになるものを持ってこようかな。一応、レブカは世界遺産なので、勝手に植物を採取していいか船長に聞いたら、OKとのこと。
というか、何が問題なの?みたいな感じでしたね(笑)
そうこうしているうちに、気づいたらレブカに到着。神棚に供える植物を持ってきます、といって乗組員たちと一旦別れました。
午前10時頃にレブカに上陸
さて、ここに来て初めて違和感に気づきます。
あれ、観光客自分だけじゃね!?
フェリーの乗客も島内を行き交う人々も、明らかに地元の人たちです。
何でこんなに観光客いなくてのどかなの!?いや、自分としては観光客で溢れているザ・観光地は苦手で、こういう地元感あふれる場所が好きなので有り難いのだが…それにしてもここは世界遺産なんだよな?
そりゃアスセスが悪い所だけど、ここまで観光地化されてないとは思っていなかった。オーバーツーリズムが叫ばれる昨今、こんな場所が残されていたなんて
早速、イギリス統治時代の建物群を訪れてみました。帰りの船は14時に出港するので、時間は4時間あります。ちょっと遠い場所は流しのタクシーを使いながら、巡ってみることにしました。
最初に訪れたのは、Saced Heart Church。
レブカのシンボル的な建物ですね。日曜日ということもあり、礼拝の真っ最中でした。
次に訪れた教会は、半分廃墟となっておりびっくり。そのへんにいた地元のおっちゃんに聞いてみたら、好きに中に入っていいとのことだったので、遠慮なく入ってみることに。
イギリス統治なので、プロテスタントかと思ったけど、こちらの教会はカトリック。カトリックらしくイエス像とか絵画とかがありました。ヨーロッパの豪華絢爛なカトリックの大聖堂も好きだけど、こっちはフィジーの大自然とマッチした質素な石造りで、個人的にはかなり好みです。
近くには座礁した大型タンカーもありました。日本だとすぐに撤去されるけど、ここでは放置されるのかな?
タンカーを直すことは難しくても、鉄屑とかなら金になりそうなんだけど…。なんか、放置されているあたり地元住民はそういうことに無頓着なんだろうなぁ。
こちらは、正真正銘あのフリーメーソンのポリネシア支部の跡地。なんか、建物の屋根に付いているマークがフリーメーソンっぽいなと思っていたら、マジもんのやつでした笑。フリーメーソンって、都市伝説くらいでしか聞いたことないけど、こうやって実在してたのかと実感。
ちなみに屋根が無かったり、全体的にボロくなって遺跡みたいになっているのは、フリーメーソンの活動を不審に思った地元住民たちにより襲撃・放火されたため。フリーメーソンが闇の秘密結社みたいな立ち位置なのは、日本もフィジーも変わらないみたいですね。
他にも色んな教会や遺跡などを見て回りました。やっぱり気になったのは、観光客は皆無で案内板なども無いこと。地元の人たちも、私の姿を見ると興味津々で話しかけてきて良い意味で観光客慣れしていませんでした。
何度も言うけどここ、世界遺産だよな?
南国らしく、全体的に地元の人達はのんびりと過ごしていて、時間に追われて動き回る日本人とは正反対。
一通り、遺跡とかを見終わったら、のんびり鳥を探しながら散歩してみました。電線にはフィジーモリツバメ、フィジーオオタカ、タイヘイヨウショウビンなどがいた他には、海辺にはクロサギとオオアジサシがいた程度。まあ、これまでの旅でこのへんのフィジー的普通種は既にじっくり観察しているので、今回は流し見程度で済ませました。ハリモモチュウシャクの越夏個体がワンチャンいるかも、と干潟も探してみましたが見つかりませんでした。
しばらくしてフェリーの出港時間になったので、レブカを後にしました。
もちろん、太陽フェリーの神棚にお供えする植物も採ってきました。サカキがフィジーに自生している訳ないので、代わりに何にしようか考えて、結局…
一応サカキみたいな葉の植物が無いか島内で探してみたんですが、もちろんそんなものは無かったんですよね…
で、サカキの代用品を考えるにあたって、葉先の尖った植物に神が宿るっていう神道の考えを思い出して(サカキが神棚に祀られている理由もそれ)、じゃあ葉がめっちゃ尖ってるソテツで良くね?って理由でソテツにしました(笑)
それに、その土地の植物を祀る産土神(うぶすなのかみ)信仰を考えても、フィジーに自生しているソテツを使うのは、間違ってない…はず
知らんけど
神様のお気に召したのか分からないけど、心を込めて掃除したので、しっかりご利益がありますように。
フェリー太陽の今後の航海の安全と、乗組員の無事を祈って、二礼二拍手一礼をしました。
その後は甲板でのんびり鳥を見てました。とはいえ、成果はオオアジサシとヒメクロアジサシがパラパラと飛んでいたのと、カツオドリ2羽が見られた程度。ライファーは無し。ガウ島が近いので、Fiji Petrelとかを狙っていましたが、普通に無理でした。そもそもPetrel自体を見かけませんでした。
レブカの訪問はこんな感じです。本当に長くて盛りだくさんの1日でした!他にもフィジーでは、色んな固有の野鳥を見たり、Suva観光をしたり、現職大統領に偶然会ったり、野良犬に懐かれて4日間行動を共にしたり、本当に充実した面白い旅をしてきたので、そのことも気が向いたらnoteに書こうと思います。
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