外に出れない子どもたち
ニューヨークの子どもたちはもうずっとリモート授業で学校に行っていない子が多い。家族や学校によって違うが、3月半ばからもうずっと行っていない子どもも多い。学校に行かない代わりに自由に過ごせるかというとそうではない。各家庭の指針にもよるけれど、家に友だちを呼んで遊んだり、電車やバスで旅行に行ったり、図書館に行ったり、映画館や美術館に行ったり、お稽古ごとに出かけたり、そういうことが全くできないときもあった。今は少しマシになったが、いろんなことが以前のように気軽にはできない。ひどいことになってしまったと今さら思う。
息子の学校はパフォーミングアーツ系で、年中いろんな企画イベントがある学校だったのにそれもまるでなくなった。音楽コンサートも、ミュージカルパフォーマンスも、クリスマスショー見学も、美術館巡りも、なにもない。無理やりヴァーチャルでミュージカルとか作ったみたいだけど、うちの息子は全く興味なくて参加しなかった。中学1年生、2年生って自由で楽しい時期だと思うのに、本当にかわいそうだと思う。
シティにいても何もすることがないから多くの人が郊外や他州に引っ越していった。もちろん、引っ越しができる人は。金のない者は動くこともできない。酷寒でも自然の中だとそれなりにすることはあるし、心もゆったりするだろう。でもシティではあまりすることがない。
ちょっと内向的で、オンライン授業でもどちらかと言えば集中できるタイプの息子は今まで何も文句を言ってこなかったが、数か月前から夜寝るときは私にそばにいてほしいと言うようになった。それは短い期間で自然に終了したけれど夜になると「さみしい」「閉じ込められてる感じがする」と言っていた。私は真っ青になった。うちの息子ですらこうなのだから、もっと外向的でずっと一人で座っていられないような子は一体どうしているんだろう。そしてみんなある程度電子機器中毒になっている。
今、日本に里帰り中で、2週間の隔離中はあまりすることもなく散歩ばかりしているが息子は「楽しい」という。「なんにもないよりマシ」
日本に来て、例えば朝のラッシュ時などに地下鉄の駅からたくさんの高校生や会社員が出てくるのを見かけると、すごく不思議な気持ちになる。10月にニューヨーク市のレストラン内で飲食が解禁になったとき、お店のテーブルにお客さんが座っているのを見てものすごく不思議な気持ちになった。日本に来るとニューヨークがいかに異常なのかがわかる。知り合いの人にも「大変ねえ」と言われる。本当に大変なのだ。ニューヨークにはニューヨークの事情があってそうなっているのだけれど...
少し前にニューヨーク市の感染率がどんどん上昇した。「3パーセント以上になったら新しい規制の対象になる」という既存の州のプランに沿って、週に2,3日のみ学校に登校するハイブリッド形式(リモート授業のみも選択で可)が中止された。子どもたちはまた完全リモート授業になった。学校内の感染率は高くないのに、バーやレストラン、ジムなどはオープンしたまま学校がクローズされた。息子はすごく怒っていた。私も学校を閉めるのは一番最後なんじゃないのって思う。ハイブリッド形式っていったって、リモート授業のようなものだから、どっちみち通学してまでする必要ないのかもしれない。先生たちだって感染の危険に晒されるんだし、リモートにしとけば安全なのかもしれない。でもでも。運動会や学園祭などを中止にしといてGoToは残すみたいな。甲子園は中止でオリンピックは無理にでも続行みたいな。金が入ってこないところはクローズ。子どもよりも大人優先、教育よりも経済優先。どこか気分が悪い。でもアメリカの異常に高い感染者数を見ていると、まーしゃーないか、、とは思うのだけど。危機が起こった時にその国の価値観ってあらわれる。つまり、そういうことだ。
子どもたちはすごくがんばってる。大人たちは見習って邪魔をしないようにすべきだと思う。