ミュージカル『ミス・サイゴン』北海道公演(3)
(2)つづき
2-3.キャスト別感想
❇︎西川トゥイ❇︎ 西川さんは、コロナ禍となってからの『クロネコチャンネル』で、たくさん元気をもらいました。中でも、サイゴン出演者の皆さんとの対談や作品解説も面白くて、観劇前に知るところも多くあり、より登場人物への理解も深まりました。西川トゥイは、昆キムにとって、リアルな幼なじみという印象。そして、丁寧な台詞の紡ぎ方が心に残っています。戦争がなければ、親が決めた結婚にキムは反発もしただろうけれど、結果として穏やかな二人の暮らしがあったかもしれない、そう想像させる穏やかさを西川トゥイに見ました。カーテンコールまで、トゥイのキャラクターでお辞儀している感じもあって、最後のお手振りでようやく西川さんが戻って来たように見えましたが、それくらい西川さんの中でトゥイが生きているのだろうな、と伝わりました。
❇︎神田トゥイ❇︎ キムのことを全力で愛しているトゥイ。ようやく再会したキムから、クリスのこと、そしてタムの存在を明かされたときの目の表情が忘れられません。キムよ、何てことをしてくれたのだ、、、というトゥイの絶望感とそれでもなおキムを連れて行こうとする執念が凄まじかった。昆キムも、西川トゥイのときは、苦しそうに微笑んで分かってもらおうとする感じでしたが、神田トゥイには、もう無理なの、と懇願するようにも見えました。どちらのトゥイもそれぞれ本当に素晴らしかったです。
❇︎松原エレン❇︎ しっかりとクリスの妻であることを自覚して、覚悟の決まった感じがしました。キムと直接会った場面では、クリスの心がキムに移ってしまうことへの不安に揺らぎますが、でも妻は私、という強さが歌声にも表現されているようで。海宝クリスだと母のような、小野田クリスだと姉のような包容力を感じました。
❇︎仙名エレン❇︎ さりげない穏やかさでクリスに寄り添う、絶妙な距離感のエレン。クリスにとって、精神的な支えであることが仙名エレンから醸し出されていました。どうしても、『蝶々夫人』のケイトを想像すると、エレンの立ち位置は難しいところだと思います。しかし、仙名エレンからは、柔らかなオーラがあって、もしエレンがいなかったら、クリスはもう生きていなかったかもしれない、と思うほどでした。
❇︎上野ジョン❇︎ ジョンの存在も難しい。そもそもジョンがクリスにキムを引き合わせなければ、この物語は始まらなかったわけで。上野ジョンは、この物語の中で自在に変化する存在に見えました。一番上手く立ち回ったのは、ジョンかもしれないと思えてきたり、、、上原ジョンと違って赤いバンダナを巻いていたのは、どういうメッセージだったのか知りたい。
❇︎上原ジョン❇︎ クリスのことを常に心配して、アメリカ帰国後は、特に気にかけていたのだろうと想像しました。また、クリスより先にキムと再会して、キムのクリスへの深い愛を知り、困惑している姿も印象的でした。♪ブイドイの歌い始めから、ネクタイを緩めて語るように歌う姿、ジョンの強い気持ちが感じられました。
(4)へつづく
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