今までと違う、観劇の余韻。

先日、コロナ禍となってからの観劇再開について綴りました。帰宅してから、感染への不安感と、観劇できた幸福感を行ったり来たりして、気持ちの落ち着かない日々でした。今、遠征から2週間経ち、家族も私も体調の変化はなかったので、ひとまずほっとしています。

こんなに気を張る一人旅は初めてでした。例えば感染対策。ホテルの部屋を出たらマスクを外さない、飲食はテイクアウトのみ、劇場以外には立ち寄らない、現状で考え得る対策をしました。そして、何より当日無事に公演が開催されたこと。劇場に行き、座席に着き、舞台が暗転し、物語が始まるまで、身体中に張り詰めた感覚がありました。

今、あらためて思うのは、今までいかに非日常が常態化していたかいうこと。コロナ禍となったこの1年余りが非日常だったのではなく、コロナ禍以前の日常の方が異常だったのかもしれない、と思うのです。

コロナ禍以前の遠征スケジュールは、1泊2日が限度なので、早朝便や最終便を選んで最大3公演観劇、その合間に食事やショッピング。心はハイテンション、身体はぐったり。帰宅したら何事も無かったかのように出社して現実の世界へ。こんなことを繰り返していましたが、観劇が最大の楽しみな自分には、これがいつからか当たり前のことになっていました。予定通りに移動できること、予定通りに公演があること、すべてが前提の遠征。しかし、それが今は、予約したフライトも減便や欠航があり得るし、公演もいつ中止になるか予測できない状況に。この状況に慣れることはありませんが、予定が未定であることを覚悟できるようにはなり、今回、観劇以外の行動を削ぎ落とし観劇に全集中したことで、心境の変化を感じています。

観劇は、やっぱり特別な体験だ。

ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』は、心から観たいと願った作品です。今だからこそ観たい、1年以上観劇できなかった自分が、何を感じ受け取れるのか確かめたいという気持ちもありました。『アリージャンス』で知った歴史の事実は、心に深く刻まれました。観劇後、いくつか戦争のドキュメンタリーを見ましたが、いつの時代もどの国のことであっても、自分自身は何者なのか、何を信じて生きるのか、心をえぐられます。あらゆる人が苦しむ、救いのない行為が戦争や差別であると今まで以上に感じます。そして、思い出される舞台の家族。おじいちゃん(上條恒彦さん)、パパ(渡辺徹さん)、ケイ(濱田めぐみさん)、サミー(海宝直人さん)。それぞれの家族が見せた表情や感情が、目をつむると浮かんできます。心の中にじんわりと蘇る舞台の景色。おじいちゃんの静かで深い愛、パパの不器用だけど確かな愛、ケイの勇気溢れる愛、サミーの真っ直ぐな愛。家族みんなの愛が心に染み込んでいます。これからは、またこんな観劇体験ができるように、心惹かれる作品に丁寧に接したい、と思いました。

今までとは明らかに違う、観劇の余韻。この感覚を大切に今後も観劇をしていきたいです。



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