ミュージカル『next to normal』(注!内容に触れています!)
観劇の翌朝、日比谷周辺は静かでひんやりとした空気です。頭がずっと冴えていて、早朝にホテルから外出しました。表題の写真は、そのときの一枚。あぁ、昨晩の観劇体験からまだまだ抜け出せません。ひとまず、今日の2回目の観劇で記憶が上書きされる前に、書き留めます。
『next to normal』、作品自体は初観劇。ただし、劇中の♪I'm Aliveは、海宝直人さんのアルバムで聴き、その訳詞から色々と想像はしていましたが、想像以上の切なさと苦しみが心に迫りました。
劇中に出てくる色。赤、青、黒、白そして、紫。それぞれ相対する色であり、赤と青を混ぜれば紫になる。紫は、赤の情熱と青の冷静の性質を混ぜ合わせた中間にある色なので、心の二面性や不安を表すことを知りました。(高貴な色くらいの認識でしたが)これを考えると、この作品では、赤は異常さを青は正常であることを、紫はその狭間を行き来している状態を表すのかなぁ、と。ダイアナが、自分のことを話すとき、自分ではない感覚があるというような台詞を言っていましたが、それは私にもある感覚。作品全体を通して、何が正常で何が異常かなんて、誰も分からないし、決められないけれど、その狭間でバランスを取りながら人は「生きている」ということ、初見ではそう受け止めました。ただし、ゲイブは?ダイアナの心の中で成長し、ダイアナの理想であり、ロマンスでもあるゲイブは?ゲイブがこの家族の中で生きることは、苦しみにしかならないのか。
今、一晩経って印象深いのは、ラストでゲイブとダンが同じ赤を身につけていたこと。ダイアナやナタリーは紫であったことを考えると、ゲイブとダンは、これから心の底にある自分と向き合っていく辛さを味わうということなのか。それをナタリーやヘンリーが関わり支え、いずれナタリーとヘンリーが家族になって、無限にループしていく関係性を暗示しているのだろうか。家族とは、そういう風に続いていくという、人の営みである、何処にでもあると示しているのか。
本当に考え出すと止まらなくなります。
個人的に心が苦しくなるほどに、好きになった場面についても。ダイアナがゲイブの死に向き合おうとしたときに、白いタキシード姿でゲイブが現れ、共にダンスをする場面。白と黒が混ざり合い、生から死へと吸引力を発する、海宝さん演じるゲイブ。本当に、哀しく美しくて。ダイアナがゲイブを手放せない抗えないのも分かる。そして、ゲイブが自分とは何者なのか、母ダイアナを通して探し求めるのも分かる。そこには、究極の共依存があると感じました。さらに、ダンとゲイブが激しくぶつかる場面。ダンにもゲイブが見えていることにも驚きましたが、劇中「ゲイブ、ガブリエル」と名前を発したのは、唯一ダンだけ?!(これは、今日の観劇で確認しなくては)それに対して、ゲイブも「パパ」と応えていて、その父と息子のやり取りも心に刺さりました。岡田さんと海宝さんが本当の父と息子のように、リンクして見えた瞬間です。
しばらくは、この作品を考える日々になりそうです。今後も思うところを書き留めていこうと思います。(それにしても、もっと深掘りして再び繰り返し観たいなぁ。公演回数がもっとほしい!)
最後に。シアタークリエは、2019年の『ロカビリー☆ジャック』以来でしたが、やはり、舞台からの臨場感が最高でした。(個人的にサイズ感が好き)海宝さんはじめ、皆さんのパフォーマンスが伝わる最高の観劇体験に感謝です。
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