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思い出し『ミス・サイゴン』、クリスのこと。

『ミス・サイゴン』の世界を行ったり来たりの日々です。

この作品を観劇するきっかけとなった、海宝クリスと小野田クリスは、ミュージカル観劇の深い魅力を再認識させてくれました。この二人のクリスのことを中心に思い出したことを。(!ネタバレご注意を!)

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❇︎キムとの出会い❇︎  「あの子は誰だ?!」、とキムを見つけたときのクリスの一言。海宝クリスは、光を見つけたように昂る想いを込めた感じ。小野田クリスは、こんな所になぜあんな幼い子がいるのだ、というやるせない想いを含んだ感じ。私の第一印象で、海宝クリスは恋愛感情多め、小野田クリスは友愛や思いやりの感情が強めに感じたのは、この一言の違いから。

❇︎♪サン・アンド・ムーン❇︎  直前の♪神よ何故で、クリスはハッキリと「あの子は救えない」と言っていたのに、キムの身の上を聞いて、一気にキムのことを引き受けようとします。この急展開が、初見では馴染めない感じもありました。しかし、この二人の置かれた状況は戦争の最中。緊迫した中で、揺れ動きながらキムをアメリカへ連れて行こうと決断したクリスの心情は、不安定で危ういものに映るのだろうと思いました。特に、海宝クリスは、情緒の不安定さが際立っていて、キムを救うことが自らを救うことにも等しいような印象がありました。見ていてヒリヒリする感じ。

❇︎婚礼の場面❇︎  クリスは、言葉も風習も分からず、キムたちが何をしているのか戸惑いながらも、ドリームランドの皆から祝福される場面。靴を脱ぐように言われ、脱いだ靴をテーブルに置いて怒られてしまうのは、二人とも同じでしたが、身を清めるため?手を洗い、お酒(度数が高そう)を飲むところで、海宝クリスと小野田クリスで少し違いがありました。海宝クリスは、渡された小さなグラスを「これ、飲むの?」という感じで飲み干しますが、小野田クリスは、一瞬「?」って感じで隣の女性にグラスを差し向けた後、「違う、あんたが飲むの」と返されてから飲む、という流れでした。

❇︎ホテル告白の場面❇︎  キムを救いたい一心だったのに、できなかった。できるはずだったのに。海宝クリスは、言葉にするほどに感情がコントロールできなくなって発作を起こしたような苦しい姿になります。小野田クリスは、側にある椅子を床に強く打ちつけながら、とめどもない悔しさを表現していました。

❇︎キムの死❇︎  キャスト別感想でも書きましたが、二人のクリスの違いが鮮やかだったのが、この場面でした。瀕死のキムにすぐ駆け寄り、抱き寄せて傷口をふさぐ仕草をする海宝クリス。一方で、キムの側にすぐには近づけずに後退りした後、キムを抱き寄せる小野田クリス。キムが息を引き取ってからも、海宝クリスは、キムを生き返らせたい一心で抱きしめているように見え、小野田クリスは、何度もキムの腕を自分の首に巻きつけようとしていました。(初めてダンスをしたとき、キムの腕をそうやって首元に引き寄せていたのを思い出すと、より悲壮感が)今思い出しても苦しくて、この先あの場にいた人々はどうなってしまうのか、観客にも絶望感が襲ってくる場面。クリスの最後の叫びからは、一生抜け出すことのできない暗闇に落ちていく感覚を覚えました。この絶望感は、海宝クリスがより深い感じ。

本当に、この終わり方は辛い。カーテンコールも、初めのうちはキャストの皆さんも表情が固い感じでした。特に、キムとクリスはそうなりますよね。エンジニアがタムを呼んで、キム、タム、クリスの並びで手を繋いでいる姿が見られて、ようやく観客もホッとするというか、救いになるというか。

今日は、富山公演も無事に開幕してよかったです。引き続き、『ミス・サイゴン』を応援しています。

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