なぜ鎖国は良かったのか?
なぜかつての日本の鎖国は良かったのか?
「鎖国」と聞くと、「海外からの情報を遮断していた暗黒の時代」と否定的に語られがちです。しかし、江戸時代の日本が200年以上も続いた安定した社会を維持した背景には、この鎖国政策が大いに関わっているとも言われています。今回は、保守の視点から、鎖国のメリットを面白おかしくご紹介。さらに、現代の私たちが何を学べるのかまで考えてみましょう。
1. 国が安定すると庶民も平穏
鎖国下の江戸時代は、国内での大規模な戦乱がほとんどなかった時代として知られています。戦国時代が終わって「天下泰平の世」と言われるようになり、庶民は内戦の恐怖に怯えることなく農作業や商い、職人仕事に精を出すことができたのです。
• 平穏がもたらす経済成長
戦がないと生産活動に専念できます。農業技術の向上や商業の発展が進み、お米や特産品を全国に流通させるインフラが整っていきました。金や銀をじゃんじゃん輸出して財政破綻…なんてリスクも、鎖国でコントロールされていたからこそ低めに抑えられた面もあったとか。
• 人々の“和”が育まれる
社会が安定すると、人々の間にも「秩序を守ろう」という気持ちが生まれやすい。お上(幕府)に無理やり押さえつけられていた部分もそりゃありますが、「争いごとは嫌だよね」という共通認識が庶民に定着したのは大きいです。
2. 国内文化が独自に発展
外国と切り離されていた、と言っても全くのゼロではなく長崎の出島などで限られた交流は行われていました。ただし、基本的には国内がメイン。外国の流行や価値観に過度に翻弄されることなく、日本独自の文化が花開いたのです。
• 浮世絵、歌舞伎、狂言…独自の芸能ブーム
鎖国は国内のエンタメ需要を刺激し、「自分たちで楽しむしかない」空気が醸成されました。結果的に浮世絵や歌舞伎などの芸術文化が庶民文化として大いに発展。これらは後に海外に大きな影響を与え、「ジャポニスム」の流行を生むほどの魅力になりました。
• 食文化の熟成
江戸前寿司や天ぷらといった和食のスタイルは、江戸時代に大きく形が整えられた部分があります。海外からの食材が入りづらい環境下で、限られた材料を工夫することで、多彩な和食文化が発達していったとも言えるでしょう。
3. 限られた情報だからこそ工夫が生まれる
情報社会の現代から見ると「海外の情報を遮断なんて大丈夫?」と思いがちですが、閉ざされた環境ゆえの強みもありました。外の情報に対して制限があるからこそ、わずかに入ってくる書物や知識を庶民や知識人たちが渇望し、猛烈に勉強するわけです。
• 蘭学の熱狂的ブーム
長崎の出島を通じて「オランダ語」の書物や科学技術がもたらされると、それを学ぼうとする人たちが大勢現れました。教科書や辞書の翻訳は独力でコツコツ。ペリーが来航する頃には、「西洋の大砲や医学、天文学の基礎はけっこう知ってるぜ」という蘭学者たちが育っていた…というのも、ある種の鎖国パワーかもしれません。
• アイデアの独自進化
外国の発明や技術を丸ごと輸入できないとなると、「どうにか自前で作り出せないか?」と創意工夫が進むもの。これが結果的に技術力の底上げや器用さにつながり、明治以降の急速な近代化を支える原動力になった説もあります。
4. 幕府による国防管理のシンプル化
大航海時代にヨーロッパ列強が世界中を植民地化していたことを考えれば、「よく日本は侵略されずに済んだな」と不思議に思う方もいるかもしれません。しかし、当時の日本は海に囲まれており、外国船がやってきても容易には上陸できない。しかも、唯一の貿易窓口である長崎を厳しく管理していたからこそ、海外勢力がやすやすと入り込めなかったわけです。
• 簡単に入り込めないハードル
鎖国政策のおかげで、海外勢力が「ちょっと日本を支配してみようかな」と思っても、まずルートが限られている。出島一本に絞ることで、幕府は「怪しそうな奴は入れない」というコントロールが比較的しやすかったのでしょう。
• 外交リスクを最小限に
鎖国と言いつつ、清(中国)やオランダとの貿易は認め、国際情勢を一応キャッチしていた点も見逃せません。完全に“ゼロ外交”ではなく、あくまで限定的な交流でリスクをコントロールしていたのが当時のやり方。まさに“選択的”な鎖国だったとも言えます。
5. なぜ今の日本がこれを学ぶべきか?
もちろん、現代社会で江戸時代のような完全鎖国を実施するのは非現実的。国際社会から孤立してしまったら、今の日本経済は立ち行かなくなるでしょう。しかし、当時の鎖国から学ぶべきエッセンスはいくつもあります。
1. 国際情勢を見極める慎重さ
いまも国際関係は複雑そのもの。どこかの大国が覇権を握るために動きだすたび、日本も翻弄されがちです。そんなとき、やみくもに「グローバル化バンザイ!」と門戸を開くのではなく、どの国や企業とどう付き合うかを選り分ける“賢い鎖国”精神が必要かもしれません。
2. 自国文化の魅力を磨く
江戸の鎖国下で育まれた和食や芸能、工芸品などは今や世界中にファンを持っています。日本古来の良さをしっかり発信し、守り、世界にアピールするには「独自性」が欠かせない。外のトレンドを真似するだけでは埋没してしまうんですね。
3. 技術や知識の“使いこなし”
鎖国中でもオランダ語を学んで医学や天文学を取り入れた先人のように、外来のテクノロジーを活かしながら、自分たち流にアレンジする力があれば、新しい産業や文化を創造できます。受け身で輸入するだけではなく、主体的に咀嚼する姿勢が大切。
まとめ
かつての日本の鎖国は、「世界から取り残された愚行」なんて一言で片付けられるものではありません。戦乱の終わりを受け、国内が安定して文化が開花し、限られた外国情報を工夫して活用する土台を築いた――そう考えると、むしろメリットも多かったわけです。もちろん、現代に同じ政策を実行するのは困難ですが、慎重な国際関係の取り扱いや独自文化の育成など、鎖国から学べるポイントはまだまだある。
グローバル化の波が一気に広がる中、「日本の強みとは何か? どう守り、どう世界に発信するか?」という問いがますます重要になっています。そんなとき、“鎖国”という極端な選択肢に込められた知恵と心意気をもう一度思い出すのは、決して無駄ではないかもしれません。江戸時代の先人たちのように、“うまく外を締めつつ、必要なところは開く”というバランス感覚こそ、現代の日本が学ぶべきヒントではないでしょうか。