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枯葉舞う イワナ染まる

#44|フライフィッシング/FlyFishing

遠ざかる夏。山奥からかすかに聞こえてくるセミの鳴き声。「ツクツクボウシ、ツクツクボウシ、もういいよ、もういいよ……」。空耳か、そろそろ竿を置きなさいと言わんばかり。

今シーズン最後の山籠もり。ずいぶん前から、この日をシーズンラストにと有給休暇を取得していたのだが、あいにく、コロナワクチンを接種した妻が前日に発熱。危ぶまれた釣行だったが、翌朝には熱が引いたようで「行っといで。最後なんだから」とその一声に救われました。

気持ちよくロッドが振れれば、1匹でも釣れれば。尺超えなんて贅沢言いません……。おおらかな気持ちで釣場に立ったのは午前10時過ぎ。まだ汗ばむ陽気に変わりはないが、水辺にはツリフネソウ。枯葉混じる流れに初秋の足音を感じた。じわりじわりと染まりつつある山渓。

季節の移ろいに浸りつつ釣り上がると、いつの間にやら前後に釣り人の影。 声かけてくれる人はみな遠方からやってきたという。「どうぞ。上行ってください。気になさらず……」。諦め半分、そう言うしかありませんでした。最後の釣行にドラマは起きず。

それでも3尾ほど釣れたイワナ。秋色に染まってきれいだなぁ。

やっと竿を置く気になれました。

今シーズンも大自然に感謝しつつ「納竿」。また来年……。

2021年9月28日/新潟県上越地方


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Profile
1979年生まれ。2007年に新潟県上越地方に移住。自由と孤独を愛する西洋式毛鉤釣師(フライフィッシング)。いかにして豊かな人生を歩むか、模索の日々を邁進中。

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