体を、心を、広い世界へ向けていきたい【日記】
私は焦っていた。
明日、地元の楽器店でピアノを少し演奏するというのに、前日になってもなかなか上達しないからである。
2週間前に出演を決め、1週間半前くらいに、以前弾いていた曲をさらい始めた。
なかなか感覚がつかめない曲があった。
スクリャービンの前奏曲(Op.11-11)。
声部が多くて、左手の和音の音域が広く、あちこちへ分散する曲。
私は右手に局所性ジストニアという病気を持っている。意思に反して指が動いてしまうもので、私の場合、右手の薬指を思うようにコントロールすることが難しい。
体をまだ上手くコントロールできていないため、右手で歌う旋律が弱くなってしまう。
加えてこの曲は左手が難しく、そっちに気を取られて更に右手の旋律が消えかかる。
昨日は、練習すればするほど音楽が崩れていった。
音楽を受け止めたいのに、何をどう聞けばよいかもわからなくなる。
心の置きどころが無い感覚。
心が閉ざされた感覚。
それで、昨日は練習をやめた。
だから今日は脱出したかった。
でも、練習時間はあと20分程。
明日が本番。どうする。
難しい左を練習したかった。
けど、、、右手の旋律、歌いたい。
私は左手の練習を諦めて、右手の旋律に耳を傾けて弾いてみることにした。
そこで驚いた。
耳を傾けるだけ。それだけなのに
始めた瞬間、視界が開けるように音楽が前に進む。
右手の息苦しいような感覚が解けた。
心が自由になった。
気がつけば、左手は、意識しなくても自然に柔らかく動いている。
前よりも、音が響きの中に混ざっている。
左手の対旋律も耳に入ってくる。
耳が自分の弾く旋律を受け入れて
心が広くなって
体も自由になっていく
そして音楽と向き合えるようになる。
心地よい。
そこには、ピアノで歌える喜びがあった。
この快感を求め、また頑張れる気がした。
私は何かに閉じこもっていたんだな。
意識を外へ向けようと思った。
見える世界が広がる。
体も心も自由に、もっと広い世界へ向けていきたい。
明日、どうなるかな。笑
2022.09.17