【MK8DX】6v6におけるコース抽選が勝敗に与える影響
はじめに
マリオカート8 デラックス(以下、MK8D)は、2017年4月28日に発売されたNintendo Switch専用ゲームである。世界累計販売本数5379万本を記録する非常に人気のあるゲームであるが、Nintendo Direct 2022.2.10にてコース追加パスが発表されてからはさらに盛り上がっている印象を受ける。ゲーム全体の盛り上がりに伴い、非公式ではあるがラウンジと呼ばれるレーティング対戦システムや大会など競技シーンも盛り上がっている。
MK8Dの対戦は、レース前に各プレイヤーがコースを選択し、抽選されて当選したコースが次レースのコースとなる。スタート位置、点数状況などを考慮して選択したコースが抽選の結果によっては走行できないということを考えたとき、コース抽選は勝敗を決定づける重要な要素だと判断することができるのではないだろうか。実際に競技者のラウンジ配信や大会配信では「ナイストラック!」「コース引けねぇ~」等コース抽選に当選したことを喜んだり、逆に外れ続けていることを憂う場面も多い。これはコース抽選の結果によって勝利に近づく、もしくは遠のくことがプレイヤー間ではある程度正しいものとして認識されているからであろうと推察できる。しかしながら、コース抽選の当落は実際に勝敗に影響があるのか、特にどれくらい影響があるのかについてはあまり言及されていないようにみえる。そこで、中でも人気の高い対戦形式である6v6について、コース抽選に当選することが勝敗にどのような影響を及ぼすかについて調査を行った。
なお、筆者はMK8Dの競技プレイヤーではないため誤認識が多分に含まれる可能性があること、今回の調査はVer.2.3.0環境下であることを注意しておく。
調査範囲と方法
1.調査範囲
2023年6月12日から同年7月9日にわたり開催されたMario Kart World Cup 2023MK8D部門のブラスケットステージで行われた試合のうち、勝敗が確定しておらず、配信等でコース選択とその結果を確認することができ、両チームのコース選択が重複していない33試合、346レースをサンプルとした。
2.当選した場合の得失点(調査Ⅰ)
各レースごとに当選チームとそのチームの得失点を記録した。その後、Googleスプレッドシートにて当選したチームの加点した割合と当選した場合の1レース当たりの得失点を全サンプル、準々決勝以上、準決勝以上それぞれについて計算した。
3.各ケースごとの割合(調査Ⅱ)
各試合ごとに各チームの当選回数とその差を記録した。その後、Googleスプレッドシートにて勝利チームの方が当選回数の少ない試合、同数の試合、多い試合に振り分け、各ケースごとの割合を計算した。
結果と考察
調査Ⅰ.当選した場合の得失点
コース抽選に当選したチームが加点した割合は全サンプルで52.89%、準々決勝以上で50.91%、準決勝以上で52.63%となり、いずれも当選したチームが落選したチームに比べて加点する割合が高くなった(Table 1)。これによりコース抽選に当選することは加点の一因であることが示唆された。当選した場合の1レース当たりの得失点では、値は小さいもののいずれの値もプラスであり(Table 2)、これらの範囲で加点の一端を担っていることが確認された。しかし、平均値に注目すると全サンプル、準々決勝以上、準決勝以上の順で減少しており、準決勝以上では+0.079と、ほぼ0になっている。これは、両チームの実力が拮抗するほどコース抽選による得失点への影響が小さくなるからだと判断できそうだが、サンプル数が減少していることから断定はできない。
調査Ⅱ.各ケースごとの割合
勝利チームの方が当選回数の少ない試合、同数の試合、多い試合の各ケースごとの回数をTable 3に、割合をFig. 1に示す。もし対戦相手より当選回数が多いことが勝利に大きく影響を与えるとするならば、勝利チームの方が当選回数の多いケースの割合が多くを占めると予想できる。しかしながら、勝利チームの方が当選回数の多い試合は39.39%、少ない試合は45.45%となっており、当選回数が少ない試合の方が高くなっている。勝利チームの方が当選回数が多い試合の割合自体も4割弱にとどまり、この推論が正しいとは言い難い。よって、当選回数の多寡による影響の範囲は分からないが、大きく影響されることはないといえそうだ。当選回数の多寡による影響の範囲については今後の調査に期待したい。
以上の結果からコース抽選に当選することは対戦に有利な影響を及ぼすと結論付けられる。ただしその影響は小さく、他の要因によって覆せないほど絶対的なものではないと考える。それを裏付けるように、当選回数が対戦相手より多い場合に必ずしも有利であるとはいえないという結果が示された。
最後に、現在のMK8Dの競技シーンは非公式であるがゆえにやむを得ない部分もあると想像するが一見しただけでは何をやっているかわからない、どのチームがどの程度有利なのか不利なのかを理解するのが非常に難解であるように思う。今回の調査がその解釈の一助となれば幸いである。また、他の形式ではどのような影響があるのか、コースだけでなくまた違った観点からもMK8Dの競技シーンが解明されていくことを期待する。
資料
2023年7月29日 初稿