演劇仕立ての出版記念公演
2022年1月25日に河出書房新社より出版されました拙著「まなざしの革命」の刊行記念イベントを、東京の青山ブックセンターで2月1日に行った。新月でしかも旧正月にあたる日に、こうして刊行記念ができたことは新しいスタートにとって、非常に良い日取りだった。
前著の「まなざしのデザイン」を出した2017年の11月は、当時住んでいたバルセロナから一時帰国し、1ヶ月間に12都市17講演の出版講演のキャラバンを行った。しかし今回はパンデミック下のためイベントが度々行えない。なおかつオンラインでもご覧いただけるため、場所を変えて同じ内容を何度もお話しするようなことにもならない。なので今回は、おそらく刊行記念としてはこの一回のみになるだろうと考えていた。
今回はこれまでの自分の講演に、より演劇的な要素を取り入れるという実験的なチャレンジがあったため、事前の準備にとても時間がかかった。だが自分としては概ね表現したいと考えていたことは出来たのではないかと思う。会場には通常に比べると人は少ないが、それでもこのような状況の中で、駆けつけてくれた方々がたくさん居た。ウェビナーでの参加者は僕の方では把握できない設定になっていたが、多くの方がご覧いただいていたと聞いている。
本書の刊行と並行して昨年の10月より始めたポッドキャスト「まなざしの革命放送」や、制作した映像「革命前夜 the Night before our revolutions」とそれと世界観を共有する形で、このイベントでは空間を設えた。
冒頭では、本書の一部を朗読として読み上げた。朗読した箇所は第1章の「常識」から「固定化するまなざし」という節だ。ウェビナでご覧いただいた方々は、おそらくそこが会議室の中ではなく、野営地かどこかのように見えたのではないかと思う。朗読が終わり電気が点いた瞬間にそこが会議室であったということが分かり驚いたという声も耳に届いた。
その後、スライドを使って1時間ほど話をする。本書の中から第1章の「常識」と第2章「感染」を説明しながら、このパンデミック以降の今の世界がいかに「例外状態」にあるのかについて共有する。
スライドは今回のために作成した初卸のもので、結構気合い入れて作ったが、実はこのプレゼンテーションは、本書の全ての節をスライド化しており、これを聞けば丸々一冊、本を読まなくても内容が伝わるようになっている。前著の時に目立ったのは、プレゼンテーションを聞いた方々は本を買わないか、あるいは買っても読まないという傾向だったので、今回はスライドの大部分は封印して全てを話切らないように配慮した。耳で伝わると安易に理解した気になるので、しっかりと文字で深みを伝えたいと考えているからだ。
スライドで話した後、最後にもう一度、本書の第9章「解放」の章の「私たちは何から解放されるのか」の最後を朗読して、そのまま映像「革命前夜」を流した。
後半は会場からの質疑に応答していく。最初は皆さん緊張して質問されなかったが、一人が質問し始め、もう一人が質問し始め、最後にはたくさん手が上がっていろんな質問が飛び交った。
僕は一応、これまでにどんなものであったもいただいた質問には全て答えるようにしている。講演のないようとは全く関係のないようなことでも、日常のささいな疑問でも答えるようにはしてきた。そうやっていただいた質問を思考し、言語化を続けてきたことで、いつの間にかほとんどどんな質問でも答えられるようになった。だから質疑は僕にとって非常によいトレーニングの場だ。
今回出た質問はこのようなものだった。
・本に書かれていた「アウトキャスティング思考」について詳しく教えてほしい。
・見方を変えるにはどうすればいいのか。
・子供の頃に親から世間の常識を押し付けられたが、それが受け入れられなかった。子育てにおいてどのようなことに注意すればいいのか。
・講演の中にあった「物事の解釈を変える」ことと「自分の認識を改める」ことの違いについてもう少し詳しくしりたい。
・まなざしに革命が起こり解放された先に何が待っているのか。悟りとはどういうものなのか。
・聖地や神聖なものなどに触れた時に得られる感覚について何か思うところを。
それぞれ全て共通する話なので答えていく。ご参加いただいていない方々もおられるので、どのような応答をしたのかは、いつかどこかで映像か音声などで共有できるようにできればと思う。
いずれにせよ、皆さんのお顔を拝見していると、こうして言語化することで何かヒントが得られたのではないかという手応えは感じられた。
一期一会の人生の中でこうして人前でお話しできる時間は貴重だ。そしてそれを聴きに来ようと思い、実際に足を運ぶあるいはウェブで申し込むという行動に移せる人は、本当に限られている。そんな中で、縁あって一緒に考える時間を多くの方と持てたことに心より感謝。