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誕生日に 

 私は、今日83歳になった。自分がそんな歳になるなんて、全く信じられない。みんなでお祝いしてくれるので、いくつでもお誕生日というのは嬉しいものだ。
 人生には本当に思いもかけないことがたくさん起こる。私の人生はどちらかといえば、平和で幸せで、多分一般的な人生ではないかと思う。それでも、その平凡に見える人生の中で、本当に毎日思いがけないことは起こるものだ。

 20代前半で結婚し、最初は借家で暮らし。25歳の時に夫と一緒に東急田園都市線の駅のそばに家を買った。まだ開発したばかりの地区で、周りには家が数軒しか建っていなかった。最初は小さな平屋の家を建て、夫婦で娘二人を育てた。その後、男子が3人も誕生し、手狭になったので、2階と玄関を増築した。30代半ばのことだ。そして、40代で庭側に、日当たりの良い廊下スペースを増築した。以前はベランダがあったが、その工事の時に、取り外し、1階部分を広くした。ここは庭がよく見えて日当たりがいいので、ここでお茶を飲んだり、編み物をしたり、読書をして過ごすことが多い。

 庭には、柿の木が2本あり、11月にはたくさんの柿がなる。以前は大きな八重桜の木があり、春は一面がピンクに染まるほどの花をつけた。玄関前には、椿の木があり、今でも大輪の花をつける。 

 先日、友人達と話していて、子育て世代は本当に忙しいから、一人になったり暇になったことはない。という話になった。私も子育てと仕事と、大勢の家族のための家事で全く暇な時間はなかった。
でも、それは私の性格に合っているようで、全くそれを苦だと思ったことはない。人の世話をするのが元来好きなのだと思う。

 看護師という仕事を選んだことにも関係あるかもしれない。私にとっては、誰かの世話をしたり、料理をしたりすることは、いつも楽しかった。
 5人も子供がいて大家族だというのに、外国からの留学生の受け入れまでしていたほどで、周りの人たちから、いつも驚かれていた。私にとっては、7人の食事も8人もさほど大きな違いはないので、どうしてそんなに驚かれるのか、当時はあまり良く分からなかった。庭には19年も生きた、犬もいた。

 元来私は、割とシャイな割には社交的な方で、学生時代の友人たちともよく連絡し合って、今でも仲良くしている。小学校からの幼馴染とはほぼ毎日ラインをする。中学高校の仲良しグループの5人とはここ数年ノートを送り合って、交換日記をしている。手紙より、みんなの近況がよくわかって楽しい。看護学校の時の友人たちとは寮生活を共にした仲間なので、特に親しい。今でもしょっちゅう連絡を取り合い、会うことも多い。

 きっと、私はとても寂しがり屋なのだ。だから大家族の中で育ち、結婚して大家族を持てたのは、とても幸せなことだ。でも、しかし。ここのところ、私はずっと一人らしだ。多くの高齢者も、そういう人は多いのではないかと思う。ご近所の奥様達も、みんな先に旦那様を天国に送り出し、子供達はとっくに独立し、気がついたら一人暮らし。という人がとても多い子供が5人もいるのだから、さぞかし賑やかだと思われるだろうが、みんなそれぞれに住んでいるところが遠かったり、仕事や家庭が忙しくて、思ったほど会う機会が持てない。そこへきて、このコロナだ。海外に住んでいる娘は3年間全く帰国できなかったし、地方に住む息子家族と会うのもとても難しくなった。いつも都心で仕事をしている子供達も、私にコロナをうつしてはいけないからと、誰も会いに来なくなった。孫は時々来てくれたり、しばらく2階に住んだりしたこともあるけれど。それでも私は、なんだかいつも寂しかった。

 自由に友人に会えないし、外食もデパートなどもダメなんて。ボランティア活動もできないし、趣味の絵画教室にも行かれず、私は一体毎日何をして過ごせばいいのかわからなくなってきた。



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