サービス雑感 その2
昨日に引き続き、今日は調理の方のサービスに対する理解について書いてみたいと思います。
私の数少ない経験から、それもすべての方をまるで十把一絡げに論ずるのは大変失礼だとは思いますが、あくまでも例外があることを承知の上での私見です。
先のnoteに、個人の飲食店がオープンする場合、そのオーナーは調理出身者であることが多いと書きました。
これは、実際に皆さんご存知だと思います。
サービス出身者が自分の店を持つことは極めてまれです。
サービスの方が新たに店を持とうとすれば、まず自分の他に料理人を雇わなければならないからで、その時点で経営収支の非常に厳しいことを思い知るからです。
対して、調理人の方は自分自身が料理できるものですから、それだけで飲食店が開業できると思ってしまうのでしょう。
実際、それだけでオープンしているお店が極めて多いのが実情のようです。
サービスの担当は、開業直前にアルバイトでも募集すればいいと思っていらっしゃる様子。
つまり、始めからサービスのことなど眼中にないのでしょう。
なぜこんなことがおきるのでしょうか。
私なりに解釈していることは、その調理の方のそれまでの経験場所にあるようです。
簡単にいうと、オープンな厨房を経験したか、クローズな厨房でしか経験がないかの違いのようなのです。
カウンターといっても良いかも知れません。
和食の割烹やお寿司屋のようなカウンターを介してお客と対峙する、そういう経歴の調理人の方は丁稚のころから接客の怖さを経験してらっしゃいます。
洋の飲食店も最近ではオープンキッチンが流行ってきて、調理の方がお客と向き合う形が増えてます。
鉄板焼きというスタイルは、以前からあります。
洋のコックさんでも、この鉄板焼きの経験を持つ方は、接客というものに対して真摯な考えを持ってらっしゃる場合が多いようです。
状況が厳しいのは、高級フレンチの出身者でしょうか。
高級フレンチにはオープンキッチンなどありません。
カウンターもありません。
そんな環境で、クローズなキッチンの経験しか持たずにずっと修行時代から一度も客前に出たこともない調理の方。
料理の技術だけは素晴らしく、腕を上げて一流と評価されるまでなってしまった調理人の方。
サービスに対する認識がゼロに等しい方がいらっしゃいます。
「俺の料理が分からないのか?」 というスタンスで、そこまでの自信をお持ちなのはいいのですが、分からないのは貴方の接客に対する考えですよと言いたくなります。
さて、そのような状態で自分のお店を持たれて、どのような結果が訪れるかは明白です。
今まで自分を支持してくれていたと思っていた顧客は、以前のお店のブランドや名声に惹かれていただけかも知れないのです。
個人として独立した今、料理と自分の名前だけではやっていけないことを悟られるようですね。
それから思い直して接客に取り組むシェフはいいのですが、いかんせん急には自身の性格も今までに染み付いた偉大なシェフのプライドも簡単には消えそうにありません。
高級フレンチの出身シェフにも、もちろん真摯な方もいらっしゃいます。
持って生まれた性分というものがあるように、その方の根っからの性格が非常に温厚で接客にも向いているという方もいます。
しかし、概して上記のような悲惨な自己満足型が多いことは、開店後わずか数年のうちに下火になってゆくお店が目立つことで察しがつくでしょう。
クローズな厨房でしか経験のない調理の方。
いちどカウンターに出て、直にお客に接することの怖さを経験して欲しいものです。
料理だけでは、飲食店は成り立ちません。
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