はじまりの物語㉘ 梅
承平1年4月25日
筆をおいて今宵の宴を思い出す
母かもしれない、と思い続けてきた方々を前にしても
ふしぎと心乱れることはなかった
今生での縁は薄くともここまで至ったきっかけを与えてくれた
ふくよかなる人生だ
今生での縁、浄土では丸くひとつとなる円
円と思い浮かべて
そうだ、君も大切だよ、と酒宴での酒を前に置いた
蛇は、うれしそうな一水をみながら
チロチロッと酒をなめた
それにしてもこの書にある『烏梅』(うばい)
青梅を素早く燻製にしてカラカラにした漢方薬だ
父の薬房にも置いてあった
感冒や腹下しに薬効があるが
高価で希少なものなので市井では使えない、というので
この国では作ることができないの、と聞いてみた
どうも中国の梅と違って酸が強く同じ作り方をしても
とても煎じて飲めるものではないのだ、
もう少し柔らかくふくよかであればと思うが
保存もまた問題なのだ、
と残念そうに肩をすくめた姿が思い浮かぶ
宴席でみた医師(くすし)であるというそのご仁
朗らかな笑い顔がどことなく父に似ていたからか
思いだす父も鮮やかであった
東国の冬は長く厳しい
食べ物を貯蔵しておくため塩漬けという手段をよく使う
ひょっとする と ひょっとするかも
一水は文にそう付け加えた
本当は菅公夫人の墓を京に遷してやれないか
とそう思ってやってきた
そのための金子(きんす)も十分に用意して
だが、それは菅公夫人と道真公
どちらにとっても意に染まぬこと
梅の実を買い取るといえばその代として
受け取ってもらえるだろう
それに華やかさの裏で貴賤と厄災甚だしい
京の都がいいとも限らない
京の民のことも気がかりだ
この地ですべきことをして京に戻ろう
今度は寺に間借りしている房にすっくと立った
11の面を持つ観音像の方に向かい直った
どうぞこの世でのお役目が果たせますように
ただそれだけを祈るのであった
下書きだけの特別コーナー♪♪♪
今日も実頼と道風トークより
実頼:一葉いや一水より頼み事されちゃった
塩かぁ、まかせろ!
でも最近塩ってやたらめったら高いよな
道風:海も陸も賊が何もかも奪ってしまうのさ
ただでさせ重い税に耐えかねて
職人がどんどん減っていくのにさ
実頼:どうしよう
道風:まずは税の取り方の見直しだ
あとは、問題は海賊だな
こちらは叔父に頼んでみるよ
実頼:一水待ってるよーーーーーー!