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【なんはなルーム】ベルの朗読|第4回スタエフ朗読ライブ話(音源控え)


スタエフライブまであと3日

保健ルームをノックして、灰原は返事を待たずに扉を開ける。
「ベルどうだ。」
「ああ、しゃべらなくていい。とりあえず喉ケアに良さそうなサイトはメールで送っておいたよ。」
「ほら、これ。差し入れだ。」

手にはSUNTORY GREEN DA・KA・RAを3本。
「とにかく、喉のためには咳を抑えた方がいい。それには喉を潤すことが大事だ。楽しみにしていたSeedさんのライブだもんな。なんとか朗読できるまで回復するように。」
そういって、手渡された1本の蓋をあけてさっそくベルはごくりと飲んだ。続けてもう一口、今度は上に向いて喉元をミネラルと水分で浸すようにゆっくり満ちる感覚を味わってからごくりと飲み込んだ。
くすぐったくなり、今にもこみ上げてくる咳の空気の固まりがゆっくりとほぐれて流れていった。

沁みる。

メールに添付されたURLを開くと動画紹介も載っている喉ケアの詳細が記された声優向けの学校のサイトが貼り付けられていた。

ほんとに沁みる。

ベルは灰原の声が好きであった。

低く深く響く。優しさと落ち着きが包み込むような声。昔、声帯を痛めたときも、ずっと変わらず響くその声をうらやましく思った。男性であればそんな声になりたかった。発声で何か意識していることはあるのかしら、SOSで思い浮かんだのは灰原の顔、いや声であった。

「俺は何も意識してないんだけどな….」

そういう灰原が、誰より自分を律して体調管理しているか知っていた。振り返って自身を反省することが色々と浮かんでくる。

そんなベルに、これも良さそうだから、と梅エキスキャンディを手渡してくれた。

本当にこのサイトを調べるにしても、飴を選ぶにしてもきっと色々調べてくれたんだろうな、と感謝する。

「声、出さなくていいから、この朗読話にした理由をまた知らせてくれ。」
「あと、無理すんなよ。練習。」
「ぶっつけ本番でもライブらしくていいんだから。」
そういって、灰原は部屋を出ていった。

ベルは、気持ちいいな、とまたGREEN DA・KA・RAを口に含んで上を向き喉を、心を潤した。
とにかくケアと心の準備。今できることはそれだけね。

【朗読話選定理由】
・話の筋立てがしっかりしているレポートである。
・落語っぽいタイトルのリズムがとても良い。
・生身の人間の滑稽さをさも実在しているかのように仕立てた噺を”生”声で”生”で届ける落語の演者が朗読ライブにぴったりである。
・その場だけにかける寄席とライブの共通点
・矛盾したものの面白さ

【特に心に留めておきたいフレーズ】

選ぶ演目はその演者が自分の話として演じられるのかということ。自分のモノにするというのがとても重要であるということ。

下記、朗読話より抜粋

これって、まさしく朗読についてもいえることなのよね。朗読する作品があっての朗読者。決して主役ではないけど、その作品の世界を私という容れものの中に入れて外に表したい。
できるだけ、反響させてみたい。
そこに対する欲であり挑戦だ。

ああ、それなのに、喉をやられてしまうなんて。
せめて、咳込まず澱まず読めるところを目指したい。

発声しての練習は最小限に抑える。
その分気持ちを込めて読めばいいわ。
そんな気持ちをしたためて、さっきのお礼も少し添えて、なんはなルームにメールする。

灰原は返信した。

ベル、君は間に合わせると思うよ。
でも今の状態を見せてもらった限りではSeedさんには伝えておくべきだ。

分かったわ。
でももう一日、様子を見て、ちゃんと声で伝えたいの。

分かったよ。
管理人 灰原でスタエフチャンネル開設しておいた。
そこならSeedさんも聴いてくれると思う。
準備ができたら使ってくれ。

ありがとう。そうさせてもらうわ。

スタエフライブまであと2日、
ベルはSeedさんが聞いてくれるであろうことを期待して、今現状の声をライブに載せた。ああ、心配かけるわね。そんなことを考えながら視聴者が誰もいないライブ配信を行った。

Seedさんは変わらず、毎日ライブ配信を続けていた。
ただ彼は彼で、不安となる出来事が起こっていた。
通信状態が不安定であると、ライブ途中に配信が途絶えたのだ。彼はベルの声と通信状態という2つの爆弾を抱えてライブに望むことになった。

ライブ当日、
声に出しての練習は2回だけ。最小限の努力で、でも今、この時だけの声で朗読を行った。

楽しかった。

Seedさんがライブ音源をアーカイブに残してくれた。
ドキドキして聞いてみた。
あはは。
声もそうだけど通信状態の影響か、音声がブツブツ途絶えていたり。ライブ中は皆さんちゃんと聞こえているってコメントあったから大丈夫だったかしら。でも声は割れていたわね。ライブ、あーっ、奥が深い。

灰原はベルのもとを訪ねていった。
「なんとか喉の状態、悪化させずに済んだみたいだね。ちょっとデスボイス思い出したよ。」
といい声で、そして少し渋みの出てきた笑みを浮かべてそう言った。

「通信状態が悪かったなら、なんはなルームのチャンネル使ってくれても良かったんだけどな。」

そういう灰原にベルは返す。
「これはSeedさんの企画よ。それに通信状態はあなたの方でも未知。ライブ発信については未経験でしょ。」

「それはそうだね。」
ベルは、灰原の喉元を見つめてお願いした。

「今せっかく、低声ボイスがでるのよ。」
「抑揚は上手くつけれないけどね。初ライブ作品の記念に、なんはなルームで単独朗読ライブさせてくれないかしら。」

「単独はお断りなんだけど、今回は、アーカイブ音源のこともあるから特別にOKするよ。」

なんはなルームに絡めてベルの朗読こちらにライブアーカイブ残しました。


朗読した私はいってぇ、誰なんだい。
落ちとして置いておきます。

朗読話はコニシ木の子さんのこちら

スタエフ朗読ライブ主催者 persiさんの開催後記
(なんはなルーム Seedさんでご登場頂いてます)
参加させていただきありがとうございました。

なんのはなしですか

なんはな創作記事、お読みいただいた皆様
朗読お聴き下さった皆様
ライブ朗読ご一緒いただいためぐみティコさん
遊び場と朗読の経験をさせていただいたコニシ木の子さん、persiさん

ありがとうございました。
感謝を込めて。

なんはなルーム ベル [降谷 玲花]

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