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メイキング|村焼き(仮題) #6 執筆:承【2】

2.2.2

 さて、新しい場所へと旅立ちます。ここからの流れとしては①出発、②街へ到着、③魔法使いとの交流、④新しい村へ移動の4つを想定しています。結構ありますね。

2.2.2.1

 ここでは今いる村からの出発するシーンを書きます。荷車への積み込みと家の解体、お墓参りを済ませたら、使い魔を利用して方向を確認して街へ行きます。

 翌朝、重たい頭をなんとか支えて起き上がる。昨日までの晴天が嘘のように曇っていた。窓を開けて魔力と空気の流れを読んでみるけど雨は降らなそうだった。でもせっかくの旅立ちの日がこんなにどんよりしていると気分も落ち込む。
「仕方ないね」
 考えても天気が変わるわけではないし、晴れてたらそれはそれで暑くて疲れそうだし。荷造り日和ということにしよう。
 この土地での最後の朝食を済ませて、積み込みがあるから汚れてもいい服装へと着替える。外で直立していた人形たちを呼び、各々の配置へとついてもらった。馬は荷車にそれぞれ一頭ずつ繋ぐ。御者には軽い荷物を、護衛には重たい素材を運んでもらう。その間に私は寝具や食器類を分解した。
「■■■■■■■■■■■■■■■」
 素材に変換したものは運んでもらい、クッションに再構築したものは手ずから座席に並べる。これで長旅でもお尻が痛くならない。トランクはキャビンの上に載せて紐で縛った。割れやすい器具や大事なサンプル、植物の種子などは室内へと持ち込む。後続させるワゴンの様子を見に行くと、とても綺麗に積まれていた。素材が種類ごとに隙間なく並べられている。自律人形はこういう時便利だな。私ではこうはならないもの。
「よし、これで最後かな」
 家の中をぐるっと回って忘れ物がないかを確認する。物で溢れていた部屋も、すっかり寂しさで満ちていた。結構長く暮らしていたもんな。割と気に入っていたのだけれど。
 最終チェックを終え、私は玄関の戸を閉めた。扉に魔法の文字を書いて両手で覆う。
「■■■■■■■■■■■■■■■」
 地面から魔力を吸い上げて、私を通して家へと流し込む。建物全体が青白く光った後、音もなく崩れていった。灰のように破片が四方へと舞っていく。私の家があった場所も、村と同様更地になった。
 御者と護衛には配置についてもらい、街道につながる村の端っこへと移動する。最後に住人のお墓に立ち寄った。
「皆さんとの生活は、とても楽しかったです。……こんなことになって、本当にごめんなさい。どうか、安らかに眠って」
 祈りを捧げて踵を返す。
 人形に命じて、十数年暮らした村を後にした。

 村から出られましたね。街道に出てから使い魔を呼び出しましょう。そのためには森を抜ける必要がありますが、しっかり書く必要はないのでサラッといきます。

 均されていない道を進む。今思い返してみるとあの村は結構孤立していたな。意識的に遮断していたというよりは、その必要がないから世界を外に広げなかったというか。自分たちで賄えない資材や村の運営に必要なものは近くの町で調達していたし、いろんな事情で村外に出て行く人たちもいたけど。あまり多くはなかった。
 窓から流れて行く木々を見送る。魔力に溢れ、動物も植物もたくさんいて、とてもいい環境だった。次の場所もそういうところがいいな。

 森を抜けて、使い魔を呼びます。今回は方角の確認とキャビン外の目の役割なので小鳥程度の小さな生き物でいいでしょう。触媒となるのは自分の髪、眼としての機能を高めるために涙を数滴混ぜます。

 しばらくして視界がひらけた。左右には街道、眼前にはどこまでも続く草原。所々に木や小屋があるけど人がいる気配もない。天気も少し回復して、雲の間から光が差していた。
「さて、どっちに行けばいいかな」
 私自身も村から出ていなかったし、何よりあてもなく歩いてたどり着いたのがここだったので街の方向なんて全然わかんない。地図も持っていないし適当に歩いて目指せる場所でもないから魔法で解決してしまおう。
 私は髪の先端を数センチ切り落とした。捻って丸めて環状にする。そこに数滴涙を垂らし、最後に親指の腹を噛んで血を滲ませたら準備完了。輪っかに吸わせて魔法を唱える。
「■■■■■■■■■■■■■■■」
 皮膚が粟立ち私の中から何かが抜けて行く感覚がある。掌の上で凝縮した髪が蠢いて、やがて金色の小鳥へと変化した。身体を震わせてゴミを落とし、夜みたいに暗い瞳が私を映す。その視界は私に繋がっているから鏡合わせになったみたいにずっと先まで同じ世界が続いていた。
「────っ、」
 遠くなって行く意識をなんとか揺り戻す。危なかった。あともう少しで向こう側に連れて行かれるところだった。
 共有する情報の程度を調節する。窓を開けて彼女を放った。
 不安定に揺れながら上下していたのは数秒だけ。この世界に順応した小鳥は空へ向かって勢いよく昇っていく。あまりの速さに目が回りそうだけど、いくつかフィルターを挟んで認識を誤魔化した。
 少しして景色が止まる。私は視界を切り替えて鳥の目から世界を見下ろした。
「東の方に町はあるけど……あれはいつも村長が行っていたところね。あまり規模は大きくないから必要なものは売ってなさそう。そしたら────あっ」
 西の方に、壁に囲まれた大きな街があった。ここから見ても存在感はあるけど、結構遠いかもしれない。何日かかるんだろう。
「でも、そこしかないもんなぁ」
 幸い時間はあるし。私は数度瞬きをして景色を戻す。使い魔にも降りてきてもらって、荷物の上に留まらせた。最小限の共有にとどめて見張りをしてもらう。人形はこういう細かなところができないし。
 御者に指示を出して西へと向かった。

これでこのセクションで書きたいことは終わりです。街のシーンへと進めます。

2.2.2.2

 ここでは街に到着して散策するシーンを書きます。魔導書に使う紙を買って、時間の経過による認識のギャップについて書きます。数日は居座ることになるので宿も確保しましょう。

 キャビンの中で魔法を編む。次に住む場所での魔除けに使う糸を撚り合わせる。今までだったら文字を掘るだけだったから刃を使っていたけど、今回は棒針で。実際はこんな道具を使わずとも言葉ひとつで魔力の篭った糸は合成できるのだけど、せっかく時間があるし。針を通じて魔力が通り、空中で交差する先端から銀色の糸が生成される。それは空を漂い、膝上のバスケットへと落ちていった。中に準備してある芯にくるくると巻き付いていく。

 [私]の言う通り魔除けに使用する糸は引越しの時みたいに分解・再構築すればあっという間にできますけど、手慰みに編み物の真似をしています。生成物はミシンの糸みたいに芯に糸が巻き付いているイメージです。
 道中はこれ以上やることがないので、時間経過を文章を挟んで街に入りましょう。

 太陽が昇るにつれてだんだんと雲が薄くなっていった。窓から差し込む光が暑くてカーテンを閉める。外の様子は小鳥を使えば確認できるから問題ない。その視界もたまに覗いてもずっと続く草むらが見えるだけ。壁もまだ地平線とほとんど同化してるし、しばらくはかかりそうだな。着く頃には十分な量の糸が生成できてそうだった。
 そんなことを考えながらぼんやりと手を動かす。実際に街に到着したのは、村を出て実に二週間経った頃だった。

 結構遠くにある、と言う設定にしたので2週間かけました。馬車の速度は10〜15 km/hrとして、1日6〜7時間移動すると60〜105 km/day、おおよそ80 km/dayと見積もって14日なので1,120 km。東京〜福岡くらいの距離ですね。パリ(フランス)〜ウィーン(オーストリア)も同じくらいです。これだけ離れていれば、文化や情報の伝達にある程度の差があっても変ではないですね。今のようなインターネットはない時代でしょうから、[私]がいろんなことを知らなくても仕方がないでしょう。

 さて、街に着いた後に時間の経過による認識のギャップを感じてもらうのですが、どういう内容にしたらいいですかね。いくら距離を稼いだとはいえ、十数年程度では目覚ましい変化はあまり無さそうです。それでいて画期的な、[私]が驚くようなものを考えます。
 人間の技術力については、現代ほど高度ではないにしろ発達していると思います。冒頭の村焼きでも『科学技術によるものではなく、魔法によるもの』と判断するシーンが入るので、少なくとも人を傷つけることができる技術はあります。戦争も経験はしているでしょう。ただ、大量生産が横行するようなタイミングではないと思うのでそこは注意します。でも[私]は機械の構築はすれどあまり科学技術への執着はなさそうなので、その方面から攻めるのはあくまで次善策となりそうです。
 そうするとやはり魔法の方面からとなりますが、人間たちの生活にどの程度魔法や魔法使いが溶け込んでいるかを考えなくてはいけません。2.2.1後半で『魔法使いの総数は多くない』ことを解消したいと書きましたが、ここを覆すのなら『魔法を使える存在を増やす』のがいいかもしれませんね。『先天的な(生まれつき魔力を生成する臓器を持つ)魔法使いと、後天的な(補助器具により魔力を補う)魔法使いの2種類がいて、魔法自体はより身近な存在になっている』という状況なら、とても驚くと思います。補助器具は『魔導具』と呼べばいいでしょうか。いくつか分類と例を考えます。

  • 装飾品としての魔導具

    • 指輪:主に指先を起点とする細かな魔法に関与するもの

    • 腕輪:主に上肢を起点とする多くの魔法に関与するもの

    • 首輪:主に全身に作用する魔法に関与するもの。稀に使役するために拘束するもの

    • 眼鏡:主に視覚に作用する魔法に関与するもの

  • 道具としての魔導具

    • 杖:魔力の流れを対象へと誘導するもの。魔力を増幅して魔法を実行するもの

    • 魔導書(一般):魔法を実行するために必要な過程が記載されたもの。レシピ。厳密には魔法使いが生涯をかけて作成する魔導書とは異なる

  • その他魔導具

    • 石:磨いて魔力を込めることで魔除けや人避けに使用できる

 道具としての魔導具はすでに[私]が使用しているものですね。後天的な魔法使いについては装飾品としての魔導具を利用することになりそうです。どれも小規模で自由度は高くありませんが、日常生活の補助をするために人間が活用しています。その他のものについては主に魔力や魔法が込められた使い捨てのもの、と考えれば良いでしょう。
 話をややこしくするためにもう少しだけ考えます。いわゆる先天的な魔法使いはその血と遺伝子によって選ばれた生き物であると考える人もいると思います。養殖された荒天的な魔法使いが増えることをあまり良いことは思っていない。敵対して殲滅するようなことはしないまでも、軋轢は存在するはずです。具体的に話に絡めるかは別として、そういった政治的な圧力があって全ての人がこの事態を好意的に受け取っているわけではないことは示せたら良いですね。
 それから、魔力を制限するための魔導具もあって良いと思います。程度はあれど魔法使いは魔力を生成し、魔法として使わなかった分は体外へ分泌/排泄されます。魔法として使ったとしても、副生成物が蓄積して環境の魔力濃度やその比率に影響を与えることがあります。それらが過剰だと魔力が暴発・暴走して辺りを焼いてしまいます。2回目の村焼きの際に使うギミックとして、この魔力を制限する魔導具を使用しましょう。生成量が多いことはこのセクションで別の魔法使いに指摘してもらい、【転】においてそれが壊れる(壊れそうな)表現によって悲劇をスタートさせます。

 これで事前準備は完了です。街に入るにあたって、まずは壁に到達してもらいます。そこから守衛さんに会って、許可を得るところまで。ここで魔導具の眼鏡に触れます。

「やっと着いた……」
 まさかこんなにも時間がかかるとは思わなかった。場所を決めた時に距離を測定しておけばよかったな。そうすれば必要な物資を東の町で蓄えてからこちらの街へと向かえたのに。途中で食料が尽きた時はどうなることかと思ったけど。見かけた牧場で薬草と交換して数日分の食事を分けてもらえたのでなんとか生き延びた。
「(次は絶対ちゃんと計画を立てる……!)」
 心の中で決意する。まずはそのための情報収集が必要だな。買い物しながら近隣の情報を聞いてみよう。役所に飛び込んでも部外者だから相手にしてもらえないだろうし。
「それにしても大きな壁……」
 近づいて見上げてみると空の半分以上が見えなかった。でもその表面は綺麗だから、現に何かしらの襲撃を受けているわけではなさそう。もしくはメンテナンスが行き届いているのか。どちらにしても威圧的で、入るのを少し躊躇ってしまう。
 とはいえここまで来て他に行くところもないし、なにより疲れたから早く休みたい。今日は宿をとってしっかり寝よう。

 『宿を取る』ことを忘れないようにその理由と一緒に提示しておきます。道中の話はまた別の機会で触れられたらいいですかね。ここはお話のメインではないのでさっくり行きます。
 この曲がる道を間違えて結構早めに壁へ向かってしまったので、入口を探すのにもう少し時間がかりそうです。

「(入り口はどこかな)」
 通ってきた道は街に触れずにそのまま西へと伸びていて、逸れて壁に向かう分かれ道があったからその通り来たけど、門らしきものはなく入れるところもなかった。一旦馬車を停めて降り、陰で正装へと着替えてから壁沿いに歩いてはいるけどなかなか見つからない。もしかして裏手に来てしまった?
 情報が少ないからもう少し進み、しばらくすると水路に行き当たった。道もそれを避けるようにして大きく曲がっている。なるほど、だいたい分かってきた。
 私は来た道を戻って馬車へ乗った。壁沿いに歩かせてぐるりと回り、水路を横目に進んでいくと大きな橋が出てくる。やはりそうだ。先ほど見つけた水路は防衛のための堀なのだろうな。そして私は裏手に繋がる道を行ってしまったと。こんな大きな街に来るのが久しぶりすぎて、その辺の基本的な知識が抜け落ちてしまっていた。
 橋の手前で降りて門を見る。とても立派な佇まいだった。守衛が二人、厳しい目をして辺りを見渡している。私の前にいた訪問者へいくつか問いかけて何かを確認し、台帳へと記入して街へ通していた。
 少しだけ警戒体制で魔力を纏いつつ橋を渡る。私に対して敵意を向けるものはいないと思うけど、自分の領域ではないから何があるか分からないし。

 城に入るための大きな門ですから、守衛さんはいます。そしてこのお話が始まって最初の会話ができそうです。それから魔法が身近になったとはいえ、先天的な魔法使いの総数は変わりありませんから本物に会ったら緊張しちゃうと思います。眼鏡による魔法使いの判定をおこないつつ街へと入る手続きを進めてもらいます。

 私はワンピースの埃を払って帽子を深く被る。人間が相手なら、できるだけ怖がらせないようにしないといけない。魔法使いだからと距離を置かれることも少なくなかったから、第一印象が大切。
「こんにちは」
 柔らかな笑顔を作って守衛へと挨拶する。彼らは毅然とした態度で私を一瞥し、そして驚いたように眉を上げた。少しだけ空気が張り詰めるけど、それは警戒というよりは畏怖に近い。何だろう、初めてのリアクションだな。
「この街に何の御用でしょうか」
「仕事に使う資材を買いに。それから、長旅だったので数日間こちらで休息しようかと」
「かしこまりました。失礼ですが、魔法使いでお間違いないですか?」
 その質問の意図を図りかねて返事に詰まってしまう。もし私が魔法使いだったらどうするのだろう。いや、そもそもどうやって私が魔法使いだと判断した? 確かに今の私は正装ではあるけど、これは規格化されたものではなくあくまで個人的なコーディネートだし。黒い服と大きな帽子、金色の長髪だからと魔法使いであると断定するにはあまりにも不確定すぎる。杖も魔術書も持っていないのに、なぜ?
「ええ、まあ……」
 困惑して返事をすると彼は怪訝な顔をした。どうやらおかしいのは私の方らしい。
「そうしましたら、こちらへサインを。手に持っていただくだけで結構です」
 何か思うところはあるようだけど仕事の手際は良かった。手渡された入城台帳は魔法用紙が使用されていた。私の魔力に反応して文字が浮かび上がってくる。いつもとは違い私の意思を介さずに魔法が行使されたから、これも一種の防衛なんだろうな。名を騙り危害を加える魔法使いを排除したいのだろう。便利だとは思いつつ、何者かに管理されている気がして窮屈だった。
 台帳を守衛に返す。彼はかけていた眼鏡を外して私の名前を確認した。目が悪いから眼鏡をかけていたのかと思ったけど。まだ若そうだから老眼というわけでもなさそうだし。内容に問題はなかったのか、頷いて一歩後ろへと下がった。
「ようこそ。良い滞在になることを願います」
「ありがとう」
 私は微笑んで橋の向こうへと合図する。御者が馬車を引き連れてこちらへと来た。護衛は後ろについてもらう。これらの資材を持って街に入ってもいいかを確認し、了承を得て馬車へと乗り込んだ。
「そういえば、私を見た時に驚いたようだったけど。そんなに魔法使いが珍しかったの?」
 窓を開け、どうしても気になってしまったので問いかける。彼もそんなことを聞かれるとは思わなかったのだろう。戸惑いながらも、質問に答えてくれた。
「実を言うと、貴女の魔力がかなり濃く見えたので驚いたんです。近頃はよく魔法使いがこの街を訪れるのですが、だいたい同じくらいの濃さでしたので」
「あらそう。あなたは魔法使いではないのに魔力が見えるのね」
「この眼鏡のおかげですよ。皆さんのように分析ができるわけではないですが、魔力の濃淡を見られるようになっているので。私達のような人間にはとてもありがたいものです」
 そう言ってかけていた眼鏡を外した。確かに、言われてみれば魔法の感触がある。近頃はこんなものもあるんだな。高価なものだろうに、この街は防衛のために力を入れているのだろうか。
「教えてくれてありがとう。それじゃあね」
 彼へお礼を言って門を潜った。

 この眼鏡に対しての開示は少し時間をかけすぎましたかね。とはいえ認識のズレがあるので話が通じず、スムーズに会話ができないので仕方ないのですが。ここはまた読み返しながら調整しましょう。
 それから、台帳に記名する際に魔法に関する誓約書へサインをしてもらおうと思ったのですがやめました。くどくなりそうなのと、魔法が発展して身近になってるのにそれを制限するような誓約書を作るのは本末転倒な気がして。『魔法使いであることを聞いたからには何か特別なことをしなくてはいけない』と思ったので、台帳へのサインもペンではなく魔力でやってもらいました。



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