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メイキング|村焼き(仮題) #21 執筆:結【3】

2.4.2

 この後の流れですが、炎については時間が経てば消えるのでわざわざ消火しに回る必要はないです。逃がす為に頑張る必要もなくなったため、ルカの遺体を村に持ち帰ります。村も全体に火が回ってしっかり焼けている最中で、村長が座ってた椅子も焼け焦げてます。同じように広場に座り込んで時間を経過させましょうか。
 ちなみに[私]の身体はもうその全てが魔力に置き換わってしまっています。本当の精霊みたいですね。

「(まだ全然消える気配がないわね)」
 この身体になってから炎の形がより分かるようになっていた。山のどの辺りまで火があるかを知覚できる。とはいえ使い魔による視覚の共有とはまた違うから、肌触りだけが分かるみたいな感じだけど。
「………………はぁ」
 ルカを殺してしまった。
 これまでの村が焼失した原因が私だったと分かった時よりも、ルカを自らの炎で焼いてしまったことの方が辛かった。人間がいつ死のうが私の知ったところではないし、これまで交流のあった人々との別れは寂しいとはいえ、仕方がないことだと割り切っていたけど。同族が死んだ、という感覚とも違う。この気持ちを適切な言葉に変換する術を私は持っていなかった。
「……帰ろう」
 ここにいても何にもならないし。ルカをこんな山道に置いておくわけにもいかない。せめて村へ連れて行ってあげないと。
 まだ火の残る彼の身体を抱き上げた。直接持つことはできないから、魔力を込めた炎で支えている。きっと家に来た時よりも重たかっただろうけど、それを感じ取ることはできなかった。
 村に着くと火の勢いは増していた。家屋のほとんどに燃え移り、大きな音を立てて崩れていく。湖から炎が溢れて地面を覆っていた。広場には焼けこげた椅子と黒い塊がある。彼は最後までそこから動かなかったのだろう。
 ルカを椅子の隣に寝かせ、私もその場に腰を下ろす。
「(ここもいい村だったんだけどな)」
 村人たちは皆親切で、何かと気にかけてくれていた。食事も美味しかったし、自然も豊かだったし、魔力に満ちていた。何よりルカが一緒に暮らしてくれたのがとても嬉しかった。魔法を教えるのは上手ではない私の言葉に耳を傾け、言わんとしていることを汲み取って実行してくれる、とてもいい子だった。
 これからどうしよう。
 この惨状を引き起こしたのが他人であれば、私はまた巻き込まれただけと新しい村を探しに旅立つだろうけど。私が原因で、なおかつ全てのことを知っているのだから、この出来事を無かったことにはできない。
「もう疲れたな……」
 私も死んでしまえたら楽になるだろうか。いろんなことを考えなくて済むし、魔力が溢れて暴発することもない。もし死後の世界があってこれまでの村人たちと会うことができたなら、全員に謝罪をして回れるかもしれない。何十年かかるか分からないけど。
 でもきっと、それは許されないんだろう。私の中だけで区切りをつけるだけで、命を落とした人たちがあったかもしれない未来へ進めるわけではないし。私はその罪を背負って、これからの時間を償いに充てるしかない。
 炎が上がる湖を眺める。かつての面影はなく、まるで悪夢のようにひどい光景だった。私の魔力が残っているうちはずっと燃焼反応が続くのだろう。
 全ての炎が消えたのは、実に十日後のことだった。

 村に帰って火が消えるまでは書けましたね。
 私がこれからどうするのか、という話にも少しだけ触れられました。結局、自死したり新しい村に行くのは良くないねってところに落ち着きました。余剰魔力や副生成物について考えないといけないとは思いますが、今回のお話で全てを説明し切る必要はないと思うので省略します。また次のお話を書くことがあったら、その辺りを調整すればいいですね。
 あとは物語を終わらせるだけ。一番初めの、机に突っ伏しているところに持っていけるときれいでしょうか。ループというわけではないですが、前の村焼きの後に何があってそこに至ったのかを書きたいですね。

 広場で座っていた数日の内に私の身体にも変化があった。魔力の塊で実体のない状態だったのが、元の肉体へと戻っている。銃創が残っているかと思ったけど、あの状態で受けた傷については加味されていないようだった。そうじゃなかったらお腹だけでなくて胸や額にも痕が残ってしまう。
 今回のことで魔力が底をついたのか倦怠感がひどかった。全身が重くて動くのも辛い。やらなくてはいけないことはいくつもあるけど、まずは休息を取りたかった。
 二人の遺体を置いたまま、ひとり湖畔の道を歩く。私の家は煤で汚れてはいたものの焼けてはいなかった。魔除けが機能していたからかな。休む場所が残っていて助かった。
「ふう────」
 横になるのもしんどくて書斎の椅子に座る。机の上を片付けるのはまたあとででいいだろう。住人の亡骸を探して村を整地して、森もきれいにしなくちゃいけないかな。何年かかるか分からないけど、それが償いになるかも分からないけど、私にできるとこはやらなくちゃいけない。
 座ったことで安心したのか、急に眠くなってきた。やることのリストを作っておきたかったけど、それはまた起きてからでいいだろう。
 背もたれに身体を預けて瞳を閉じる。
 この数日間の出来事が、全部夢だったらいいのに。
 目が覚めたらルカがご飯を作ってくれて、診察の合間にエレナがお話ししてくれて。ローザさんやヴィオラさんたちとお茶をして、スペスちゃんと魔法使いのお話をして。私は魔法の研究をする傍ら、村の一人として生きていく。
 もう訪れることのない時間を想像して、涙が一筋頬を伝った。

 これで終わりでどうでしょうか。まだまだお話を書く余地はありますけど、メインテーマである村焼きについては書き切りましたし、そこに至るための道、その後のことについても提示できました。お話として語るのはここまでにしておきましょう。
 初稿の総文字数は115,152文字です。当初の予定は30,000文字だったので、実に3.8倍ですね。どうしてこんなに増えてしまったのか分からないですけど、無事に書き切れてよかったです。このまま推敲に進みましょう。


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