第2章 執筆
2.1 起:1回目の村焼き
ここで想定されるシーンは①1回目の村焼き(主題提示)、②村の整備(他人との距離感)、③魔法使いについて(自己紹介)、④新しい村へ(物語の発展)のおおよそ4つ。魔法についてのおおまかな知識は軽く触れる程度に抑えて、[私]がどんな人であるのかの輪郭を示しつつ、お話の雰囲気を伝えられるようにする。①は1ページ程度に収めるので、各セクションは2,000文字前後。
2.1.1
従来の通り、まずお話を始める前にざっくりとした全体像/シーンの提示をします。今回でいえば1回目の村焼きですが、それを読んだ時点では[私]が引き起こしたものということが分からないようにしたいです。凄惨な状況をどこか夢のように輪郭をぼやかして書きます。でもこれは[私]がやっていることなので、読んでいる中で冒頭を振り返り「これってもしかして……?」と思ってもらえるような書き方にしたいです。
もう少しやりようはありそうですが、まだこのお話に慣れていないのでこのくらいにしておきます。推敲の際に手を入れることにしましょう。
2.1.2
ここでは視点を[私]に固定し、焼かれた村とその整備を通して[私]の人物像と他人との距離感を提示します。流れとしては①眠りからの覚醒と過去数日の曖昧な記憶について、②村の惨状とその原因追及について、③村人の墓を建てて土地を整備するところ、といった順番に書けばいいでしょうか。
2.1.2.1
伸びをした時の音については「重たい音」「軽い音」の2つを対比させたかったのですが、とても近い距離で「音」が重なるのがどうしてもすっきりしないので表現が停滞してる気がします。音の言い換えの幅を広くしたいですね。
この調子で状況確認と、今後するであろう魔法や魔法使いの説明に使えるように環境描写をしていきます。
外に出て、とか、窓を開けて、というような外界の状態を元に推測することができない(窓を開けたら焼け野原なのをすぐに描写しなくてはいけなくなる)のでちょっと苦労しました。まぁもともと他人にあまり興味がなさそうですし、過去の自分に対しても「同じ形をした他人」くらいにしか思ってないのかもしれません。
机周りの描写はもう少し手厚くしたいので、「〜〜もしくは相当切羽詰まっていたのか。」の後ろに少し文章を加えます。
これで「私は何をしてたんだろうね」に繋げればいいでしょう。これで自分の家のことと目覚めるところまでは書けたので、焼かれた村にたどり着くように村人たちへと思いを馳せます。
今回のお話を書くにあたって薬草や漢方のことを調べていたのですが、世の中にはまだ生薬からその人に合わせて調合して作る漢方があるんですね。刻まれた根や葉を専用のティーバッグに入れて、家でそのお茶薬を抽出できるようにしているのだとか。その煎じるところも薬局でやって、できた漢方茶を渡すところもあるんですって。すごいですね。一度やってみてもらいたいです。
話が逸れましたが、[私]は周辺で採れる薬草と手持ちの薬草を掛け合わせてその人に合った薬を作って渡しています。機械に数日分の薬草をセットしておいて、朝にその機械が稼働して一日分の漢方茶を作り、それを一日かけて飲むようにと訪問してきた老人に渡すのが日課です。ルーチンなのであまり詳しく説明しすぎてもうるさくなりそうなのでさらっと行きたいのですが、その過程で余剰の魔力についても触れてしまいましたね。「数日間開けていなくて空気がこもっている」ということを表現したかったのですが、ちょっと話を先取りしすぎでしょうか。
ひとまず話は続けます。このあとはその生成されているお茶の性質から数日経ってしまっているかもしれないこと、老人の様子が気になることを踏まえて外に意識を当ててもらいます。
この辺りの推理はちょっとくどいかもしれないですね。似たような文末になっていますし、あまりスマートな感じもしないです。ただ、[私]が他人をあまり大事にしていない様子(人の生き死にと必要最小限の関係性構築)は書いておきたいので、大幅に改善するというよりは微調整程度に収めておきたい気持ちもあります。
ここまでで約2,000文字。2.1.2全体でこの文字数を想定していたのですが結構オーバーしていますね。まだ家から出てないのでこの倍くらいになってしまいそうです。とはいえ調整する余裕は割とありそうなので、このまま書き進めてしまいましょう。
2.1.2.2
もう少し感情的にこの惨状を見てもらおうと思ったのですが、ここまで結構ドライですしこの後控えている村の整備のことを考えると、「こんなもんか」くらいの距離感で書いた方が良さそうなのでサクサクいきます。実際に村が焼かれた原因は[私]ですが、記載の通り他の魔法使いの仕業だと勝手に思っています。それが続いて何もしない人ではないと思うので、対策についても言及しました。次の村に行くときはもう少し強固なもの(結界など)にしたいので、ここでは魔除けに留めておきます。魔法使いだけをこの土地から遠ざけるための魔法ですね。
あとは各家を巡りながらその住人たちのことを振り返り、魔除けと感知システムの状態を確認していきます。
書いている途中ですが、一つ気になったので一旦切ります。魔法について考えているときの独白は、このブロックの最後に動かしてもいいかもしれませんね。「考える」という単語が重ならないように工夫します。
続きを書きましょう。
ひとまず村の状況を見て魔法のことも考えながら家に帰ってこれましたね。後やることといえば村の整備をして自然に返すことくらいです。魔法使いとしてしっかりと仕事をします。
2.1.2.3
いかにも魔女らしい服装との違いについて「いわゆる魔女の帽子」みたいな書き方をすると少しメタっぽいのでやめました。服装についてはもう少しディテールを細かくできそうなので、推敲の時に流れを見ながら加筆しましょう。
このあと実際にやるのは住人の弔いと街の整備です。自然な状態に還して新たな命が育めるようにリセットします。ただ、「村ができる前に戻す」というよりは「村があったことを踏まえて初期化する」といった方向で進めていきます。
人とそうでないものを分離する、とは言ったもののお手軽にマッピングするわけにもいかないので、実験室で行われているようなやり方を採用しました。骨に含まれているCa2+に結合しやすい魔法物とそれを標識できる蛍光性の魔法物を合成し、大気中の魔力の流れに任せることで空間全体に分布し、該当する物質があればそこに配位して光が止まることによって場所を確認します(実際にこのようなやり方があるかどうかは分かりませんが)。参考にした考え方は分析化学領域のキレート滴定(EDTAによる金属イオンの検出)、分子生物学領域の蛍光タンパク質(GFP標識による目的とするタンパク質の可視化)とゲル電気泳動(目的とするタンパク質の生成・分離)です。
同じ動作の繰り返しなので、似た単語ができるだけ近くに配置されないように工夫したいですね。それしか表現方法がないものは仕方ありませんが、できるだけ別の言い方を考えていきます。
さて、人の分離と骨の回収ができたので、あとは埋葬と土地の整備ですね。自然に返すほうが大規模で大雑把になるはずなので、先にそちらをやってしまいましょう。その後にお墓を作ってここを去ればいいですかね。
村の整備はかなり大規模な魔法ですね。これも参考にしているのは分子生物学領域のタンパク質精製です。一つの細胞から目的のタンパク質を取り出すときに、まず細胞を壊して中身を均一にしてから試薬を入れたり遠心分離をして不要な物質と目的物を分けるそうです。結界を一つの細胞として見做した後、内容物を全て混ぜ合わせて一番簡単な形(分子や魔力)にしてから再構築します。流石に動植物を再現することはできませんが、理論上一番安定するであろう分子・魔力構成にして待機中に固定します。あくまで比率の話なので、余計なもの(副生成物)が発生することはありません。
ここまでで約6,000文字とかなりオーバーしてしまっています。あくまで想定文字数なので超えても全然いいのですが、さすがにお話を進めていきたいので弔いはこの辺にしておきます。ことあとは魔法使いについての簡単な自己紹介をするのですが、帰宅〜休息〜引越準備の順番でいきましょうか。お墓づくり〜旅立ちはそのあとでやります。