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【プレシリーズA】資金調達の裏側と振り返り ~広報担当者の視点から~
当noteは株式会社HRbaseのアカウントで運用しておりますが、この記事は旧社名の株式会社Flucleの時代に書かれたものです。
記事内には「Flucle」という表記が随所に出てくるかと思いますが、そのときの臨場感をお感じください。
株式会社Flucle 広報担当の本田です。
2024年9月26日、弊社はプレシリーズAで約2.3億円の資金調達を行ったことをリリースいたしました。これはシード(1.2億円)に続く2回目の資金調達リリースでもあり、やはり前回とはさまざまな部分で変化があったため、記録の意味も含めて裏側を書き残したいと思います。
広報ノウハウ的なことはまったく書いてありません!
あくまで、小さな会社の資金調達の裏側はこうなっていたよ、というささやかな共有ですが、誰かのお役に立てれば幸いです。
スタートアップの資金調達のニュースはそう珍しいものではなく、弊社のように「社労士向けサービス」というニッチな分野を攻める小さな企業では、大きな話題性をつくりにくいというハンデもあります。しかし個人的には資金調達プレスは、サービス系プレスよりも気合いが入りますし、そう思っている広報さんは多いのではないかと推測できます。
資金調達は、単に「お金が手に入った!すごい!」というものではなく、市場が自社に具体的な評価を下し、未来を信じくれたという事実の現れです。具体的な評価は「過去の積み上げ」と「現在の伸びと行動」を元に行われ、事業計画に整合性と計画性があるかが問われます。しかしそれだけで未来に賭けていただくことはできません。
「信用は過去、信頼は未来」とはよくいったものですが、これまでの実績を信用いただいたうえで、私たちのビジョンや熱意を信頼していただく必要があります。
過去は買えません。特に社会の公器としての「株式会社」の過去は、未来に対する信頼をつくる地盤となります。広報の仕事はまさにここに直結しており、コツコツ積んだ発信がよい過去となり、未来の足を引っ張らないようにする視点が必要だと考えています。バズという「点」も喉から手が出るほどほしいですが、その前にコツコツと「面」をつくる必要があるとでもいいましょうか。
などと書くと順風満帆で計画的な資金調達だったかのように思われそうですが、決して、決してそんなことはありませんでした。
2023年、しんどい。
2023年をカッコよく振り返ると「開発に専念した年でした」となりますが、そんなにきれいなものではありませんでした。リリースした新機能はユーザーに好意的に受け止められるも売上に直結せず、成長グラフは伸び悩んでいました。市況も悪く、スタートアップのバリュエーションが下落し、優良企業であっても「資金調達できない」という状態が続いていました。
周囲を見回しても実際苦しそうで、M&Aの会社に行列ができているという話や、リストラ的な話も多かった。自社の売上も伸び悩み、市況環境も悪いというダブルパンチで、次の資金調達ができるか不安しかなかった。
しかし2023年は、私たちにとってエポックメイキング的な年でもありました・・・!
年始にChatGPTが話題をかっさらい、生成AIという技術のビジネス活用が一気に進みました。私たちは業界を先駆けて生成AIを活用した「労務相談AI」の開発に着手し、プレスリリース、代表note、PRtimesストーリーなどで開発の経緯を発信し続けました。
AIは未知の技術です。ユーザーへの提供も不完全な状態からのスタートにしかなりませんでしたが、ウェイティングリストには先進的なことに敏感な社労士先生が多く登録してくださり、β版リリースへ向けた開発の勢いは増していました。
2023年4月にAI開発に着手したときは業績回復の一案だったものの、秋口には「これしかない」という確信が持てた。というか、それに賭けるしかなくなっていた。
と書くと、これまた「チャレンジングなスタートアップ!」のように思われそうですが、全社会議で共有されるランウェイの数字に全メンバーで一喜一憂・・・ではなく一憂一憂・・・これ資金調達できなかったらどうするん?という不安にエイヤと蓋をして開発に集中していたというのが本当のところです。しかし「労務領域で一番、AI開発にリソースをつぎ込んでいる」という自負もあり、自分たちを信じるしかありませんでした。
2024年1月、代表の「資金調達宣言」
売上の乱高下はあるものの、労務相談AIに賭けるしかない。
2024年1月、代表は社内に「資金調達に時間を使う宣言」を行い、VCへのアプローチ、ピッチ大会への参加などを開始。しかしまだ労務相談AIは開発中で、VCからの反応は当たり前ですが「リリースしてから教えてね」に留まります。
とはいえ、VCへの説明は期待感を知るためのいい機会となった。資金調達はどのみち数か月かかる。コンタクトを取り、投資の依頼の前にまずは知ってもらう。そして実際に成果が出たときに一気に話を進めるための足がかりをつくっていた。
そんな中、2月には労務相談AIのβ版、4月には正式版をリリース。
ここでMRRは飛躍的に伸び、社会保険労務士という専門家にここまでAIが期待されていたのかと社内は驚きました。VCからの反応も変わり、代表自身が社会保険労務士で業界を熟知していること、開発を内製化できていることなどが評価され、検討の姿勢を見せていただくことが増えました。
春、夏、進む準備と、TV出演
そして春から夏にかけ、一気に調達が具体化し、結果的に8社もの会社が株主として事業参画してくださいました。
まずシードで投資いただいた株式会社ジェネシア・ベンチャーズが引き続きリードを取ってくださることになったのが大きかった。そして単なる投資ではなく未来に向けた提携先を探すという視点で、多くの会社を紹介していただけたことはめちゃくちゃポジティブだった。
この資金調達の準備期間に、NHK大阪の「かんさい熱視線」という報道番組へ出演する機会がありました。
天下取りを目指すナニワのスタートアップ経営者たちというテーマの中で、弊社の資金調達の過程に密着いただいたのです。
しかし撮影期間はまだ資金調達について公表できる情報はありません・・・。センシティブなテーマということでディレクターさんにも最大限の配慮をいただき、画面に登場する投資家の方々にもお願いばかりの準備になりましたが、資金調達に奔走する代表の姿を一部でも社会にお届けでき、本当によい機会となりました。
社内体制
弊社にはCFOはまだいません。投資が決まった株主との連絡は、代表と、経理&管理部門を統括しているバックオフィスマネージャーの岡本が担っていました。
調達の経験も前回のみだったが、社内で誰がやるとなったら私しかいない。前回より株主が一気に増え、初めてなこと、大変なことも多かった。しかし期待されていることも実感し、身が引き締まった。
7月8月と、岡本の社内カレンダーは資金調達関連業務で埋め尽くされていました。突発的な打ち合わせも多く、顧問弁護士や社外機関とのやり取りで走り回っている様子が見て取れました。
代表が調達関連の対応を最優先にしてくれたので助かった。株主の皆さんにもアドバイスをいただき、助けられながらの調達準備になった。社内では、細かいタスクを全部変わってもらったりもした。スムーズにできるようになるには回数を重ねるしかないと思うが、貴重な経験をした。
岡本の業務の9割は、ここに書けないものです。しかし華々しい調達リリースの裏には、弊社に限らず、表に出ることのないストーリーが詰まっているはずです。
社内体制について、代表はこう話しています。
ファイナンスは社長の仕事なので私自身がやったけれども、結局社内でしかトラクションはつくれない。逆に私がファイナンスに時間をかけている間、事業に使う時間は確実に減る。全チームでそこを支えてくれていたのはありがたいと思っているし、その体制がなかったら調達はできなかった。
サービスを広める、労務相談AIに賭けるという全メンバーの行動を、代表がうまいことまとめあげて「資金調達」という結果につなげてくれた。そして株主という心強い味方が増えた。今からはそれを資産化し、社会とつなげていかなくてはいけません。
今回のリリースは「前哨戦」
今回の資金調達リリースをキッカケに弊社を知っていただけた方もいらっしゃるかも知れません。本当にありがたいことです。
弊社は労務テック、しかも社会保険労務士向けサービスということで、マーケティングチームも「いかに業界に刺すか」というニッチ施策に苦心してきており、社会認知を広げるための活動が後手後手になっていました。
しかし今回の資金調達リリースを皮切りに、数か月に渡って弊社からさまざまなニュースをお届けできる予定です。
今回のリリース本文は、広報さんからすると「なんか歯切れ悪くない?」と思われている可能性がありますが、今から数か月間の会社の変化は、きちんとリリースとして公開していきますので、「あ、だから一部ボケた表現だったのか」とお察しいただければ幸いです。
もし、弊社に少しでもご興味を持ってくださいましたら、ぜひ次のリリースもお届けさせてください。
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お読みいただいた社外の皆さま、ありがとうございました。株式会社Flucle時代を経て、今どのような会社になっているかは、株式会社HRbaseのコーポレートサイトで確認ください!