「2位じゃだめなんでしょうか」発言を馬鹿にしている人に返ってくる恥ずかしいブーメラン(Whyを問うことの重要性)
名探偵コナンを見ていると、コナン君が「反証的質問」をして真実を暴くシーンが出てきます。容疑者に
「あなたは事件当時、**にいなかったんじゃないですか?」
と問うことで、相手に「いやいや***にいたんだ」と犯人の口からまんまと言わせ、それが決定的な証言になって逮捕に至るという感じです。
この反証的質問スキルは、アメリカのロースクールでは普通に習いますし、私も大学時代に論理学の授業で「反証的質問法」として習いました。学問としてマスコミを勉強したなら、当然知っているべき基礎知識でしょう。
さて、このテクニックはポジティブにも使うことができます。
例えば、若干43歳で大統領になったJ.F.ケネディ(候補)に対して、ニュースキャスターが
「あなたは経験が不足しているのではないか?」
とパブリックに問うことで、ケネディは、自分の能力をアピールする絶好の機会を得ることができます。自分でこういう話題を切り出すよりは、よっぽど効果的です。
そして、アメリカの視聴者が、このやり取りを見て「ケネディに経験不足なんていっている失礼なキャスターだ」とクレームを言うことはほとんどいないのです。だって、一定以上の知識レベルを持っているオーディエンスの間ではお約束だからです。
さて、本人が意識していたのかは知りませんが、立憲民主党の蓮舫さんが昔、事業仕分けのときに経産省の役人に問いかけた
「2位じゃだめなんですか?」
という質問は、結果的には反証的質問法になっています。
したがって、担当の官僚は
「はい。***という理由で1位じゃなきゃだめなんです」
ということをメディアを通じて全国に向かってアピールできる、絶好のシチュエーションだったとも言えます。
ところが、実際の担当者の回答は
「世界一になることで国民に夢を与える。」
というフワフワしたもので、折角のチャンスをふいにしてしまいました。
本来は「待ってました!」とばかり、
「世界一になることで、多くの産業で特許を率先して取得できる可能性が高まり、日本が世界をリードできる」(つまり、税金の投入が投資対効果に見合う)
といったことを堂々とアピールすればよかったのです。
こういう残念な回答になったのは、事前シミュレーションが足りていなかったのありますが、スパコン開発という手段がいつのまにか目的化していて、
「なぜ1位になるべきなのか」
というWHYの部分がすっかり忘れ去られていたのが原因ではないかと思えます。
この一件のあと、一部メディアが
「蓮舫はとんでもないことを言っている」
などと、批判したり、小馬鹿にしたりする記事を書くわけですが、一般人はともかく、言葉のプロが他者の批判を通じて間接的に無知をさらしてしまっており、恥ずかしい限りでした。
その後、結構当時のことが検証がされているのですが、2024年の都知事のあとでも、未だにこういう記事が出ます。(記事を書く前に、どういう議論がされてきたのか全然調べてないのかな?)
「2位じゃダメなんですか?」の蓮舫氏まさかの3位…一体なぜ?「無党派層」取り込めず国政復帰にも黄色信号?【東京都知事選挙】(TBSテレビ)
フェイクニュースが蔓延するネットニュースにおいて、一応マスコミは、情報のプロとして大勢の方が裏取りなどのチェックをしている重要な機関なので、なぜこういうニュースが外に出てしまうのかを、ぜひ検証してもらいたいなと思います。