見出し画像

組織の中で言いたいことを言う力〜経営者視点で考える力をつけるキャリアの「3つの資本」

20〜30代の頃に身につけた重要な考え方に「経営者視点」があります。

例えば、社長が経営会議で「***をやるぞ」というアイデアを出したときに、自分の意見を言ったり、代案を提案したりするのは、一般にはハードルが高いものです。

「余計なことを言って社長や上司に嫌われたら・・・」「馬鹿と思われたら嫌だ」「会社をクビになって路頭に迷うのが怖い」などの思いが頭をよぎるからです。

私はといえば、20代の後半ぐらいから”エラい人”が多く参加している経営会議の場などで、未熟ながらも言いたいことを言おう、と思って実行してきた自覚があります。(そのおかげで一生懸命YESマンをやっている人からは煙たがられていましたが・・!)

ただ、それができたのには勇気があったとか、そういう曖昧なものではなく、具体的な理由がありました。

そこで今年50歳になったのを期に、いろいろと振り返ってみて、「経営者目線で言いたいことを言っている人」の共通点を3つにまとめてみました。


1)自分で食っていける自信がある

「社長や上司に嫌われたらどうしよう」「リストラのターゲットになって路頭に迷うのが怖い」と思っていたら、組織の中ではできるだけ余計なことを言わずに、言われたことをソツなくこなすのが最も低リスクです。

2024年9月に繰り返し報道されている兵庫県知事&子分のパワハラ問題ではないですが、組織の権力に楯突いたがゆえに、恨みを買い、追い込まれるようなことは、残念ながらどこの組織でも多かれ少なかれ存在します。だからサバイバルのために無難な道を選ぶのは処世術とも言えます。

ただ、もしここで「いまの会社を辞めても自分で十分食っていける」「他社からも引く手あまたのスキルがあり転職も容易」という出口戦略(交渉術でいう代替案=BATNA)があれば、状況は全く別のものになります。

作家の山口周さんは、勝海舟が無血開城の大胆なチャレンジが出来たのは「撤退」というカードを持っていたからだと分析していますが、これも本質的には同じ話です。

どこでも食っていける「稼ぐ力」をトレーニングしておくことは、そのカードを切らないにしても、組織の中で言いたいことを言うための必須条件です。武道で言えば、ちゃんと受け身ができるスキルがあるからこそ、思い切って攻撃が出るのと同じです。

2)自分で食っていける収入がある

1の「自分で食っていける自信がある」とも関連しますが、実際に副業などで収入があれば、余計なプレッシャーがないので、より自由に発言しやすくなります。

また副収入があることは「クビになっても生きていける」以上に大きなメリットがあります。それは経営者視点で考える力が自然につくことです。

NPO経営でも、不動産投資でも、何でも良いのですが、自分でPLやBSを見ながら一つのビジネスを回すのは、事業規模には雲泥の差があったとしても、経営者をやっているのと基本的には同じです。

私の場合は親が中小企業の社長で、その飲食事業をサラリーマンをしながら手伝っていたこともあり、そちらに全力投球すれば、なんだったらサラリーマンの収入より多くなるなという感覚はありました。それでもサラリーマンをやっていたのは、純粋に仕事が面白かったから(内発的動機があったから)です。また大学の先生とMBAの授業を設計するときも、お店を運営する際の実務的な視点は大きく役立ちました。

さらに、自分で事業を回して経営者感覚を磨いておけば、雇用主である本業の経営者(経営陣)と、同じ経営者目線で話がしやすくなりますし、波長が合いやすくなる、というメリットもあります。

ビジネスを当事者意識を持って考えるクセがつくので、優れた経営者の判断から、従業員視点ではなかなか学べばない、いろいろな観点を学ぶこともできるのです。

ボスとして、いろいろなことを教えてくれた元祖経営コンサルタントの大前研一さんは、いつも「経営者のように考えろ」と社員にも学生にも言っていました。サラリーマン事業部長をしている身としては、かなり精神的に厳しいシーンもありましたが、逆に経営者の自分としては「マッキンゼーの伝説的コンサルタントにタダでコーチングしてもらっている思ったら得だな」と思っていました。

アメーバ経営を提唱した京セラの稲盛さんでも、ユニクロの柳井さんでも、ソフトバンクの孫さんでも、大体同じことを言っていますが、優れた経営者は、社員にも経営者視点で考えて欲しいのです。

ところが実際にはなかなかうまくいかない。トップの経営者はそれを求めていないにも関わらず、「余計なことをせず、言われたことを怒られないようにする」という自然に身についたサラリーマン思考習慣から脱却するのは、意外に難しいのです。

余談ですが、法政大学のタナケン(田中 研之輔)先生の提唱している、自分で自分のキャリアを作っていく「プロティアンキャリア」理論に、3つの資本という考え方があります。

我々の誰もが、時間という一方的に減るだけの「資本」を、これら3つに分散投資して、リターンを得ていく人生ゲームをプレイしているのです。

(1)ビジネス資本……スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴などの資本

(2)社会関係資本……職場、友人、地域などでの持続的なネットワークによる資本

(3)経済資本……金銭、資産、財産、株式、不動産などの経済的な資本

https://protean-career.or.jp/about

ところが実施には、これまでは多くの会社で「経済資本」を持つこと=本業以外に副業は禁止されていました。ところがそれも今は昔。これからは、会社員の給与以外に稼ぐ「経済資本」を持つぐらいの力を持った人ほど、本業のサラリーマンでも活躍できる時代が到来しています。

逆に言えば、給与とパワハラというアメとムチでマネジメントするような、古いマネージャーは、どんどん淘汰されるということを意味しているのです。そもそも「不条理な力で抑え込もう」とした瞬間に、稼ぐ力のある優秀
な社員ほどさきに脱出するのが世の常です。

アメとムチでマネジメントしようとする古いマネージャー(created by Image FX)

パートナーとしての対等な立場の社員とどう協力関係を築いて、ゴールを達成していくのか。それがこれからのマネージャーの必須能力ですが、少なくとも個人としては

「自分で食っていける自信がある」
「自分で食っていける収入がある」

という条件を満たしていないと、そのステージにはいけないのです。

少なくとも「これだけ会社のためにいろいろなもの犠牲をしたんだから、会社はそれに報いてくださいね」なんていう淡い期待は、だんだん通用しなくなってきていることを自覚したほうが個人も会社もハッピーです。

3)コンフリクト対応スキルがある

前段の2つとは少し毛色が違いますが、対立(コンフリクト)をうまくマネジメントするスキルも言いたいことを言うために必要です。

なにかの明確なポジションやスタンスを取って意見をいうと、違う意見を持つ人をぶつかることがあります。そんなとき、上手い人は、

「A(自分) or B(相手)」

という対立構造でバチバチの勝負をしようとしません。かといって相手に媚びる訳でもなく、相手の意図することを深いレベルで理解したり、自分の前提を疑ったりしながら、うまく落としどころを見つけます。

安易な妥協点を探るのではなく、もっと上位のレベルで合意できるディスカションの技術を習得しているということです。

大体、言いたいことを言っているように見えるのに、うまくビジネスを回しているタイプの人は、このスキルを身につけています。

・・といいつつ、若かりし頃の私は、嫌いな上司にコンフリクトマネジメンスキルを使っていた訳ではありません。ただ、ビジネスが上手い人というのは、おしなべてこの対立解消がうまいと思うのです。

まとめ(じゃあどうする?)

ということで、今回は、組織の中で言いたいことを言いつつ、うまくやっている人の特徴を3つの観点から考えてみました。ではどうすればよいか?

まずは、「自分は何ができる人か?(何で相手先の会社を儲けさせることができるのか)」を明確にすること。これが自分をマーケティングするときに役立ちます。

次に、会社以外の事業に関わること。メルカリで個人売買をするレベルから、友人知人の事業を手伝うのでもよいし、興味のある業態の会社を、スキマバイトのタイミーなどで内側から見てみることも面白いでしょう。

最後のコンフリクトマネジメントスキルは、こちらの記事が参考になります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?