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哲学対話「沈黙」の開催レポート

毎月第4土曜日にオンライン哲学対話を実施しています。12月24日(土)に開催した際の様子をレポートします。

哲学対話の概要

哲学対話とは「普段はあらためて考えない疑問」、「すぐには答えが見つからなそうな疑問」について、みんなで語りあって思考を深めていく場です。過去のテーマはこれまで「対話」、「時間」、「夢」、「言葉」、「弱さ」、「笑い」、「つながり」、「学ぶ」、「遊び」、「信じる」、「読む」、「書く」、「聴く」、「楽しさ」、「無駄」、「不安」、「記憶」、「努力」、「考える」、「協調」、「変化」、「労働」、「プレゼント」、「味わう」、「ハマる」、「共感」、「旅」、「役に立つ」、「自尊感情」、「ほめる」、「本音と建前」、「違和感」、「配慮と遠慮」、「成長」、「鈍感」、「ユーモア」など。
37回目となる今回のテーマは「沈黙」で、参加者は7名でした。

※以下、当日出た意見を、個人が特定されない範囲で紹介します。個人の具体的な体験などは省略した他、進行役の解釈・編集が入っていますのでご了承ください。またメモを見返して意味がよくわからない部分は省略しています。

チェックイン

音声確認の意味も含め、①ニックネーム、②今の気分、を一人ずつ話していただきました。テーマに関することを軽く話していただくことも多いのですが、今回も人数がいつもより多かったので簡単なチェックインで始めました。

前半(フリートーク)

前半は、「沈黙」というテーマに関して思うことを出し合いました。以前は最初に問いを立てる時間をとっていましたが、最近はテーマについて思うことを自由に話してから問いを立て、後半にその問いについて話すというやり方で進めています。今回は、下記のような観点が出されました。

・遠藤周作の「沈黙」という作品で、「神」が沈黙していることに悩む人物が出てくるが、「神」がフィクションなら沈黙しているのが当たり前。いない人の声が聞こえるはずがない。なぜ悩むのか?

・沈黙の場が耐えられなくて話し出してしまうことがあったが、沈黙OKの場だと安心する。ただし、逆にそこに逃げ込んでしまう自分もいる。

・沈黙というのは静かで安心できることだ思った。ただ2人で話していると沈黙されていると不安になることもある。ただ黙っているだけなのに、安心
や不安が起こるのはなぜなのか。

・沈思黙考という言葉もあるが、沈黙は静かに深く考えるイメージ。

・自分の沈黙と、相手の沈黙以外に、もうちょっと大きい沈黙があるような気がする。言葉にできないとき、相手に伝えるのが難しいとき、語れないときは黙るしかない。

・サイレントマジョリティと言われるような多数派の沈黙、意見を持っていない(ように見える)沈黙もある。何を考えているのかわからない。

・沈黙することで意思表示をしていることもある。例えば、場の流れを変えたくないときに沈黙する。ただ受け取られ方は違う。沈黙を無言の肯定と取る人もいる。

・沈黙は苦痛なのか?心地いいのか?人や状況による?

問い決め

前半のフリートークのやり取りを踏まえて、後半深めていく問いを出し合いました。

1.沈黙の魅力は何か。
2.心地よい沈黙と苦痛な沈黙の違いとは?
3.沈黙は不可抗力な行為なのか、自分の意志で選んで行う行為なのか?
4.不可抗力な沈黙とは、どんな場合に起こるのか?
5.沈黙の苦痛と心地良さとは?その違い。
6.沈黙はコミニュケーションの「外」になる重要なものではないか?
7.サイレントマジョリティーが社会を動かしていくことはいいことか?
8.沈黙した時に、その奥で何を感じているのか?

出された問いについてなぜそれを問いたいのかを伺ったあと、一緒にできる問いがないか対話をしながら、最終的に5つの問いにまとまり、投票をしました。

僅差の投票で選ばれたのは

沈黙はコミニュケーションの「外」にある重要なものではないか? 
(沈黙した時に、その奥で何を感じているのか?)
 

という問い。ここでいったん休憩をはさみました。

後半(対話)

後半は選ばれた問いを入り口に対話をスタートしました。

・人のコミュニケーションは大事なことだけれど、そのためにはそのコミュニケーションの外にあるものが大事なのではないか。場の外から来たもの。沈黙はもっと広いところから出てきているのでは。

⇒広いところというのはどういうこと?逆に狭いイメージがあった。コミュニケーションに参加していない自分のなかでいったい何が起こっているのか?ということなのかと思った。

・他の人の反応を受け取るとき、言葉によるもの以外で言っていることもある。話す速度や語調、沈黙の長さ。そういうもので意思を受け取っている。水墨画の余白は、何も描いていないのではなくあえて描かないところに意思を込めている。同様に沈黙かれも我々は意味を受け取っている。

・沈黙をしているとき、自分は誰かが話しているのをききながら自分の意見に考えをめぐらしている。相手の話と自分の考えがまざりあってせめぎあっているような感じ。

・沈黙しているときはマグマが煮え立っていて、それが出てくるのを待っている感じ。思いとして出てこなくても、たしかにある。

・コミュニケーションの外というのは、自分の内側にこもりながらも、場を超えたものにつながっていく感じ。一体感であったり、呼吸やものや人にシームレスでつながっていくような、静けさの感覚。

・不快な沈黙は、言うべきことや思っていることを言わない(言えない)とき。心地よい沈黙はシームレスな感じ。沈黙と無視の違いはなんだろう?というのが気になってきた。意思疎通するつもりがあるかないかということなのか。

・サイレントマジョリティのような、保留という沈黙がある。それは逃げる沈黙、無関心の沈黙。

・沈黙には何種類もある。たとえば戦争体験者の方々にお話を伺うと、被害と加害の面があって、2つを含んで語るのが難しく語れない方が多い。そういうときはディスコミュニケーションが重要になる。いったん遮断されること。我々は沈黙には何種類もあるということを知っておかなくてはならないと思う。

・40人のクラスでいじめがあって、34人がそれを知っていてだまっていたという場合、それは暗黙にいじめに関わっているということだと思う。

・沈黙を選択しているともとらえられる。言葉を発することができるのにそれをしなかったのはなぜか。それを見ていくことが大事なのでは。言えなかったこと、言わなかったものは何か。自分にしかわからない沈黙のてざわりを大事にしていくことが重要。

・場の沈黙が心地いいかそうでないかは、関係性や目的による。家族などは時間を一緒にするのが目的なので沈黙があっても気にならないが、よく知らない人との沈黙は苦痛。沈黙は思いや可能性を含んでいる。可能性を残しておく感じ。

・ロックコンサートでは一番盛り上がるところがピークだけれど、ジャズコンサートでは会場中がシーンとなっている沈黙の時間が一番のピーク。会場のすべての意識がそこに集中している。

2時間の対話を終えて

クリスマスイブということで「沈黙」というテーマを設定しましたが、いろいろな見方やとらえ方を伺っていくと、沈黙にはいくつもの種類があることがわかりました。自分の沈黙、相手の沈黙、もっと大きな沈黙。自分の沈黙でも、深く内省をして考えていたり、静けさを味わっていたり、言いたいけど言えなくて押さえていたり。相手の沈黙もきっと何種類も理由がある。さらに大きな沈黙のなかにも、同調圧力や様子見や当事者意識の欠落など、沈黙とくくれそうな状態であっても内情はまったく違うということがありえるのだなあと思いました。とはいえ、2時間で話せるのは限界があり、もっともっと探求したいと思うテーマでした。

今後の開催予定

最新の開催情報は下記ページに掲載しています。

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大前みどり
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