自宅の防音・録音環境と、宅録防音ブースISOVOXⅡを語る
みなさまごきげんよう、声優・ナレーターの河合紗希子です。
今日は我が家の防音・録音環境について綴ってみます。
コロナ時代の防音環境、どうしてますか
私のような声優・ナレーター、それから音楽をされる方など…音を使った表現をする人たちが最初に悩むのは、自宅での練習環境の確保や、録音をするための無音状況の確保なのではないかと個人的には思っています。
声優やナレーター・俳優にとって、声やアウトプットの感覚を鍛えるというのは、仕事に必要な道具を揃えて磨き、いつでも使える状態にしておくということ。優れた道具を手に入れ、高めた状態にしておくには、そのための練習を、毎日・本域でする以外にありません。
これまで手軽に利用できる防音施設といえば、街のカラオケボックスや音楽スタジオが主でした。ところが、新型コロナウイルスの影響でちょっと事情が変わってきたようです。
カラオケやスタジオが閉鎖されて普段の練習や録音場所に困っているとか、同業者意外でも、テレワークに伴うWeb会議などが増えて新たに自宅で防音環境を整える必要ができたなど、仲間やつきあいのあるビジネスパーソンの方々から質問や相談を受けることが多くなりました。
ISOVOXⅡ(アイソヴォックス・ツー)
amebloやStan.fmで公開しているお喋りでも触れているのですが、私は昨年の春頃から、自宅ではISOVOXII(アイソヴォックス・ツー)という「頭だけをおおう防音ブース」を使っています。
↓こちら!
これは、イベント用のPAスタンド(スピーカー三脚)に頭の部分をジョイントさせて使うもの。だいたいタタミ一畳あれば十分という製品で大変重宝しています。
ひとから相談を受けての私の最推しは、もちろんこのISOVOXⅡ!!!
…なのですが、こちらスウェーデン発の海外製品ということで日本語のレビューがまだ少なかったり、本体のお値段が税込み13万円↑するという、そこそこのハードルをもったしろもの。簡単な推薦テキストと商品URLを送るだけでは、なかなか良さをお伝えすることができないでいました。
そんなわけで!
今回は、私が防音・無音環境を探してISOVOXⅡにたどり着いたいきさつとその愛、そして実際1年少し使ってみた使用感などをじっくりまとめていきたいと思います。
↓見よ、このスタイリッシュなメーカー紹介動画を。
わかかりし日の練習場所ジプシー
若い頃は、口にタオルをあてたりクローゼットに閉じこもったりしながら、五十音の発声練習や滑舌練習やリハーサルをしたものです。あとは川原、公園、ビルの屋上、カラオケボックス、音楽スタジオ…、大声を出せる環境を求めて様々な場所をリサーチしたし、あらゆる場所に足を運びました。
学生時代は、大学と劇団の養成所をダブルスクールしていたうえに激しく芝居貧乏をこじらせており、日々カップ麺を食べるのがやっとくらいしかお金がなかったので、大きめの公園やビルの屋上が主な稽古場所。少し成長してからはカラオケボックスや音楽スタジオ。
ちなみに20代前半の頃にはカラオケには行きつけがあって、昼間の渋谷・宇田川交番前のカラオケ歌広場でした。
歌広は昼間だと飲み放題つきで30分130円くらいなのでコスパ的には最強なんですね。アルバイトの昼休みに、ダッシュで歌広の横にあるサンマルクカフェに入ってパンを1つ2つババっと口につっこみ、隣の歌広に移動して、飲み放題でケミカルなコーンポタージュとココアを飲みながら発声練習。1時間以内にバイト先に涼しい顔をして戻る。これが平日昼間のルーティンでした。
そこから月日は経ち、、、
演技をもう一度ゼロから見つめ直そうとアクティングコーチの元に飛び込んで演技スタジオで過ごした2年間は、同じスタジオの俳優仲間たちとあらゆる場所で毎日基礎訓練やシーンリハーサルなどの練習をしました。
代々木公園、地域の施設、新宿や渋谷のカラオケ、音楽スタジオ。とくに最初のシーンパートナーであり最高の相棒だったKANAとは、渋谷エリアのカラオケや音楽スタジオの最安値をトコトンまで調べ尽くし、昼はあそこで夜はここ…といった具合に、時間帯で場所を決めていました。また、仲間のバイト先の飲食店を、オーナーのご好意で昼間のクローズ時に使わせてもらっていたこともあります。あれは本当に本当に有難かった。
志を共にした仲間たちと過ごしたこの期間はとても濃密で、「毎日の練習」というものに対して自分の意識が大きく変化した時期でもありました。そのなかでいろいろ考えた結果、やっぱり自宅に環境を整えたいと強く思うようになり、結果的にISOVOXIIを導入した、という感じです。
おそらくいきつく3つの商品
さて。
そんなわけで、自宅に無音環境・防音環境を整えようとリサーチを始めると、最終的にはだいたい以下の三つの製品に辿りつくと思うんですね。
・だんぼっち
・ヤマハアビテックス
・ISOVOXII
ちなみに防音室つき賃貸という選択肢もありますが、 私はネットたたいて「たけぇー!!! 」でそっ閉じの負け組です。
■だんぼっち
宅録防音ブースとして浸透している非常にメジャーな商品。
私の周りの声優仲間でも、だんぼっちユーザーさんは結構いらっしゃる。
■YAMAHAアビテックス
音楽をやっている方が多く使っている印象。
ヤマハの防音パネルでフルパワーの演奏にも対応、その分お値段もしっかりめ。
■ISOVOXⅡ
スウェーデン発、頭を覆う新しいかたちの防音ブース。
この時のリサーチで初めて知ってこのスタイルに衝撃を受けた。
当時私の周りでは使用している方はいらっしゃらず、調べてみると海外製ということもありレビューは海外のものが多めだった。
■番外編/防音マンション・サウンドプルーフ
カワイが毎度チェックしては妄想だけしてそっ閉じする防音マンションシリーズ。
コンサートホールと同じ多重防音構を採用、さらにSOHO使用も可能。
いいなァいつか住みたい…
ISOVOXⅡを選んだわけ
私が上記3つのなかでISOVOXⅡをチョイスしたのは、一人暮らしの賃貸住宅に設置するという「環境の問題」が大きくあったからです。
だんぼっちとアビテックスは、部屋の中に部屋を作るタイプなので、そこそこのスペースが必要。そして一度設置してしまうと解体したり移動させることが結構難しい。さらに当時は自分にとってちょっぴり背伸びをした家賃の部屋に引越した時期で、この先どのくらい住むか・どのくらい住み続けられるかも未知だったため、据え置き系の大モノをドカンと導入するほどの覚悟が持てなかったわけです。
一方ISOVOXⅡは、スピーカースタンドに頭部分をジョイントするスタイルなのでタタミ一畳くらいのスペースがあれば良さそうだし、設置したあとも気軽に移動や解体もできそう。
チキンオブチキンな私にはこのあたりが決め手でした。
告白と買い物にはいきおいが必要
では、なぜチキンオブチキンな私が「背伸びした家賃の家に引っ越した」時期のふところ状態で、このお値段の製品をドーンと購入したのか…。
↓答えはこちら。
ええ…
衝動買いです。
私、大きめの買い物をする時によくあるんですね…。いっぱいいっぱいだったりイライラしたりしている流れに乗って「わたしの作業がうまくいかないのは○○がないからだ!!!(ポチィ!!!)」のパターン。
この時も通っていた演技スタジオで取り組んでいたシーンが全くうまくいかず
わたしの!!!
練習が!!!
うまくいかないのは!!!
ISOVOXがないからだ!!!!!!
と、夜中にPC開いてポチィ!の流れでした。
↓まじでこれ。
正直ぽちった時はいつにもましてかなりの「やっちまった感」に苛まれました。
…が!商品が届いてからはそんな気持ちはどこへやら。今は金額で尻込みする方にも購入を激推しするくらいのISOVOXⅡ信者です。
商品はぽちりした翌日に到着。
玄関を埋める巨大な段ボールを前にし、胸に高揚感と引き返せないやばみ感が入り混じる瞬間。脳内ドーパミンがドバッと噴出。こ…これだから衝動買いってやつぁ危険だぜ…(鼻血笑顔)。
組立&設置
購入直後の私のメモと感想は以下のとおり。
・ISOVOXⅡとスピーカー用PAスタンド35ミリ径を楽天で同時購入。
・一人でも難なく組立て&設置可能。
・個人的な感想は設置スペースは「めちゃ小さい」。
・1畳あれば余裕。
・モノは頭部のBOX部分のみなので一人暮らしの部屋でも圧迫感は全くない。
・頑張れば女一人でも持ちあげられる重さ、取り外しや部屋の移動も可能。
写真でお分かりいただけるでしょうか。これ、組み立ては強力なマジックテープと太いジッパーのみなんです。全く難しいことはなく、一人で簡単に設置できました。
そこから1年使ってみての感想は…
・移動ができるモノを買ってよかった。
・スタンドとのジョイント部分でBOXの向きを変えられるのがなにげに便利。
・デザインが良いので部屋にあっても気にならない。
やはり自分が置かれる状況や環境の変化に伴って、仕事スペースの配置替えや部屋の模様替えはおきるもので、結局はじめに設置した場所から三度移動させました。決して軽くはないけれど、頑張れば一人でも本体とスタンドを解体して持ち運べるので全く問題なし。
また、スタンドとのジョイント部分で本体の方向を簡単にくるっと回せるのもなにげに良かった。本体が長方形のBOXなので、置く方向によって部屋の圧迫感が全然違うんですね。我が家はそんなに広くないのですが、使う時とそうでない時で方向を変えて使い分けると、存在感も最小限に抑えられてとてもよきです。もともとのデザインも、余計なものがないスタイリッシュさで部屋にあっても気にならなくてグー。さすがスウェーデン発!
同時購入のスタンドについて
ISOVOXⅡじたいは頭を覆う部分のみなので、設置するためのスピーカー用PAスタンドを同時購入する必要があります。結構悩んでチョイスした覚えがあるので、こちらも購入時のメモを掲載しておきます。
・スタンドは35ミリ径がおすすめ(38ミリ径は微妙に穴に入らない気がする)。
・自分の頭がぶつからない高さに微調整ができるものを選ぶといい。
・検討したけれど結局サイトでお勧めされていたClassic Pro/SPSにおちついた。
・値段的にもモノ的にも確かにこれがベストだった気がする。
私が購入した時、サイトの説明には確か「パイプ径38ミリ〜35ミリを購入してください」とあった気が。今は35ミリ径の記載しかありませんでした。38はやっぱりちょっと大きいのかな?また、サイトにはおすすめのスタンドとしてClassic Pro/SPSの記載もあったのですが、これも今はないみたい。通販サイトによってはスタンドをプレゼントとしてセット販売しているところもあるようなので、検討してみるのも良さそうです。
■Classic Pro/SPS
私が購入したスタンドはこちら。
吸音・収録
で、実際の使用感触はどうなのよ?!ということで、まずは組み立てた直後、簡易的にiPhoneのボイスメモでテスト録音してみた動画とメモをみて&聞いてみて欲しいです。
・内部の吸音効果がかなり高い。
・何件かのレビューにある通りドライでクリアでいいかんじに録れる。
・室内反響が全く気にならなくなった。
・中に入ると収録スタジオみたいなシーンとした音になる。とてもいい。
・新車のにおいがする。すごくいい。
どうでしょう?!!この音質の違い!!!
私としてはかなりの差で、本当にびっくりしました。
一番驚いたのは、これまでiPhoneなどで録音した時に(まぁ携帯ボイスメモだし…)で済ませていた音質が、ISOVOXの中で録るだけではるかに向上するということ。残響がなくなって拾う音がとってもドライなのと、防音効果で冷蔵庫や電気製品の生活音やホワイトノイズも超軽減されている…!これ以来、ちょっとしたフリートークを録音するくらいならば、iPhoneのボイスメモだけでも十分と思うようになりました。
もちろんコンデンサーマイクをセッティングしてしっかりめの録音もするのですが、編集ソフトで波形をみると違いがさらによくわかります。余計な雑音もホワイトノイズもほぼ入らなくなったので編集も超〜はかどる。
■NEUMANN_TLM102
自宅で個人的に作るサンプルなどは、こちらのマイクを使用しています。
ところで、近年は動画配信などが盛んになってきて、スマホと相性のいいマイクも増えてきましたね。
スマホで簡単に、でもiPhoneボイスメモ以上のそこそこの音で録れるようなマイクってないものかな…、と検討していたところ、ライブ配信などをする知人が紹介していたものがとても良さそうだったので、先日久しぶりに新しい機材を購入しました。
■SHURE_MV88+ビデオキット
スマホやiPadにそのまま取り付けられるマイク。
ビデオキットの三脚もかなりしっかりしていて非常に使いやすい。
ちなみに、このnoteでもご紹介させていただいた朗読作品は、ISOVOXⅡと↑MV88、iPhone 11で収録しました。
防音の感触
さて、では最後に「防音」についてはどうでしょうか。購入当時、iPhoneでMAX音量の音楽をかけて中に置いてみた時の私のメモは以下のとおりでした。
・中で徳永英明さんの「壊れかけのRadio」をMAX音量でかけてみる。
・完璧な防音ができるというほどではないかも。
・とはいえもちろんかなり音量は抑えられてはいる。
・ヒトの声と音楽は具合が違うと思うので、防音面に関しては要実験。
・ただ絶叫は無理でも、間違いなく夜中のレペ練はこころおきなくいけるレベル。
一人では確認ができないので、導入した当時の実験と感想は上記のようなものでしたが、1年経った使用感や友人を巻き込みつつ確認してみた感想は
・完璧な防音ではないものの、かなりの減音ができている
…です。
録音の時の感想にも書いたように、ISOVOXⅡの中で声を出すと、吸音されて残響感がなくなりかなりドライな音になります。ISOVOXⅡの外からも声が聞こえはするのですが、こんな具合なので、普通の共鳴を伴うような音ではなく、乾いた音が単品で聞こえるような感じなんですね。私の感覚では日常会話くらいまで軽減されており、ご近所迷惑になることはないのではないかとおもっています。
友人が遊びにきたとき、試しに中で絶叫してもらってベランダに出て窓を閉めてみたところ、私の耳には友人の声は聞こえませんでした(※マンション・鉄骨)。その後も、ISOVOXⅡを使いながら日々の発声練習や大声を出すリハーサルを重ねていますが、いまのところご近所から苦情は寄せられていません。
スタジオのような完璧さではないにしても、減音・防音効果はかなりあるという感想です。
まとめ
ISOVOXⅡのことを中心に、我が家の防音と録音の環境について綴ってみました。
購入の背中を押したのが純粋な向上心ではなく深夜の衝動買いという少々アレな事実はありますが、一年少し使用してみて、今は非常に重宝していますし、とくに新型コロナウイルスの影響で自宅にいる時間が増えてからは、これがあってよかったと思うことが本当に多いです。家にジッとひとりでいると、下手するといちにち声を出さなかった…という事態にもなるので、意識的にISOVOXⅡをつかって発声をしたり、サンプルを録音して研究したりと大活躍。
総じて私の感想は…
かなりなレベルで
ものすごくまんぞくです!!!
私のISOVOXⅡへの愛が、自宅の防音・録音環境の整備を検討していらっしゃる方の参考になりましたら幸いです。
■宮地楽器ミュージックオンライン
ではではみなさま、ごきげんよう。
▶︎河合紗希子のtwitterもよろしくお願いいたしますネ。
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