春の絵を購入した話


『チューリップのリズム』

 色んな思いを込めて、再び絵を購入した話。

 1月25日、仕事帰りの電車の中で、私はTwitterのフォロワーさんの絵を購入することになった。前々から、フォローしていた絵描きさんで、いつかこの方の絵が欲しいと密かに思っていた。この頃の私は大きな変化の流れの中にいたと思う。

 仕事の面でもプライベートでも、性格の面でも大きな変化まみれの1年だった。カウンセリングに通っているのだが、変化ばかりが続いている1年を振り返った時に、確実に何かが起きようとしているけれど、あなたの心は何を求めているんでしょうね、なんて話していた。そんな変化の中で精一杯生きる日々に心身が疲れつつも、まだまだ自分は変化していくし、これからも自分の心の病と戦っていくんだと興奮気味に意気込んでいた。以前は時間なんてあってもなくても同じで、時間を大切にしようなんて思わなかった。ただ苦しいだけの日々の中で、1日をやり過ごすことの積み重ねをしているに過ぎなかった。休日はただ体を休めるだけで、生きた心地のしない日々だった。それが、もっともっと変わりたい、もっともっと楽しいことのために時間を使いたい、幸せになりたいと思う様になっていった。春の様に私の心は色づいていた。

 そういう流れの中で、私はフォロワーさんの『チューリップのリズム』という絵をお迎えすることにした。2022年、大学を卒業したは良いものの、家族が新型コロナウィルスに感染し、卒業式に出席できなかった。卒業式から丁度1年の日を指定させて頂き、絵を送って頂くことになった。『チューリップのリズム』は春の絵。私の一番好きな花であるチューリップが可愛く、可憐にさいている。その中心に描かれた愛らしい女の子は、少し悲しげな表情をしている。初めてこの絵をTwitterで見た時からずっと大好きだった。ぱっと見てその絵の良さを感じているときは、何故良いと思うのか上手く言葉にできない。ただひたすらに訳もわからず、好きだと思った。今今思うと、可愛らしい春の喜びの中に、悲しい要素が入っているからこんなにも惹かれたのかもしれない。 
 この悲しみを帯びた春の喜びの絵、私の大好きなチューリップの絵と一緒にやっと卒業した気持ちになって、再び大きな変化を迎えて、まだまだ変わっていこう、私の人生の春を悲しみ喜んで始めようと思っていた。

 この絵をお迎えすることが決まったのが、今年の1月25日。絵が送られてくる日が3月の下旬。受け取りの日が近づいてきた3月に、私は休職することが決まった。私はまだまだ変化して、病気とも戦うつもりだった。俳句も始めたのだが、初めて詠んだ句では、散った花の横に蕾がある様子を描写した。まだまだ春の様な喜びはあって、季節が深まっていくことを自分の心に擬えて句にしたかったのだ。休職するという決断に至った時、とてもショックだった。でも段々と現実を受け入れられる様になり、休職も大きな変化の一つであって、流れの中の一部だから、私はまだまだ戦っていると思えた。

 絵が届いた。実物は思ったよりも大きかった。素敵な雰囲気を纏った額装がされていた。ずーーーっと、届いた絵を私は眺めていた。見つめあっている様な気分だった。この絵と一緒に喜んだり、悲しんだりしたい。どこもかしこも素敵な絵。嬉しいことは全力で喜んで感動して、悲しいことは全力で苦しんで、たまに危険な状態になってしまう様な、激しく精一杯自分の運命を生きている私には、このタイミングで『チューリップのリズム』が必要だったと思う。悲しみは大事であり、美しいものだ。私は強くそう思う。この絵は凄く美しい。この絵と一緒に美しい人生を大切に歩んでいきたい。くじけちゃうかもしれないけど。