【 後半レポート 】#花の日イベント2021 〜垣根を超えた花業界の未来〜
2021年8月7日、株式会社RINの有志コミュニティ「フラワーサイクル*アンバサダー」主催のオンラインイベントを開催。
今年で2回目となる「花の日イベント」は、前半では花のある暮らしをより楽しむためのワークショップ。後半では、花農家・市場・生花店・流通事業者・消費者、各セクターからの声を元にディスカッションしました。
(前半レポートはこちら)
日本の花業界の仕組みと課題
後半のトークセッションで理解を深めるためにも、まず「日本の花業界の仕組み」をフラワーサイクリスト 南美さんより紹介。
花業界では、川の流れに例え、生産者を「川上」、消費者を「川下」と呼びます。
花の流通量は平成7年をピークに年々減少していて、20年以上右肩下がり。
小売経費(ひとつのお花を販売するための経費)の割合は青果物の倍ほどあります。花束での加工代なども含みますが、ロスが多いことも一つの要因です。
さらに若年層ほど購入金額が低く、需要拡大、花のある暮らしの定着化に向けて、様々な取り込みが必要とされています。
参考資料:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/pdf/1912_meguzi_all.pdf
これからの花業界において、必要とされる市場の役割
こうした課題がある中、川崎花卉園芸株式会社 執行役員 相嶋さまに、インタビューをさせて頂きました。
きっかけは今年の4月、とある施設とのタイアップイベントで、花の廃棄問題に対するRINのコメントに目を留められた、川崎花卉園芸の会長 柴崎さまより、“フラワーロスは、各流通段階で発生します。この問題を農場のみに留まらず業界として捉えたく一度お話しする機会を頂戴できれば幸いです” と、連絡を頂いたことです。
その後、4月後半に代表の河島より柴崎さまへ活動説明させて頂き、意気投合。6月には川崎幸市場を訪問。7月上旬に國枝バラ園との意見交換を経て、本イベントでもご協力頂けることになりました。
後半のディスカッションテーマ『垣根を超えた花業界の未来』は、川崎花卉園芸が掲げる「All win構想」からヒントを得ています。
「All win構想」とは、これまで日本の市場業界がプロダクトアウトでやってきたところを、マーケットインの発想に変え、産地側にニーズを伝える。そうすることで一連の流れにいる各セクターそれぞれwin-winになるという考えです。
その他 川崎花卉園芸の特徴でもある加工事業を行う理由や、オランダから学ぶ合理的な形態。何より「花の分母」を広げていくことが必要ということを伺いました。
これらのインタビュー内容は下記noteよりご覧頂けます。
日本トップクラスの生産者が行う工夫
國枝バラ園をお繋ぎ頂いた理由は、生産量も多く品質も良い日本トップクラスの生産者だということだけでなく、先進的な考えをお持ちだったからです。
イベントでは國枝バラ園の國枝さまが、どのような想いで「バラ」を育てているのか、ハウスの設備や、雇用の工夫や規格外の花の活用法など、紹介させて頂きました。
日本の花農家さんが作る生花はとても美しく、繊細かつクオリティも高い、誇るべき日本の財産です。一方で、年々花農家の割合は減少していて、野菜農家に転換する方もいるのも現実でもあります。
フラワーサイクリストの垣根を超えた取り組み「フラワーサイクルマルシェ」
2020年春、イベントの中止や休校が相次いだコロナ禍で、フラワーサイクリストの活動を知った農家さんから “このままだと大量の花が出荷出来ずに廃棄せざるを得ない状況です” と連絡を頂きました。
それを受け急遽開設したのが、花農家と消費者の架け橋となるオンラインショップ『フラワーサイクルマルシェ』。
この仕組みは、生産者から直送で商品を届ける、いわゆる「D2Cモデル(Direct to Consumer)」です。
特に立ち上げ初期は、“せっかくなら応援消費で” という世間のニーズや、母の日と重なった後押しもあり、たくさんの花を救うことが出来ました。
さらに、SNSでは届いたお花と共にこのような感想が…
これらをまとめ、農家さんに伝えたところ下記のようなメッセージを頂きました。
私たちフラワーサイクリストは、フラワーサイクルマルシェの運営を通して気付いたことは、生産者は自身の育てた花がどのような場所に出荷されているのか知らないケースが多いということ。そして私たち消費者の声を聞くことがほとんどないということです。
きっと、既存の花業界の、生産者「川上」から消費者「川下」の一方的な流通ルートに加え、このような垣根を超えたオンライン上でのコミュニケーション。ひと昔前まではタブーとされていた市場と消費者サイドの連携など、これからの時代においては必要なのではないでしょうか。
これらの経緯を踏まえ、以下の3名をゲストにお招きしてディスカッションを行いました。
生花店・流通事業者・消費者、各セクターが考える「花の分母」を広げるためには?
【 生花店 】
AFRIKA ROSE ジェネラルマネージャー
海野 真司 さま
10年間ケニアのバラ農園からバラをフェアトレードで日本に直輸入しているアフリカローズさん。
最近はあえて「フェアトレード」ということを全面に発信するのではなく、綺麗だから、心が和むからという、花本来の持つ価値。そしてお花を選ぶ体験やスタッフからの提案といったお客様とのコミュニケーションを大事にされているそうです。
今まで店舗での廃棄率は、時期によっても波はあるけれど平均30%。贈り物としても選ばれることが多い花屋だからこそ、常に美しい状態で売り場にある状態にしておくことと、それらの入れ替えでどうしても残ってしまう花をどうするかがジレンマだったとのこと。
そのような背景がある中、2021年の5月RINと事業提携したことで、現在はほぼ廃棄をしなくても良い状態になったそうです。
【 流通事業者 】
LIFULL FLOWER 事業責任者
篠島 浩平 さま
相嶋さまのインタビューでも紹介があったように、「LIFULLFLOWER」は、4年程前に、LIFULLに勤める実家が花農家を営む須貝さんという女性が立ち上げたサービス。
「花の流通ロスを0にすること」を掲げていらっしゃることから、通ずることも多く、4月のアンバサダーミートアップでは、篠島さんと意見交換もさせて頂いてました。
自宅に季節の花をお届けする定期便から派生して、現在は化粧品ブランドや、音楽アーティストとのコラボレーションという形で、より多くの層にお花を届けるためのアプローチをされています。
【 消費者 】
エシカル大学 副学長
荒木 章子 さま
株式会社Kanattaが運営するコミュニティ「エシカルガール」は、“エシカルなライフスタイルをもっと身近に。エシカルをもっと楽しもう” をテーマに、交流会や課外活動、スピンオフイベントなど様々な企画を実施されています。
RINとは、エシカルな考え方が広まることで、同時に花のある暮らしを楽しめるような世の中にしたいと企画した「エシカルステイ」(ホテル×ロスフラワー装飾×エシカルな暮らし体験)においてコラボレーション。
荒木さんは、ご実家が有機栽培農家で、お花好きのお母様の影響や地元の環境から、幼い頃から草花に囲まれて育ったそうです。
このように 花×エシカルやサステナブル という観点から、既に垣根を超えた連携をさせて頂いている3社ではありますが、
LIFULL FLOWERさんが市場と連携したり、アフリカローズさんとRINが連携することで、花の廃棄も減らせるということ。
さらに参加者の質問から、いつ・どこで・誰が・どのようなルートを経て提供しているのかという「トレーサビリティ」を明らかにすることで、よりそのストーリーに親近感や付加価値が生まれるということを再試認識しました。
RINでは新たな取り組みとして、8月よりデリバリーサービス「Wolt」でロスフラワーギフトの配達を開始しますが、
花のある暮らしを広げるためのアイディアとして、“お花を美しいと思える人の分母を広げること” と、“生産者という職業をもっと憧れられるような職業にすること” が上がりました。
そのためにも、子どもの頃から、お花に触れ合うだけでなく、自然や季節を感じるような体験を提供することが、豊かな感性を育むことにも繋がり、
このコロナ禍でワーケーションという形で農業をする人が増えていることは、新たなプラットフォームが生まれたり、農地の有効活用のアイデアが生まれる可能性のある、良い流れが来ているはずだと考えました。
花のある暮らしを楽しむための新たな取り組み
交流会には、特別ゲストとして、
日本初の花と緑に関わるプロジェクト専門のクラウドファンディングサービス『tanetomi』(種と実)を運営する、株式会社JOURO 代表取締役の青木さん。
そして昨年の花の日イベントでご登壇頂き、RINとは共同で装飾や定期便を行うなど日頃からお世話になっている、株式会社greenpiece 代表取締役 金森さんにもご参加頂きました。
青木さんは、様々なメディアでも話題になっている、オリンピック関連イベントの中止により行き場を失ったドライローズを届けるプロジェクトを実施されています。(アンバサダーの中にも支援させて頂いたメンバーが既に何名かいました)
金森さんは、8月1日より秋田空港に「秋田犬の装飾」を展示されています。実は仲卸で販売できなくなった花をカラードライフラワーにして使用していて、5ミリくらいの花のカケラをピンセットで付ける、地道な作業だったそうです!greenpieceさんだからこそ実現出来た作品に間違いないですね。
それぞれ日々新たなチャレンジされ、積極的に発信もされているお二人ですが、都内との課題感の違いや、地方だからこそ出来る取り組みなどもお話頂きました。
来年も「8月7日」花の日に
私たちフラワーサイクリストは、“花のある暮らしを楽しむ仲間” を全国に増やすことが、これからの花業界にとってより必要だと考えています。
新型コロナウイルス感染に伴い、多くのイベントや結婚式が軒並み中止となり、行き場を失った花が大量に廃棄せざるを得ない状況に。フラワーサイクリストとしての活動を知って頂いた方から様々な問い合わせがありましたが、特にこの1年はRIN以外のメディアやSNSを通しても花の廃棄問題に関して多く発信され、今まで以上に「ロスフラワー」という言葉が世間に広まった年でもありました。
同時に「ロスフラワー」という言葉に対して、“安い”、“可哀想”、というイメージが先行したり、花の廃棄率の数値も必要以上に多用されているように感じます。
“花のロスを減らし花のある生活を文化にする” ためには、安いという視点や、可哀想だからという同情の気持ちではきっと持続しません。
「垣根を超えた花業界の未来」を明るいものにするためには、まずは1輪でも良いので、それぞれの方法で花を日常に取り入れること。
ぜひ本イベントを機に、花のある暮らしに興味を持ってもらえる方が、一人でも増えたら何より光栄に思います。
来年の「8月7日」には、さらにパワーアップした形で開催出来るように、私たちフラワーサイクリストは活動して参りますので、引き続き見守って頂けますと幸いです。
改めて花の日イベントにご参加頂いた皆さま、ご協力頂いた皆さま、
ありがとうございました*
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?