外出する仕事がしたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~
はじめに(チームより)
「こどもたちのために、日本を変える。」事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、こども・子育て領域の社会課題解決活動と価値創造を行う国内最大規模のNPOである「認定NPO法人フローレンス(詳しいご紹介はこちら>>)」において、総務関連チームで障害者雇用スタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>
知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ハック」をご紹介しています。
▼本日のお悩み
「障害のある社員に外出が伴う仕事をしてもらいたいのですが、準備するものなどはありますか?」
お仕事ハック①外出のためのマニュアルを作る
清掃業務をしたい_オフィス外の施設編でも紹介した通り、フローレンスの障害者雇用チームでは、フローレンスが運営している保育施設の清掃を、1日や半日単位で複数のスタッフで行なっています。
午前中はオフィスで事務業務をしてから、午後に施設清掃のため移動をしたり、自宅から直接施設に移動をするなど、日常的に外出をしています。
このように外出を伴う業務を始める場合に必要なことがいくつかあります。
・外出経路の確認
・交通機関の利用方法の確認
・道に迷った時、電車遅延、その他トラブルの対応方法の確認
外出経路や交通機関の利用方法の確認では、画像のように、どの沿線を使うのか、駅では何口から出るのか、道順などを詳細にマニュアル化しています。
・道に迷った時やトラブル時に電話をかける電話番号を登録する
・電車遅延の時は、遅延証をもらう。出勤先に遅刻を連絡する
・何時何分の電車に乗るかメモをしておく
なども、あらかじめ伝えておくことが必要です。
障害者手帳の種類によっては公共交通機関が割引になるので、確認しておくと交通費の精算時に役立ちます。
また、長距離を移動する場合は体力も消耗するため、清掃等の体力仕事の場合には、現地に到着してから10分程度休憩する時間をとって作業を開始することも検討してください。
お仕事ハック②外出レクチャーをする
障害のあるスタッフの場合、プライベートで1人で外出することが少なく、外出に慣れていない場合が多いので、マニュアルやガイドが出来上がったら、レクチャー担当と障害のあるスタッフが一緒に目的地までの経路を確認するとさらに安心です。
▼外出レクチャーの流れ
・外出レクチャー前の確認
・外出レクチャーその1
・外出レクチャーその2
・外出レクチャー振り返り
まず、実際に外出レクチャーに行く前に、マニュアルを見ながら外出の流れやどんなトラブルが予測されるのかをオフィスで確認しておきます。
その後、1回めの外出レクチャーでは、マニュアルを見ながら、目的地までの経路を一緒に歩きます。2回めの外出レクチャーでは、障害のあるスタッフが自身の判断で行動できるか、サポート担当者は後ろからついていきながら見守ります。
レクチャー後には、振り返りを必ず行います。
「道に迷ったらどうしますか?」「電車が遅延したらどうしますか?」など、繰り返しシミュレーションすることで、実際にトラブルがあった時にも落ち着いて対応できるでしょう。
お仕事ハック③郵便局、通帳記入、区役所などに外出する
フローレンスでは、施設清掃での移動以外でも外出する仕事があります。
例えば、「フローレンスのチラシを置いていただいている公的施設にチラシを補充に行く」仕事です。以下のマニュアル画像のように、道順等を記載した後に、チラシの補充手順をまとめてあります。
▼チラシの補充手順
①1F入口で管理人さんに挨拶をして、消毒液をつける
②4Fにエレベーターで上がり、左に進む
③「◯◯センター」の窓口の方に
「フローレンスです。チラシの補充に来ました」と声をかける
※担当者の方は◯◯◯◯さんです。
④チラシを補充する(折れたチラシは回収する)
⑤窓口の方に「ありがとうございました」と声をかけて帰る
また、「法務局に行き履歴事項全部証明書を取得する」仕事もあります。以下のマニュアル画像のように、行く前に印紙税を準備することなどもまとめてあります。
▼行く前の準備
法務担当者に
①何枚、取得するか聞き、メモする
②取得枚数分の印紙税(1部600円)を受け取る
③会社法人等番号が記載された紙が入ってるファイルをバックに入れる
■持ち物
・飲み物
・携帯電話
・印紙税のお金
・会社法人等番号が記載された紙が入ってるファイルを入れたバック
※道に迷ってしまったら、総務チームまで電話をかけてください。
他にも、
・郵便局への郵便物の持ち込み
・切手やレターパックの購入
・銀行での通帳記入
・行政機関での書類の受け取り
など、全社で見てみると、さまざまな「定期的な外出」があると思いますので、ぜひ探してみてください。
最後に
外出を伴う業務は大変ではありますが、事務業務を主に担っている障害のあるスタッフは「外出すると気分転換になって楽しいです」と言ってくれることが多いです。
フローレンスの障害者雇用チームには電動車いすを使っているスタッフがおり、積極的に外出仕事をしてもらっています。「歩くにはちょっと遠い場所」が目的地の場合、電動車いすが活躍します。電動モーターが原動力!という利点を活かし、みんな大助かりです。
*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。
執筆の背景
障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。
そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました
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ここまでお読みくださりありがとうございます。一つだけお願いをさせてください。
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