ドラゴンクエストIII HD-2D印象 「小説的なDQ3」
ドラゴンクエスト3がHD-2Dでリメイクされた。とてもおもしろい!
思い出補正でおもしろいのかな? という心配は杞憂に終わった。
今はレベル15くらいで未クリアの段階。ファースト・インプレッション的にDQ3の面白さについて考えたことを。
前提
ストーリーのネタバレ無し
アリアハン大陸のスクリーンショットあり
DQ3は小説的
DQ3はデフォルメされている(他のゲームも大抵そうだけど)。
例えばこの写真。
単純にキャラクターの大きさと街を見比べると、キャラクターは民家より大きいことになってしまう。当然そんなことはなくて、これはゲーム上わかりやすくするため、キャラクターが大きく表示されている。また、戦闘中だとより実際に近い比率で表示されている。
こうしたデフォルメは、そのまま受け取るのではなくて、想像で補う必要がある。
例えば上の写真では、キャラクターの大きさどおりなら右のキラキラまで簡単に行けそうなものだけど、実際はこの段差は高い崖で、だから行けないのだろう、と想像できる。
想像と合わせて読み取る方式は、小説に似ている。
小説では、文章から人物の見た目、声や動き、光景を想像して読み取っている。想像の余地は大きく、読む人によって思い浮かべるものはきっと異なっている。
これが漫画になると、人物の見た目や光景は描かれているので脳内で思い浮かべる必要はない。アニメや映画になると、声や動きまで描写されるから想像する余地はだいぶ少なくなる。
小説から漫画に、アニメから小説に、と変換する場合、こぼれ落ちるものは必ず出てきてしまうものだし、だからどれかが優れているというものではなく、それぞれの良さがある。
DQ3は、他のナンバリングに比べて想像の余地が大きく、小説的だと思う。何故なら、旅をする仲間をキャラメイクすることが出来るから。
DQ1は主人公ひとりだけだし、DQ2は名前こそ自分で決められるけれど王子・王女という出自は決まっている。DQ4以降の仲間は名前が決まっており、それぞれに背景となる物語があって、想像の余地は少なめとなる(繰り返すけれども想像の余地が多いからよい、少ないから駄目というわけではない。そこに優劣はない)。
DQ3では、仲間の名前、性別、職業を選ぶことができ、HD-2D版からは声や見た目も選べるようになっている。プレイヤーはそれぞれ自分の好きなように仲間を選び、共に冒険をする。
作成したキャラクターには背景となる物語が用意されていないから、自分でいくらでも想像することが出来る。どんな生い立ちで、なぜ冒険者になったのか。スーパーファミコン版から加わった「性格」システムも、キャラクターを想像する一助となっている。
果たしてあなたの仲間はどんな風に旅をするのだろう。勝利したとき、悲しい出来事を伝えなければならないときどんな顔をするのか、旅の途中で喧嘩をしたり、仲直りしたりするだろうか? ピンチの場面はどんな反応をするのか。最後の目的を達成したとき、どんな風に喜ぶのだろう。
同じゲームを経験していても、想像するものは、プレイヤーそれぞれきっと異なっている。
他のドラクエでもそうだけど、冒険の仕方も自由度が高い。もちろん、ある程度の行き先は決まっているけれど、しっかり成長させてから次の場所へ移動する人もいれば、危険を冒しながらどんどん進む人もいる。後戻りしたり、迷ったり、時に無視したり、あっちから先に行ったり、節約したり全滅したり、冒険の進め方は人それぞれで、どの冒険の仕方が正しい、というわけではない。この方法が誰にとっても本来の冒険の仕方、と言えるような「正史」は存在しない。
HD-2D版は、想像の余地を大きく残したままのリメイクとなっている。戦闘中の行動を決める場面ではキャラクターの背後が映るものの、行動の時は文字とエフェクトだけになる。もちろん描こうと思えばDQ10やDQ11のように、敵の近くまで行って武器をふり下ろす、という様子を描くこともできたはず。でもそうしていない。
ファミコンの時は技術上の理由でデフォルメせざるを得なかったけれど、HD-2Dは敢えてデフォルメし、想像の余地を残している。キャラクターの背後をちらっと見せたり、風景をリアルにしたりしているのは想像しやすくするためのヒントで、やり過ぎると却って想像の余地が減ってしまう。
DQ10やDQ11のように頭身を大きくすることも、3Dで描写することもできた中で、敢えてこのバランスを選んだのはきっと、そこにDQ3らしさを見たからだと思う。
キャラメイク及びその人物の背景や性格、言動、冒険の仕方の幅広さを考えると、みんな違う冒険をすることになる。100人いれば100通りの物語があって、そのどれもがその人にとっての「正史」となる。同じゲームをしても、その物語はあなただけのもの。
だから、めいっぱい想像しよう。DQ3の物語は、想像により、プレイヤーの心の中で完成するのだから。
おしまい
おまけ:映画のテーマ
他の人から押しつけられる冒険ではなく、自分で考え、想像し、選んだ自分だけの物語を大切にしよう、というテーマを描いたのが映画『ドラゴンクエスト ユアストーリー』だった。世間では不評だったようだけれど、ドラクエらしい、いい映画だったと思っている。