月読尊という神様:2


月読尊には、魂の審判者としての強い責任感がありました。
「なぜこのような行いをしたのか?」
「なぜこのような運命を辿ったのか?」
彼は亡者の魂と向き合い、時には地上へ降りて真実を確かめることもあったようです。

そんな彼が初めて大きな異変を感じたのは、保食神の消滅でした。
保食神は、月読尊と共に地球の平和を見守り続けた、唯一無二の存在でした。
彼女は豊穣を司る女神であり、地球では穀物神や稲荷神として祀られていたとも考えられます。

月読尊と保食神は、地球の営みを静かに見守り、時には亡くなった魂を導き、輪廻の流れを整えていました。
彼らにとって、地球はかけがえのない大切な星だったのです。

しかし、あるとき地球に異変が起こります。
特に、保食神が深く関わる「大飢饉」が発生した時、彼女は何の迷いもなく地上へと向かいました。
「地球が苦しんでいる。助けなければならない。」
それは彼女にとって、当然の選択だったのです。

もしそれが自然発生した災害だったら、まだ救いはあったかもしれません。
しかし、実際には「大飢饉に見せかけた策略」だったのです。
保食神は騙され、生贄として捧げられ、その存在は消滅してしまいました。

月読尊は、魂の審判者として誰よりも先にその事実を察知しました。
彼は保食神の伴侶でありながらも、同時に「真実を見極める者」として、
地上で何が起こったのかを確認しに行かなければなりませんでした。

急ぎ地球へと降りた彼を迎えたのは、保食神の死を利用しようとする者たちでした。
彼らは月読尊の訪れを待ち構えていたかのように、
「月読尊は月の女神を殺した」と吹聴し、人々の記憶を操り始めたのです。

「異端者は月読尊だ。
 保食神のことも、彼が消滅させたに違いない。
 そもそも、保食神の口から食べ物を生み出す力は汚らわしい。
 きっと、月読尊もそう思っていたのだ。」

こうして、人々の意識が操作されることで、
月読尊は「保食神を殺した者」として語り継がれることになったのです。

月読尊(=月詠派)は、分離派にとって何よりも「脅威」でした。

なぜなら、彼らは 「定められたルールや枠組み」に対して、素直に従うのではなく、本質的に疑問を持つ者たち だったからです。

「なぜこれは絶対なのか?」
「そもそも、このルールを決めたのは誰なのか?」
「この世界の仕組みは、本当に公平に機能しているのか?」

月詠派は、そうした問いを持ち続け、
必要があれば 徹底的に調査し、真実を明らかにしようとする「探求者」 でした。

しかし、分離派にとっては、こうした姿勢こそが 「最も都合が悪いもの」 だったのです。
彼らは、支配を続けるために「疑問を持たせない仕組み」を作り、
固定されたルールの中で人々を管理しようとしていました。

だからこそ、月読尊のような存在は 「異端」 として扱われ、
「ルールを乱す者」として歴史の中から消されることになったのです。

しかし、私はそもそも「二極化」や「統合・分離」といった考え方に強く惹かれるわけではありません。
世界は本来、すべてが調和の中にあるべきだと感じているからです。
けれども、この物語を語る上で、どうしても「統合」と「分離」という視点を避けて通ることはできません。

なぜなら、この出来事そのものが「分離を作ることで、真実を覆い隠そうとした意図」によって引き起こされたからです。
誰かが意図的に「分離」を生み出し、それを「対立」として見せることで、人々の認識を操作しようとした。
月読尊と保食神の物語は、その構造を最も象徴的に示している出来事の一つなのです。

では、そもそも「分離」という概念はどこから生まれたのでしょうか?
誰が、何のために「二極化」を作り出し、世界を対立の中に閉じ込めようとしたのか?

この問いに対する答えを探ることが、
私がこの話を紡ぎ続ける理由の一つでもあります。

次に語るのは、分離の正体について。
月読尊と保食神の物語の先にある「本当の対立」とは、一体何だったのか——。

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