ハルト(TOZ)のダンスが好きだという話

 タイトルの通りなのですが、TOZのハルトのダンスが好きだな〜ということですこし語りたいと思います。

 一応私自身のダンス経験について述べておきますと、バレエを10年程度、ヒップホップを6年程度かじりました。その他ロック、ジャズ、チアダンス、バトントワリングは一応経験があります。ただすべて下手くそです。

 下手くそです。

 2回言ってしまった。つまりそういうことで、私がこれから書くこともあまり当てにはしないでほしいし、素人に毛が生えた程度の人間がなんか騒いでいるわ……くらいの気持ちで読んでほしいのです。間違ってもダンス解説などではなく、私が個人的に彼のダンスの好きなところを語るだけのnoteです。

 特にヒップホップは、6年踊ったわりに詳しくないというか、半分独学のようなものなのであまり語れることはありません。実は。しかしまあ曲がりなりにもバレエには真面目に取り組んできたので(下手だけど)、今回は「ハルトのダンスをバレエ的な観点から語る」ことをテーマにしてみたいと思います。

正確性・丁寧さ

 ハルトのダンスを見て「どの瞬間を切り取っても綺麗」「ひとつひとつの動作が丁寧」と思ったことはありませんか? あくまで個人の感想ではありますが、その理由のひとつはバレエを学んだことにあるのではないかと私は思います。

 バレエはすべてのポジション、すべてのポーズに「正解」があるダンスです。

 たとえば、「2の方向で第一アラベスク」だとか「8の方向で5番クロワゼ、アン・バ」と言えば、それだけでその場にいる全員が同じ方向を向いて、寸分違わず同じ姿勢で同じポーズをとることができる。それがバレエです。

 これはバレエにおいてコール・ド・バレエ(群舞)が重要な位置を占めることと関係します。バレエの群舞は全員がぴったりと同じポーズを決めていなければなりません。同じタイミングで同じ角度で同じ動き、同じポーズをする。それがコール・ド・バレエです。ひとつでも乱れると舞台は駄目になってしまいます。

 だからバレエでは、バーレッスンやフロアレッスンで徹底的に「正しいポーズ、正しいパ(動き)、正しい呼吸」を練習します。あなたはアン・ナバンの腕が高すぎるとか、あなたはバランセのつま先が伸びていないとか、繰り返しやって正しい形を覚えるのがバレエの基礎練習です。

 ヒップホップは違います。もともとストリートダンスは個人対個人の文化ですから、「誰かとポーズ、動きをそろえる」という発想がないわけです。もちろんK-popダンスには群舞がありますが、基礎としているのはあくまでストリートダンスのため、ひとつひとつのポーズや動きに目指すべき「正解」は存在していません。

 バレエには「右斜め前」は一種類しかありません。それは正面からぴったり45°の角度を指し、「2の方向」と呼ばれます(違う呼び方をする流派もあります)。「右斜め前にタンデュ」と言われて50°や40°の方向に足を出せば、それは「間違い」になります。しかしヒップホップで「右斜め前」と言ったとき、それが何度を指すかは決まっていません。

 ここからさらに言えることがあります。それは、「バレエではすべての動きを丁寧に踊らなくてはならない」ということです。

 たとえば「手を下ろしてください」と言われたとき、ヒップホップでは何通りもの「下ろし方」があります。人によって違いますし、同じ人によってもその時によって違います。しかしバレエでは「正しい手の下ろし方」が決まっていて、それをおろそかにすることはできません。足を前に出す、歩く、ジャンプする。そういった些細な行為ひとつ取っても、正解があって、丁寧にこなすことを要求される。それがバレエです。

 どちらが優れているというわけではありません。ただバレエとストリートダンスには、そういった特性の違いがあります。

 ハルトのダンスからは、バレエの正確性を感じます。バーレッスンで正しいパを繰り返し何度も練習した人の丁寧さを感じるんです。

 たとえば、BOYS PLANETのシグナルソング、Here I Amから抜粋したこちらをご覧ください。

 二度、斜めのラインで腕をしっかりと止めているのが見えると思います。おそらくは流してもいい振り付けです。しかしハルトは二度とも肘を伸ばしてぴったりと止め、斜めのラインをはっきり見せる解釈をしています。それもどちらもほぼ45度のラインです。この部分で、ここまで美しいラインで腕をぴたっと止めている練習生はあまりいません。

 実際のところ曲の中で腕を完全に伸ばしきって斜めのラインを見せるというのは見た目ほど簡単ではありません。たとえばチアダンスでは、一発で斜めや真横に腕を持っていけるように何度も鏡の前で練習します。それを考えると、ハルトの正確さには驚かされます。

 これは振付の解釈の問題ですから、ほかの練習生が劣っているというわけではないです。ただ、ハルトはここで二度とも斜めのラインを見せるという解釈をした。そしてそれを正確に踊りこなした。こういった細かな丁寧さが、彼の踊りの随所に見られます。

 もうふたつ例を用意したのでご覧ください。まずはZOOM。

 腕を一度上げてから振り下ろす振付です。しっかりと肘が伸びるまで腕を上げているのが見えるでしょうか。また次の腕を開く動作が映えるように、手を中心にそろえているのがわかります。そしてそのあと、振り下ろすさいには腕をはっきりと体の横まで開き、わずかな間ですが一度静止しています。一瞬の動作を実に細かく作りこんでいるのがわかる一例です。

 次にDUNK。

 ダンスブレイクの一部をご覧ください。向かって左斜め上にパンチ、左横にキック、右斜め上にパンチ、右真横に肘。そのすべての動作が的確に、かつメリハリを持って力強く踊られています。いずれも腕を伸ばし切った瞬間、肘を突き出した瞬間にアクセントがあります。

 また、すこし脇道に逸れますが、うしろのユウトを見てください。ハルトと角度やタイミングがぴったりそろっています。ユウトもダンスが上手い、というのはもちろんなのですが、ここまでそろえるには意識的に練習しなければ無理です。彼らが群舞をそろえることを意識して練習しているのが垣間見えます。

 閑話休題。このように、ひとつひとつの振付を彼なりに解釈し、丁寧に踊るのが彼のスタイルだと思います。ヒップホップに正解はありません。けれど彼は、彼なりに正解を探り「自分で決めた正解」にぴったりと体をはめるように踊ります。それは、バレエですべての動作を丁寧に踊ることを学んだ人の踊り方のように私には思えます。だから彼のダンスはどこで止めても美しいのではないでしょうか。


ぶれない腕や軸

 ただし、「正解」を自分で決めることはできてもそれを正確に遂行するのは実は困難です。

 手を素早く振りまわしてから真横でぴたりと止めてみると、意外と腕がぶれるのがわかると思います。

 こういうところにも慣性は働くわけですから、腕がぶれないようにするには訓練が要ります。ハルトのダンスを見ると、腕のぶれが非常に少ないことがわかります。前掲したHere I AmやDUNKではそれが顕著に見えます。ハルトは四肢のコントロールに卓越しています。

 ぶれないのは腕だけではありません。こちらをご覧ください。

 下半身を力強く動かしているとき、上半身がほとんど動いていないのがわかります。この軸の強さは驚異的です。この「上体をぶらさない」ということを、ハルトは多くの場面で意図的に行なっているように見えます。ぶれてもいいところでもぶらさないんです。

 軸がぶれないから上体がぶれない。だからハルトのダンスは非常に見やすいです。これも、彼のダンスがどこで止めても綺麗な理由のひとつだと思います。


姿勢の良さ

 上記とも関連しますが、ハルトはとにかく姿勢がいいです。これもおそらく、バレエを学んだことに由来するのではないかと思います。

 ただ、ヒップホップを踊るときには「姿勢の良さ」が仇になることも多いです。実のところ、バレエを学んだ人間の多くがヒップホップで躓く理由のひとつが姿勢です。「背中を丸める」ということができないのがバレエダンサーです。ヒップホップの基礎の基礎である「ダウン」ができないんです。

 ハルトは、経歴から言うとヒップホップを学んだあとにバレエを学んでいるので、この「姿勢の良さ」が仇になっている印象を受けません。むしろ自分の個性として姿勢の良さを昇華しつつ、必要な場面では適切に背中を丸めています。

 わかりやすいのがSuperCharger。この動画を見てください。

 移動のときは猫背になっていますが、踊り出すと背筋が伸びています。「姿勢が良い」のはもちろんなのですが、ハルトの本当のすごさはこの「姿勢の切り替え」にあるのではないかと思います。

 また、この場面では同じ「身を屈める」という振り付けでも背筋を伸ばしたままウンギたちの腕の下をくぐっているのがわかります。見え方にとことんこだわって、その都度最適な姿勢を模索しているのではないでしょうか。

 このように、ヒップホップの姿勢も使いつつ、背筋を伸ばしたほうがきれいに見えるところでは肩甲骨を下げて良い姿勢を保つ。それがハルトの踊り方だと思います。ちなみに「肩甲骨を下げる」というのもバレエの基礎で、これが自然とできているからハルトはただ立っているだけでもとても姿勢が良く見えます。


ターンのキレ

 ハルトのターンが好きだという方も多いのではないでしょうか。

 ハルトはいつもとてもキレのいいターンをしますよね。その美しさには理由があります。これに関しては断言できます。今まで言ってきたことはすべて話半分で聞いてほしいのですがこれだけはガチです。

 ハルトのターンをいくつか集めたので、スローで見てみてください。左回り、右回り関係なく、すべてのターンで彼がギリギリまで顔を正面に残しているのが見えると思います。そして限界まで体が回ると次は顔だけ先に一回転させ、体より先に正面に戻しています。

 これは「顔をきる」というバレエ、ジャズダンスの基礎的な技術です。美しく回るため、そして何十回も続けて回るためにバレエでは顔をきることを最初に学びます。

 顔をきることでターンに勢いが生まれますし、目が回らないのでターンのあとぴたりと止まることができます。この顔をきるという技術をヒップホップにも応用しているため、ハルトのターンはいつも美しいのだと思います。


 いかがだったでしょうか。ほかにも好きなところはまだまだあるのですが、バレエ的な視点ということでこのへんで終わりにしておきたいと思います。

 冒頭にも言いましたが、私の言ったことが正しいとは限りません。ただ、私は私なりにハルトのダンスをこんなふうに見ています、というのをお話してみました。

 みなさんのハルトのダンスの好きなところもぜひ教えてください。

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