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兵庫県立美術館『李禹煥』
1/12 兵庫県立美術館で開催中の『李禹煥』展へ行ってきました。
もの派といえば一年ちょい前の国立国際美術館のコレクション展でちらっと見ただけで、展示作品は覚えてないけど写真で見た《位相─大地》は印象に残っている……というくらい。正直難しいような、難しくないような、訳のわからないイメージ。
だったけど、今回のはぜんぜん難しくないし面白かった!
やっぱ一年前は難しく考えすぎてたんだな〜て反省しました。見たままでいいんですね。でも見たまま感じるというのが意外と難しいんですよね……笑。それをするためには知識がないと。一年前は知識もなしに難しく考えようとしてたので駄目だったんだろうなと思います。
その意味で今回は音声ガイドを聞いてよかった展覧会でした。ときどき600円払ってほとんどキャプションと同じことしか言ってないな……? みたいな音声ガイドもありますが、今回はキャプションがついていなかったし、作家本人の解説も聴けるし、すごく価値のある音声ガイドだったと思います。このクオリティのものが無料って……? とびっくりしましたが、それだけこのガイドを聴いてほしい! という熱量がキュレーターさんたちの間で大きかったのかな。
「もの」と「もの」の関係項。異なるもの同士を配置したときに起こる響き合い。その言葉通りのものをダイレクトに感じました。意味を論理的に考えるというよりは肌感覚でわかるといったほうが近かったです。
でも「意味やイメージからの解放」ってちょっと難しい言葉じゃないですか? 李禹煥の作品は哲学的なところもあるとか、もの派はコンセプチュアルアートの側面もあるとか言いながら「意味からの解放」って……。言葉が逆に難しさをはらんでいるような気がします。
見ているうちにこの言葉の意味もわかってはきましたが、最初は意味がないのに哲学的ってどういうこと? と混乱しました。意味がない、というのはたぶんコンセプトや思想がないというのとはまったく別の次元の話なんですよね。
この「意味」よりは「感覚」で作品を経験する、というスタイルは、同時代の「具体」と少し似ているようにも思います。作品の作り方や見た目はまったく違うのに不思議ですね。
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2022年
アクリル絵具/カンヴァス
作家蔵
最後の《応答》シリーズがすごく面白いなと思ったんだけど、李禹煥自身が「絵画の新しい地平を切り拓いたと自負しております」て言ってて、ああいいなと感じました。作者がそう言ってくれると安心して見られます。
でもやっぱりあの見てるだけでごーんと響いてくる感じは美術館で見ないとわかんないので、絵画なんだけどインスタレーションなんだなあ……! て撮った写真をあとで見て思いました。単純なストロークと余白ばかりのキャンバスからたしかに空間を揺らして肌に伝わってくるものがあって、その波動が四方からやってきて展示空間を満たしている感覚。おもしれ〜
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2022年
ステンレス、糸
作家蔵
彫刻だと新作の《関係項─無限の糸》が一番好きかもしれないです。糸を下のステンレスに接着せずに垂らしてるだけなのが糸の柔らかさというかある意味頼りなさ? 不安定性を強調してておもしろい。それによってステンレスの硬さと糸の柔らかさの対比が映えていて不思議な余韻を覚えます。
ステンレスに青空が映り込むのもすごくいいですね。「無限」というタイトルがとてもふさわしいように思います。セメントと青空の境界がくっきりとレイヤーに平面化されていて、そこにも対比があるような気がしたり。ステンレスと糸の関係項だけど建築・自然との関係項でもあってすごい。
空間を使った現代アートは見ていて楽しいですね。
現代アートの展覧会は会場が空いててゆっくり見れるからいいなと思いました。混んでる美術館苦手なので……。