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UKハードコア

ここで公開したUKインダストリアルの記事が数日で1万9千以上も見られていたのを知り驚いた。他の記事も1万以上のアクセスがあるが、UKインダストリアルの記事だけ異常に多く、世の中にはUKインダストリアル/ハードコアに興味を持っている人も案外多いんだなと嬉しくなった(実際は違うのかもしれないが、そう思わせて頂きたい)。

UKインダストリアル/ハードコアに関しては本当にキリがないので、前回で終わりにする予定だったが、もう少しだけ個人的な記録を残しておく事にする。実は、近々GHz BlogでUKハードコア関連のインタビュー記事を出す予定なので、それの予習も兼ねてUKハードコアの面白さを共有出来ればと思う。

UKハードコアの核となる部分
UKハードコアとは何なのかと問われれば、ハードコア・テクノのサブジャンルであり、イギリス産のハードコア・テクノのスタイルと言える。UKハードコアはヒップホップのメンタリティが強く反映されたハードコア・テクノであり、それによってプロダクション面においては様々な素材をサンプリングし、ブレイクビーツに重きを置いたプログレッシブでファンキーなトラックが特徴的だ。そして、イギリスらしい反骨精神もしっかりと音に込められており、パンクに近いアティチュードでハードコア・テクノを壊し続けている。UKハードコアのパイオニアであるHellfishとThe DJ Producerがハードコア・テクノ界隈以外からもサポートされているのには、こういった部分があるからだろう。
初期から現在までUKハードコアのトラックにはラップやブレイクビーツのサンプルが多用されているが、そういったヒップホップ的な要素を表面的に使わなくても、UKハードコアと呼べるものがある。例えば、Deathmachineみたいなインダストリアル・サウンドにフォーカスしているアーティストであっても、トラックのコアなパートには、イギリスの伝統的なブレイクビーツ・カルチャーからの影響が混じっており、ベースやサウンドデザインのバックグラウンドにもそれらの文化的背景が透けて見える。それもって、UKハードコアがイギリス以外から生まれづらいのかと個人的には感じている。なんというか、イギリスのダンスミュージックの下地の深さは本当に根深い。

ブレイクビーツや音数と展開の多さ/複雑さという点では、ブレイクコアやクロスブリード/ハードコア・ドラムンベースのファンにもUKハードコアは人気である。個人的には、Mix Master Mike、Q-Bert、D-Styles、Kid Koalaの初期作品やBomb Hip-Hop Recordsの『Return Of The DJ』シリーズなんかのクレイジーなターンテーブリズムとも非常に近い音楽だと思う。ターンテーブルを楽器として既存のレコードを解体し、音を重ねまくったコラージュ感の強い、だけどファンキーで歪なグルーブのあるターンテーブル・ミュージックとUKハードコアには共通点が多くある。


UKハードコアを形成する要素を紐解いていく前に、まずはUKハードコアそのものに触れてみるのが良いと思う。捻くれた考えであるが、敢えてUKハードコアのクラシックを聴くよりも、UKハードコアという音楽を最も解りやすく感じ取れるDJミックスというフォーマットを先に紹介したい。
UKハードコア・アーティスト達のDJミックスはトラックと同じ位に独創的で、一人一人の個性がハッキリと出ている。そして、UKハードコアだけではなく、ジャングルやドラムンベース、ブレイクコア、ベースミュージックまでミックスしており、それはまるでUKハードコアのトラックと同等にミクスチャーでハイブリッドだ。UKハードコアだけがミックスされたDJミックスよりも、それ以外のトラックを使ってUKハードコアのメンタリティを表現しているミックスにこそ意味があるのではないかと思う。

Hellfish – Chained Evil
2012年にPsychik GenocideからリリースされたMix CD。現在はアップルミュージックやSpotifyでも聴く事が出来る。スクラッチなどを交えながら自身のトラックを中心にThe DJ ProducerやBryan Fury、DolphinなどのUKハードコア勢とThe Outside Agency、DJ Akiraなどのオランダ勢のトラックもミックスしている。時期的にはPRSPCT XTRMがUKハードコア/インダストリアルを本格的に扱う前であり、HellfishはAxe Gabba Murda Mobでのハードでスカムなハードコア・スタイルに特化していた頃で、2000年代に比べると外部のシーンとの交流が減っていた様に見えるが、この時期のUKハードコア(20010年から2012年前後)はかなりおもしろいのが多い。そんな時期のUKハードコア・トラックが綺麗にまとめられている。

The DJ Producer - SHUT UP & DANCE BEFORE THE POLICE COME
UKハードコアにとって最も重要なブレイクビーツ・ハードコアを深くまで体験出来る最良のミックス。ハードコア・テクノではないが、UKハードコアを理解するには歴史とサウンドの両面で、ブレイクビーツ・ハードコアは絶対に無視出来ない。90年代のリアルなRaveシーンでブレイクビーツ・ハードコアを扱っていたThe DJ Producerだからこそ作れる素晴らしいミックスで、これを聴けばUKハードコアの神髄を理解出来るはず。

The Teknoist - Filthcast 027
UKハードコアの第二世代的な立ち位置になると思われるThe Teknoistのミックス。これはハード・ドラムンベース/スカルステップ・シーンで人気のポッドキャストFilthcastで公開された。クロスブリードの原型を作ったのはThe Outside AgencyとThe Panaceaであるとされるが、The Teknoistもかなり早い段階でUKハードコアとドラムンベースをミックスしたトラックを制作しており、DJミックスでもその二つを掛け合わせていた。ジャンルを横断する選曲もUKハードコアらしさがある。

Dolphin - Deathchant Classics Mix
90年代からHellfishとThe DJ Producerと共にUKハードコアを形作ったDolphinがUKハードコアの名門レーベルDeathchantの音源を使って作ったミックス。数ある名曲の中からバランスよく選曲していて、古い曲と新しい曲を上手くミックスし、改めてDeathchant/UKハードコアの魅力に気づかせてくれる。

The DJ Producer - Industrial UK Hardcore Turntable Mix - 100% Vinyl Only
90年代後半から2000年前半にCorrupt、Headfuk、Pacemaker、Social Parasite、EpileptikといったレーベルからリリースされていたUKハードコア/インダストリアルのレコードを一気に体感出来る貴重な内容。フランスやオランダのインダストリアル・ハードコアやフレンチコアを吸収し、ハード・ドラムンベース/テックステップと共鳴しながら鋭さを増していったUKハードコアの歴史の一部が垣間見える。The DJ Producerの百戦錬磨のDJプレイをじっくりと見て分析するのにも最適だ。


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