HARDCORE ASSOCISTION対談(Miyuki Omura x DJ OFFt x Sabjekt)
メインストリーム・ハードコア、インダストリアル・ハードコア、フレンチコア、クロスブリードに特化したイベントのオーガナイザー達が集結して始まった次世代ハードコアの祭典HARDCORE ASSOCIATIONの第二回目が今週土曜日に開催されます。
今回はHARDCORE ASSOCIATIONの運営人であり、オーガナイザーとしても活動されているMiyuki Omuraさん、DJ OFFtさん、Sabjektさんに対談形式でインタビューをさせていただきました。
Miyuki Omuraさんはハードでダークなサウンドをベースとしたアンダーグラウンドなダンスミュージックを提供するMANTLEの運営に関わられ、DJ OFFtさんは日本独自の視点からハードコア・ガバの多様性にフォーカスしたBlackBoxをオーガナイズされており、Sabjektさんはメインストリーム・ハードコアを中心としたRiot Symbolzとフレンチコアに特化したThe Frenchcore Connectionというパーティーをオーガナイズされています。
それぞれ世代とジャンルが微妙に違いながらも同じ情熱と愛情を持って国内ハードコア・シーンを盛り上げている三人にオーガナイザーの視点からいろいろとお話をしていただきました。
このインタビューを読めば、HARDCORE ASSOCIATIONという新たなハードコアのムーブメントに参加したくなると思いますので、興味が沸いた方は是非とも足を運んで実際に体験してみてください。
2024年10月5日
HARDCORE ASSOCISTION feat. Tripped
at Circus Tokyo
https://circus-tokyo.jp/
OPEN 14:00 CLOSE 21:00
ADV: ¥3,500 +1D
DOOR: ¥4,000 +1D
TICKET
https://miyukiomura.stores.jp/
【Main Floor】
Tripped
Hammer Bros(Live)
Coakira(Live)
Miyuki Omura
Bishamon
Crossbreed 4 Headz
Dark Archivists
Duplex Insurrection
Shimon_Harbig
【Second Floor】
181
Balalaika
ELVON
N4Gi
Reverse16
Sho–nan
Veronica
2010 年より地元静岡、そしてイギリスを経て、現在都内を中心に国際的に
活躍中のインダストリアルハードコア・テクノ DJ/プロデューサー。
活動当初から自身が目指すハードコアスタイルを摯実に突き詰めたDJプレイがアンダーグラウンド・ハードコアシーンで支持され、2022年にはDJ
Promo率いるThe Third Movementから1st EP「Perfect Education」を発表。同年、オランダの老舗インダストリアルハードコア・イベント「Club r_AW」に出演を果たす。
2023年にはPRSPCT Recordingsより初の12"レコード「That’Me EP 」を発表。同レーベルが主催するインドア・フェスティバル PRSPCT XLのメインステージに抜擢され、数千人のクラウドをロックした。
硬質でエモーショナルなインダストリアルハードコアを主軸にメインストリーム~ミレニアム~UK ハードコア~ドラムンベース~テクノ~ブレイクコアの影響を消化して作られた彼女のトラックは、ダンスフロアの欲望を満たす完璧な作用をもたらしており、ハードコア・シーンを越えて様々なジャンルのDJ達に重宝され、世界中のクラブやフェスティバルでプレイされている。
2014年より茨城県つくば市にて活動を開始。2015年より、歪んだキックに重点を置くメインと、休みつつ話せるラウンジの2フロアパーティーBlackBoxを開催。Hardcoreのサブジャンルを広くまたいで、節操のない雑食プレイを展開している。
Sabjektは都内を中心に活動しているHardcore/Mainstream Hardcore,Euphoric Frenchcore Producer/DJ。幼少期から映画音楽を好んで聴いており、硬質なキックに映画音楽を彷彿とさせる壮大なメロディ、ブレイクを織り交ぜたスタイルが特徴。 Hardcoreイベント「Riot Symbolz」、Frenchcoreイベント「The Frenchcore Connection」の主催としても活動しており、全てのHard Danceリスナーが心の底からHard Soundを楽しめる空間作りを指針に活動している。2024年には共催イベントHardcore Association初回のHysta来日に参加し、初めて来日公演運営に携わる。 また、DJ Distortion(from RTC),Tha Playahといった本場のHardcoreトップアーティストからW&W,Ben Nicky等ダンスミュージックを代表するアーティスト来日公演のサポートとして出演。ジャンルの垣根を越え幅広く活躍している。
Hardcoreとの出会い
Q.まずは皆さんがどうやってHardcoreに出会い活動を始めて行かれたのかを教えてください。
Miyuki Omura(以降M):地元静岡のクラブに遊びに行ってみたらすごくハマってしまいクラブ通いが始まって、そこから東京のパーティーにも頻繁に行くようになりました。Hardcoreとの出会いは、渋谷でやっていたオールジャンルのイベントで、偶然DJ KanonさんがGabberをプレイされていて、それを聴いた瞬間すぐにこの音に惚れ込んでいました。その後、Kanonさんとお話させてもらえるようになり、Gabberについて教えていただいて。
最初に興味を持ったのは今でいうMillennium Hardcoreでした。日本でHardcore関連のCDを買えることを知らなかったので、海外通販でCDを購入し、自分に合うスタイルのアーティストを探してました。その頃、静岡でHardcoreをプレイしているDJが少なかったので、自分でやらないと好きな音が聴けないと思いDJを始めました。
Q.東京で活動を始められたのはいつ頃からだったんですか?
M:2010年くらいだと思います。その頃、東京のHardcoreイベントにほとんど毎月静岡から遊びに行っていたんですけど、そしたらKanonさんがパーティーに誘ってくれて東京でもDJをやらせていただくようになり、Hardcore好きの友達や先輩が出来て、その流れでNitro-Xというイベントのクルーに入れてもらいました。
私が関わっていたパーティーはMainstream Hardcoreを主体にナードコアやSpeedcoreもあってクロスオーバーな内容でしたね。
Sabjekt(以降S):僕は中学生の頃に音ゲー(リズムゲーム)でt+pazoliteさんやRoughSketchさんの曲を聴いてHardcoreを知りました。初めて行ったパーティはTANO*C TOUR2016で、そこで見たkenta-v.ez.さん、Noizenecioさん、MyosukeさんのDJに衝撃を受けて、歪んだHardcoreという今の方向性が定まりました。そこからハードコアについて調べていたらHARDGATEの存在を知って。当時、HARDGATEはブログで海外のハードコア・プロデューサーやジャンルについて詳しく紹介してくれていたんでそれを読んで勉強してました。初めてHARDGATEに行ったのはNoize Suppressor来日のHARDGATE 04です。こうした経緯を経て自分もHardcoreのDJをやってみたいと思い、活動を始めました。元々、音楽を作ってみたいとは思っていたんですがお金が無かったので真っ先に始められるのがDJだったので勢いで始めました。
オーガナイザーになろうと意識したのは2019年辺りからなんですが、その後すぐコロナになってしまって歪んでいるHardcoreのパーティーが無くなってしまって。それで自分でやってみようとおもったのがキッカケです。
Q.DJではどんなジャンルをプレイしていたんですか?
S:最初からMainstream Hardcoreをプレイしていました。メロディのあるHardcoreが大好きなのでEuphoric Frenchcoreに出会ってからはそっちにも惹かれて行って、今はその二つを主体に作曲/DJ/オーガナイズをやっています。
DJ OFFt(以降D):自分もSabjekt君とほとんど同じです。音ゲーがキッカケで歪んでいるHardcoreを知ったんですが、多分僕と同じ位の世代の人達は音ゲーが(Hardcoreの)入口になってることは多いとおもいます。Revengeさんが作られた「ギガデリ好きなやつちょっとこい」という動画があったんですが、これは音ゲーでGabbaやHardcoreを知った人達に向けて海外のHardcoreを紹介してくれる動画でして。これを見るようになってから海外のHardcoreも聴くようになっていきました。
あと、同時期くらいに東方Projectという弾幕シューティング・ゲームの二次創作にも触れていて、ゲームの中で使われている曲のアレンジを担当されていたmoroさんという方が歪んでいるほうのHardcoreを作られていて、moroさんの曲に感動したのも大きかったとおもいます。
Q.moroさんはどんなスタイルのHardcoreを作られていたんですか?
D:moroさんは幅がとても広くてMilleniumからSpeedcoreまで作られていました。その影響もあって特定のジャンルへのこだわりがあるというよりもキックが歪んでいて重ければなんでも好きになり、僕のDJスタイルもそういった感じになりました。
その当時はストイックな方向性のHardcoreパーティーが多い印象で、なんというか…ちょっと怖い感じがあって気軽に遊びに行けない感じがしたんです。なので、Hardcoreに興味はあるけどパーティーには慣れていない人がフラっと遊びに行けるような行きやすいパーティーを作ろうとおもったのがキッカケでBlackBoxを始めました。
S:僕が高校生だった頃がまさしくそんな感じでした。未成年が行けるパーティーも少なかったし。OFFtさんのBlackBoxにはお客さんで何回か遊びに行かせて貰ってました。国内のコアなHardcoreアーティストも見れるし、TAKU INOUEさんとか普段Hardcoreパーティーでは見れないような方も出られてましたよね。そういった幅広いラインナップだったのもあって行きやすい雰囲気がありました。OFFtさんの目指していたパーティーの方向性と、僕みたいなお客さんの気持ちは同じだったと思います。
Q.行きづらいとはどんな感じだったか覚えていますか?
D:なんというか…治安悪そうでちょっと怖い人が多いのかなと思っていたのは正直ありました(苦笑)。
M:多分、私は怖いと思われていたパーティーに出てた側なんですけど(笑)。どういう部分が怖く見えたんですか?
D:多分、自分が怖いと感じていたパーティーはイメージ作りとか、音の方向性がストイックだったので職人的な感じが怖そうに思えたのかも。今となってはそんなことはないんですが、その頃はHardcoreのパーティーに慣れていない時期だったのもありましたね…。
S:僕の場合は日本のHardcore、所謂J-Coreと分類されるものが好きでそこに寄っていたのもありますが、当時はSNSが今のように発達していなかったのもあって情報がそんなに入ってこなかったのが大きかった気がします。それによってジャンルごとに距離を感じてしまうというか…分からないことが多いので行くのを悩む。今はXやInstagramでパーティーの雰囲気とかが見て伝わりますよね。Industrial HardcoreやTerrorcoreは日本でも海外でもより深いところでHardcoreを求めている人達が好きになるジャンルだと思うんですけど、そういったストイックな部分と情報の入手経路の多くがTwitter(現X)からだったことが、足を運ぶ機会にあまり恵まれなかったのかなと思います。
M:私の場合は(そういったイベントは)自分が1番好きな音が聴けるイベントだったので、楽しみすぎて行きづらさはなかったです。ストイックな音で集客を増やすには、繋がりのない方や、クラブイベントに慣れていない方にも気軽に来ていただけるような雰囲気作りが必要かもしれません。
Hardcoreの分類/日本独自のクロスオーバー
Q.先程から何度か出てきていた「歪んでいるHardcore」というのはGabbaから派生したHardcoreというのは分かるのですが、逆に歪んでいないHardcoreというのがあるんでしょうか?
S:一般的にはUK/Happy Hardcoreのことを示しますね。オランダやイタリア等本場EUのシーンだと大抵の場合はHardcoreというとキックの歪んでいるほうで通じるんですけど、日本の場合だと通じないことが多々あるので。
例えば、XでHardcoreという単語だけ使うと伝わらないことが結構あります。Mainstream Hardcore、もしくはGabbaという言い方をすると、そこでお互いのHardcoreの意味が一致することが多々あります。
D:UK HardcoreやHappy Hardcoreとかのキャッチーなメロディが鳴っていてキックが歪んでいないほうのHardcoreは日本でもシーンとして大きいので、Hardcoreと一括りにすると日本の場合はどこを指しているのか明確に定義出来ないというのがありまして。元々、日本のHardcoreシーンの成り立ちが特殊で昔からGabba派生のHardcoreとHappy Hardcoreが近いところにありましたし。
Q.日本のHardcoreパーティーの特徴として様々なジャンルを取り入れたクロスオーバーな内容のものが多い印象があるのですが、これについてはどう思われていますか?
D:熱心に一つのジャンルを好きという人も沢山いますが、どちらかというと一つのジャンルだけではなく、Hardcoreを幅広く好きという人は海外より多いような気がします。Sabjekt君はジャンル特化のパーティーをやっていてどうおもう?
S:僕がオーガナイズしているFrenchcoreのパーティー(The Frenchcore Connection)はジャンル特化型ではあるんですけど、Radiumのような硬派なものからDr. PeacockやSefaみたいなEuphoricまであって、Frenchcoreという縛りの中でいろいろなスタイルを扱ってます。個人的な印象では、一つのジャンルしか聴かないという人は自分のパーティーには少ないとおもいますね。
M:お二人のパーティーに来るお客さんは許容範囲が広い方が多いですよね?
S:僕とOFFtさんのパーティーはMainstream Hardcoreを主体としながらも幅広くやっているので、同じような気持ちでHardcoreに接している人が来てくれている気がします。
D:BlackBoxはHardcore以外のジャンルでHardcoreをプレイするDJをお呼びしたりするので、ストイックにHardcoreを聴きたい人には向かない部分はあるかも。
S:前回のRiot Symbolsではt+pazoliteさんとRoughSketchさんが出演してくれたので、音ゲーやHARDCORE TANO*C周辺が好きな人も来てくれていましたし、MiyukiさんとQuarkさんもお呼び出来たので普段はMainstream Hardcoreや音ゲーを聴いている人達にIndustrial HardcoreとCrossbreedに触れて貰えました。
当日のフロアの雰囲気やXでの反応をみると、来てくれているお客さんは純粋にいろんなスタイルのHardcoreを楽しもうとしてくれているように思えました。Riot Symbolsではそういったキッカケが作れたらと意識しています。いろんなスタイルのHardcoreが聴けるパーティーを探している人にとって、自分のパーティーが選択肢の一つとしてあったら嬉しい。
M:私の場合は自分の中に一貫した軸があって、ダークでハードでグルーヴィーなものであればBPMやジャンルは気にしません。DJプレイやパーティーの趣向もそんな感じで。でも、これは基本的に深くダンスミュージックが好きな人じゃないと反応しない部分だと思っているので、自分のやりたいことを理解してもらうのは難しいですね。
私は自己表現としてDJやパーティーをやっていたんですけど、最近になってイベントはお客さんの為にやるものだと価値観が変わってきて。出来る限り需要に応えないといけないというか…。自分の為だけにやるのは違うと感じてきています。OFFtさんとSabjekt君から色々と学ぶことが多いです。
S:日本と海外の決定的な違いがあるとすれば、敢えて言いますけど歪んだキックを用いたHardcore全部が一つのカルチャーとして纏まっていることじゃないかと思います。そのカルチャーの中でみんな繋がっているように自分は感じています。
コロナ過/海外のHardcoreフェスティバルからの影響
Q.皆さんコロナ過はパーティーのオーガナイズはどうされていましたか?
S:僕はその時期と重なるようにオーガナイズを始めてまして(笑)。とにかく、そのときは忙しなかったですね…。コロナの感染状況によって東京都の条例が変わるので、急にパーティーが開催が出来なくなる可能性が常にあって。そういった不安要素におびえながらオーガナイズをやっていました。今はそういった心配がないのでそこは安心してオーガナイズできます。
D:僕達も(コロナで)パーティーが開催できなくなって大赤字になったりとかしました。BlackBoxがお世話になっている中野heavysick ZEROもコロナで存続が危ぶまれていたので無観客の配信イベントを作って還元出来るようにして。ある程度落ち着くまではお客さんを入れてのパーティーはやってませんでしたね。
M:コロナが始まった瞬間くらいにMANTLEの第一回目がありました。緊急事態宣言が始まる直前だったので、そのときはマスク着用くらいでした。MANTLEに関してコロナの影響はあまり受けずに開催出来ていましたね。私個人としては配信イベントに呼んでいただいてDJをさせて貰うことは多かったです。
Q.OFFtさんとMiyukiさんは海外で開催されているHardcoreのフェスティバルに行かれていますが、その経験はご自身のパーティー・オーガナイズにどのような影響をあたえていますか?
D:始めて遊びに行ったのは2016年のDOMINATORだったんですが、とにかく規模の大きさに驚きました。凄い数の人達がずっと踊っていて、あの規模であれだけの人数がHardcoreで踊っているのが衝撃過ぎて(笑)。日本では見れない光景でしたね。
そこから得た経験としては規模は同じにならなくてもいいので、ちょっとでもHardcoreを好きになってくれる人が日本でも増えるよう(Hardcoreを)まだ知らない人にも届けられるよにしよう、というモチベーションは上がったかもしれません。
M:私は2012年のThunderdomeが最初でそこからコロナ前まで毎年海外のフェスティバルに行くようになりました。Hardcoreのフェスティバルは最高なんですが、エリアごとの移動に時間が掛かってしまうのもあって自分は中規模のイベントが一番好きです。中規模くらいのイベントで集中して音を浴びるのが自分には合ってるかなって。
オーガナイズに反映されている部分としては、フェスティバルに行くとその音楽を好きな人だけが集まっている訳ではなく、友達とはしゃぐ為に来ている人も多くて。コアなヘッズにはもちろん来て欲しいですけど、そういった普通の人にも足を運んでほしいという考えになったかも。HARDCORE ASSOCISTIONはいろんなバックグラウンドや経験を持ったオーガナイザーが居て、みんなの意見を取り入れていけば新しい視点やアプローチを生み出せるので、理想に近づくと思うんです。自分だけでは絶対にそうはならないので。
オーガナイザーとしての想い
Q.Hardcoreというジャンルを扱うことで苦労することなどはあったりしますか?
D:うーん…正直あんまり苦労したことはないですね。赤字でも気にしていないし、そもそも利益は考えていないです。Hardcoreというジャンルだけが抱えている問題というのは無くて、どのジャンルのパーティーでも抱えている悩みは似ているとおもいます。
S:日本の場合はそもそもがクラブシーンがジャンル特化だと難しい部分があります。大元の日本のクラブシーンの規模が世界的には小さいほうなので。だから、日本でクラブイベントをやる時点でどのジャンルのイベントでも似たような悩みがあると自分は思っています(苦笑)。他のジャンルのオーガナイザーさんとお話をすると皆さん悩みは似ています。それぞれ自分が出来ることにベストを尽くしてると自分は考えています。
M:私の場合は凄く苦労していて(笑)。Early HardcoreやMainstream Hardcoreは先輩方が絶え間なく広めてくれたおかげで、ある程度のリスナーはいるんですが、Industrial Hardcoreはまだ全然少なくて…。(そもそも万人受けする音ではないですし)
7月にMokum Recordsの30周年記念イベントをオーガナイズさせてもらったときに思ったんですが、GabberやEarly HardcoreはDJやプロデューサーが国内で確立されていますよね。Industrial Hardcoreの場合、まずこのジャンルの説明をするところからやらなくてはいけないし、DJとプロデューサーも増やしていかなくちゃいけない。それが結構苦労してますね…。オーガナイズだけではなく、今後レーベルもやる必要があるし、これからシーンを作り、定着させるところなので。
S:僕個人としてもMainstream HardcoreやJ-CoreのリスナーにIndustrial Hardcoreを聴いて興味を持って欲しいとおもってます。クラブという環境で聴けば雰囲気も含めて(インダストリアル・ハードコアの)良さに気づくはずなので。
Q.コロナ過を経てHardcoreのパーティーは増えて来ている印象があるんですけど、それによってブッキングやコンセプトなどが被ってしまうことも起きそうだなとおもうんですが、現状はどんな状態なんでしょうか?
D:昔はオーガナイザー同士でパーティーの予定を入れるカレンダーはあったんですけど、コロナで立ち消えてしまって…。仲の良い人達ではスケジュールは共有出来ているとはおもうんですけど、オーガナイザーのコミュニティみたいなのがあればもっと良くなりそう。
M:パーティーが沢山あり、シーンが盛り上がっているのですごく良いことだと思います。一方で、Hardcoreに関しては来てくれるお客さんの分母が急激に増える訳ではないので、とくに地方の方や学生さんは行きたくても金銭的に難しい状況があると思います。
可能な限り関係者と情報をシェアして調整していければ皆の為になると思います。とくに、海外ゲスト招聘のイベントには被らせないようにするとか。。赤字だと続けていくのが大変なので。でも、やることが多くて実際そこまで動けないのが現状なんですが(笑)。
Q.パーティーを作るにあたってオーガナイザーとして大事にしていることはなんですか?
S:OFFtさんから学んだことなんですけど、出来るだけ気軽にこれるようなパーティーにしつつ、Hardcoreというのは守りたい。そこはぶれずにやっていきたいです。
D:自分はプレイしているときだけじゃなく、フロアにいるときも楽しそうにしていようとおもっていて(笑)。始めて来てくれている人達に対して、僕達が遊んでいるところを見て貰ってちょっとでも楽しそうと思って貰えたら嬉しいです。お一人で遊びに来られていて話しかけてもよさそうな方には話しかけますし、楽しい雰囲気を作っていけたらと。
S:OFFtさんは僕の友達に来日していた海外アーティストのグッズを物販で自腹で買ってプレゼントしていて凄いなって(笑)。楽しい雰囲気を作ったり、共有したりするのは大事ですよね。
音ゲーだけじゃなく今はサブスクの影響もあって日本でもHardcoreという単語が昔より広まっていますが、クラブで聴くHardcoreの良さをまだ体感したことがない人がまだ多くいると考えています。クラブに来たことのない人達に対してどうアプローチしていくか、一度来てくれた人にまた遊びに来て貰うにはどうしたらいいか、そういったことを考えるのが大事になりそうです。
M:あまりネガティブなことは言いたくないのですが、実際クラブイベントでセクハラやモラハラを受けた経験があるので、そういう状況を少しでも減らしたいと思っています。もしもそういった問題が起きたら被害者に寄り添い、相談しやすい環境を作っていきたいです。
あとは、自分と同じような情熱を持っている人と協力してパーティーを作りたいと思っています。日本の場合はイベントで黒字を出すことは難しいので、ビジネスとして成り立ちません。ですので、一緒にやって良かったと思える人と出来れば、やりがいや自分の幸せに繋がります。また、海外ゲストを招く回は特に文脈を意識してブッキングします。ずっとそのジャンルで活動してきた人が報われてほしいですし、それが一番文化の発展に繋がると思っています。日程や予算等の関係で出来ないこともありますが。。
Q.Miyukiさんはパーティーはお客さんの為にやっているとおっしゃっていましたが、実際にご自身の自我みたいなのはどれ位オーガナイズに反映されているんでしょうか?
M:MANTLEだったら妥協なしに好きなことだけやっていて。それに賛同してくれた人が遊びに来てくれたら必然的に良い内容になると思っていました。HARDCORE ASSOCISTIONは規模が大きいのと海外からゲストが来てくれるので、パーティーを成功させることを優先して自分の自我はプレイだけでいいですね。
D:勿論、(オーガナイズは)好きなことなので苦にはならないですが、大変なのは大変なので。お客さんの目線も大切ですけど、自分のやりたいことも同じ位に大事にはしたい。
Q.オーガナイズで苦労する部分とはどんなことでしょうか?また、苦労が報われたとおもうときは?
S:パーティーは準備に圧倒的に時間が掛かるので、それが本当に一番大変。会場を抑えて出演者にブッキングの依頼をして…。一つの連絡だけでも何十人にも連絡するので(苦笑)。
M:準備も楽しめるようにならないとね。
S:パーティーでお客さんが楽しんでくれているのを見たり、楽しかったと言って貰えたりすると本当に報われます。お客さんだけじゃなく出演者の方にも楽しんで貰いたいので、また出たいと言って貰えたら嬉しいのでそういうのが続けるモチベーションになってます。
D:「BlackBoxに遊びに行ってからハードコアを聴き始めました」と言われたことがあって、それは本当に嬉しかったです。そういう人が一人でもいると続けていて本当に良かったとおもいます。
M:一番はお客さんに楽しんで貰うことですね。あと、パーティーがキッカケで繋がりが出来てリリースが決まったりもするので、そういう部分も。
Q.DJとプロデューサーは常に増えているように見えますが、オーガナイザーを選ぶ人はまだかなり少ないんじゃないでしょうか?オーガナイザーを増やす方法があるとすればなんだとおもいますか?
S:一番手っ取り早いのはシーンを大きくすることですかね。自分でもオーガナイズをやってみたいとおもって貰う位に。今は(オーガナイズの)難易度が高いので、シーンが大きくなればあらゆる面で難易度が下がるはず。
M:日本の場合はお金の為にオーガナイズをやっている人は少ないと思う。(パーティーを)やればやるだけお金を失っていくので(笑)。でも、続けていくには負担を少なくさせる為に多少はお金を生まないといけないのもある…。負担が少なければオーガナイザーも少しは増えるかもしれない。
D:あとは小箱でのパーティーにも良さがあるので、10人単位でも好きな人が集まれる場所があればそこから少しづつ増えていくんじゃないでしょうか。
M:そうですね。定期的に開催されているTerrordomeみたいなパーティーは凄く大事でそういった小箱での楽しみを伝えていけたらいいかもしれない。
S:そういった意味では僕のDistorted Cityは気軽に多く開催する為に比較的小さい規模でやっているんですけど、こういう小箱のパーティーでは身近な人同士で集まって楽しくやっているだけでもいいんです。Distorted Cityに遊びに来てくれた人でDJデビューしたパターンもあって、小箱のパーティーは入口になることはありますよね。
M:興味を持ってくれている人に対しては我々がノウハウを伝えていくことで徐々に増えるのかも。
2024年のHardcoreについて
Q.最近注目しているHardcoreのムーブメントはありますか?
S:Millennium Hardcoreのブームですね。例を挙げるとEndymionやArt of Fightersへの注目度が最近になって高まっていて、こういった流れが日本でも起きて欲しい。先日、Tha Playahが来日したときのアテンドを手伝わせて貰って、その際に色々とお話出来たんですけど、Tha PlayahもMillennium Hardcoreの影響がシーンで大きくなっていると言っていました。彼自身もMillenium Hardcoreを作っていたアーティストで、今もその時代の曲をDJで流しています。ちょっと前にNever SurrenderがInstagramのストーリーで「メロディへの反応が大きくなっているのを実感している」と投稿していて。個人的にもメロディアスなHardcoreが好きなので期待しています。
M:Millennium Hardcoreが盛り上がったキッカケはMad DogのDowntempoがあると個人的にはおもっていて。2010年頃はMillennium Hardcoreの時代だったんですけど、あの頃はIndustrial Hardcoreも同じように(シーンで)扱われていました。私と同世代くらいの方は分かってくれるかもしれませんが、Industrial HardcoreとMillennium Hardcoreは近しい場所にあって両方聴くのは普通でした。Millennium Hardcoreが流行ってくれたらIndustrial Hardcoreも元気になりそう。
S:DowntempoはHard Technoと混ざってきてますよね。Mad DogがHard Techno系のパーティーに出ているし。あとはシーン全体のサウンドの変化に限界が来ているようにも見えていて。その反動も少なからずMillennium Hardcoreの再評価に繋がってるんじゃないかとおもいます。
D:ジャンル的な話じゃないんですが、円安が続いているので海外アーティストが来てくれることが多く、今年はあり得ない数の来日ラッシュが起きていました。今後もこういった状態が持続されて欲しいです。
今はサブスクがあれば気軽にHardcoreは聴けるようになっていますが、やっぱりHardcoreはクラブで聴くことで真価を発揮するとおもっています。海外アーティストが日本に来やすい環境が作れるようにオーガナイザーとして受け皿になれる環境と制度を作っていけるようにしたいですね。
HARDCORE ASSOCISTIONのコンセプトとTrippedの魅力
Q. HARDCORE ASSOCISTIONが始まった経緯を教えてください。
D:最初のキッカケはHystaが日本に来ることになってそれをどのパーティーが迎えるのかという話になり、最終的に東京のHardcoreパーティーのオーガナイザーが集まって新しいパーティーを作れば、それぞれのフォロワーに来て貰えるんじゃないかとなって皆で力を合わせてやってみようという流れです。
Q.第一回目はどんなパーティーになりましたか?
S:全体的にずっと盛り上がってましたが、Hystaのときは凄い盛り上がりでした。お客さんの熱気が本当に凄くて合唱も起きてて。普段やっているパーティーよりもさらに一段上の盛り上がりがあった。
D:想像してたいたよりもHystaのファンの方々が来てくれていて、海外のハードコアが好きな人をもっと巻き込んでいけるかもと感じましたね。そこの繋がりを強めていきたい。
M:Rawstyleが好きなお客さんとクラブ慣れしている人が多かった印象です。自分のDJでもみんな踊ってくれて反応が良かった。普段は見かけないお客さんも結構いらしていて楽しかったです。
Q.第二回目はどんな内容になりそうですか?
S:個人的にはHAMMER BROSの存在が大きいとおもっています。Trippedは20周年を迎えられていますが、HAMMER BORSはその遥か昔から活動されていて日本のHardcoreにとっては伝説的な人達です。そんな凄い人達も出てくれるので、若い世代だけじゃなく昔からHardcoreを好きな人達にも遊びに来て貰えるとおもいます。
D:前回は深夜開催だったので未成年は遊びに来れなかったんですが、今回はデイタイムでの開催になるのでいろんな世代の人に来て欲しいです。
S:TrippedはジャンルもBPMも幅広くて進化し続けている。しかも、20周年というアニバーサリー・イヤーでの来日なのでTrippedの歴史を全て体感出来る瞬間になるんじゃないかとおもいます。
D:(Trippedは)Hardcoreのなかでもコアなことをやっていてプレイにおいてもテクニカルなことをされている。それを手元まで見れるくらいの近い距離で体感出来るのはヤバい。海外ではこういった機会は少ないとおもうので。
M:CircusのシステムならTrippedの魅力を存分に引き出せるので、それを体感して欲しいです。
S:CircusはHardcoreの鳴りが特に良いし、雰囲気もHardcoreのパーティーにあっている。そこでTrippedやHAMMER BROSのような歴史あるアーティストを見れるのは最高の経験になると思います。
Q.それでは最後の質問となります。皆さんにとってHardcoreとは存在でしょうか?
D:エネルギーの塊だと思っています。ポジディブな時もネガティブな時も、自分を動かす原動力になってくれるし、何よりクラブで聴いているときにプリミティブな部分に働きかけてきて踊り続けてしまうので。
M:今では自分のアイデンティティの一部になっています。
S:人生を変えてくれてこれ以上なく好きで夢中になれるものです。Hardcoreに出会うまでは特段本当に好き!というものはなかったのですが、Hardcoreは自分にとってあそこまで大好きで長く続いたものは他にないというくらい大切な存在です。今もこうしてHardcoreの活動が出来ているのも本当に好きだから、続けられているのかなと思います。
Miyuki Omura
https://www.instagram.com/miyu_kiomura/
DJ OFFt
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Sabjekt
https://www.instagram.com/sabjektmusic/