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Achim Szepanski(Force Inc. Music Works)の功績

ドイツの最初期RAVE/テクノ・シーンを増進させ、Space Cube( Ian Pooley & DJ Tonka)、Alec Empire、Exit 100(Thomas P. Heckmann)といった大御所アーティスト達のデビュー作を手掛けた伝説的レーベルForce Inc. Music WorksのオーナーであるAchim Szepanskiの訃報が舞い込んできた。

Achim SzepanskiはForce Inc. Music Worksの運営だけではなく、作家/思想家としても多くの人々に影響を与え、電子音楽の進歩に大きく関わった重要な人物。テクノ、ブレイクビーツ・ハードコア/ジャングル、イルビエント、グリッチといったジャンルの歴史を深く辿れば、そこには必ずAchim Szepanskiの存在がある。彼は音楽活動を通じて政治的な姿勢を強調し、商業主義的なメジャー・レーベルに対するアンチテーゼを掲げ、社会問題や人種差別に対抗した。Force Inc. Music Worksとそのサブレーベルは挑戦を恐れず、アーティストのクリエイティビティを信じてその後押しをした結果、世界に名を遺す偉大な電子音楽家達を誕生させてきた。Achim Szepanskiがいなければこれらのジャンルは今とはまったく違ったものとなっていただろう。

Achim Szepanski(Force Inc, Mille Plateaux, Position Chrome), invited me and Justin K Broadrick to play our first ever...

Posted by Bug Man on Wednesday, September 25, 2024

Achim Szepanski RIP Lese gerade das Achim Szepanski verstorben ist. Den meisten hier wird er wohl als Labelbetreiber...

Posted by DJ Tanith on Tuesday, September 24, 2024

Force Inc. Music Works

80年代初頭にP.D.というフリー・ミュージック~サイケデリック~パンク~インダストリアルなどに影響を受けた実験的なバンドにAchim Szepanskiは加入し、そのキャリアをスタートさせる。P.D.脱退後、急成長中であったテクノに注目。Boy Recordsというダンスミュージックに特化したレコードショップのバイヤーとして働くようになり、シカゴ・ハウスのパーティーにも関わる。Boy Recordsではアメリカやイギリスのアシッド・ハウス~シカゴ・ハウスなどをプッシュし、Sven Väth、Heiko M/S/O、Ian Pooley、DJ Tonkaなどがショップに通っていたそうだ。

1989年にはドイツで活動していたドイツ系アメリカ人のハウス・プロデューサーDeskeeのシングル『Let There Be House』とアルバム『Dancetracks』の製作に参加。「Let There Be House」のMusic VideoにはBoy Recordsの店内が映っている。

そして、1991年にForce Inc. Music Worksを設立。第一弾作としてStation 99 feat MC Spee『Rhyme 2 The Rhythm』を発表。立ち上げ当初はヒップハウス~デトロイト・テクノ~アシッド・テクノを軸としたドイツのプロデューサーによるレコードをリリース。フランスの哲学者ジル・ドゥルーズのポスト構造主義から受けた影響を自身の音楽活動に反映させ、当時大きく変化していたRAVE/テクノ・シーンに一石を投じる強烈な作品を発表していく。

Achim Szepanskiのキャリアを見れば解るが、レコード・ショップのバイヤーやパーティーのオーガナイズなどを通じてドイツの最初期テクノ・シーンに関わっており、テクノというジャンルが形成されていく流れにおいて重要な役割を彼も果たしていたと思われる。

1992年にAlec Empireの初単独作『Yobot E.P.』がForce Inc. Music Worksからリリース。この頃を境にブレイクビーツ・ハードコアにも力を入れていき、Alec Empire『suEcide EP』シリーズ、『Bass Terror EP 』『Limited Edition』、Biochip C.『Biochip C. EP』といったドイツ独自のアグレッシブなブレイクビーツ・ハードコアを推し進め、1993年にはRiot Beatsというジャングル・レーベルを設立。ここから枝分かれしていったのがデジタルハードコアであり、ブレイクコアへと発展していく流れを生み出した。

Force Inc. Music WorksとRiot Beatsがリリースしていたブレイクビーツ・ハードコアとジャングルが特殊な攻撃性を持っていたのは、パンク的なメンタリティのもとに政治的なアティチュードが反映されていたのも大きく、ブレイクビーツ・ハードコア/ジャングルは彼等の思想を反映させるには最適なスタイルであったと思う。

90年代初頭ドイツでネオナチの活動が活発化しており、ネオナチによる難民受け入れセンターへの襲撃事件などが起きてしまっていた。Achim Szepanskiはネオナチへの対抗としてForce Inc. Music Worksから1993年にコンピレーション・レコード『Destroy Deutschland !』を発表。Alec Empire「Anti-Nazi-Soulfood」、Nero「Youth Against Racism」、Exit 100「German Nazis Fuck Off!」といった曲が収録されており、彼等参加アーティストとAchim Szepanskiの差別主義者に対する徹底した反対の姿勢が形となっている。

これらの活動から見て分かるように、Alec Empireの核となる部分にはAchim Szepanskiの思想が強く残っており、Alec Empireが音楽家としてだけではなく、アクティビストとして成長する過程においてAchim Szepanskiから受けた影響は相当に大きかったのではないだろうか。

Mille Plateaux

1993年、Achim SzepanskiはForce Inc. Music WorksのサブレーベルとしてMille Plateauxを立ち上げる。Mille Plateauxは実験的な手法と姿勢を重視してテクノやアンビエントに新たな流れを作り出そうとし、イルビエントやグリッチといった異形のスタイルを生み出す要因となった。

Mille Plateauxの名前を広く知らしめたのはコンピレーション・シリーズ『Electric Ladyland』の存在だろう。今作はAlec Empire、Techno Animal、DJ Spooky、DJ Vadim、Spectre、Panaceaなどが参加しており、イルビエントというスタイルを確立させた重要作。『Electric Ladyland』は楽曲のクオリティ、キュレーション、パッケージングの仕方など、非の打ち所がない素晴らしいものであり、今作に影響を受けたアーティストやレーベルは少なくない。90年代後半から2000年代に起きたインストルメンタル・ヒップホップ、エレクトロニカ派生のブロークン・ビーツやグリッチホップの土台となっているのが『Electric Ladyland』なのは間違いないはずだ。いつの時代に聴いても新たな気づきを与えてくれるコンピレーション・シリーズとして個人的にも重宝している。

2000年からスタートした『Clicks & Cuts』というコンピレーション・シリーズではグリッチやIDMといったジャンルにいち早くフォーカスし、今作もMille Plateauxを象徴する作品として高い評価を受けている。他にもAlec Empire、Cristian Vogel、The Sidewinder(Techno Animal)、Porter Ricks、Oval、GAS、Kouhei Matsunagaが素晴らしいアルバムをMille Plateauxからリリースしている。

Achim Szepanskiはレーベル・オーナーとしてだけではなく、作家としても並行して作品を発表しており、2003年にはMarcus S. Kleinerとの『Soundcultures』を出版。以降、『Kapitalisierung』『Der Non Marxismus』という書籍やエッセイ集を出版。これらの一部はForce IncのBandcampにて今も販売中である。

音楽を様々な観点から掘り下げていき、その真価を見出して作品化することに長けていたAchim Szepanskiの功績はドイツの電子音楽界において自分が想像しているよりも大きなものであったと思う。遠く離れた日本の地にも彼の影響は及んでいるはずだ。少なくとも、自分は彼の活動によって多くの学びを得られている。彼が残してくれた偉大なる作品に心から感謝と尊敬を送りたい。

興味を持たれ方は是非Force IncやMille Plateauxのカタログをチェックして欲しい。
https://forceincmilleplateaux.bandcamp.com/music












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