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MOKUM IN TOKYO - 30 YEARS ANNIVERSARY -

オランダの老舗ガバ/ハードコア・レーベルMokum Recordsの設立30周年を記念したイベントが7月13日に中野heavySICK ZEROで開催される。

Mokum RecordsといえばTechnohead「I Wanna Be A Hippy」やParty Animals「Have You Ever Been Mellow」の特大ヒットチューンをリリースしたレーベルとしてガバ/ハードコアのリスナー以外からも広く知られており、ダンスミュージックの歴史において重要なレーベルの一つとして認識されている。印象的な赤いレコード・スリーブやレーベル・ロゴのTシャツなどのグッズも人気であり、Mokum Recordsはガバ/ハードコアのアイコン的な存在として世代を超えて支持されている。

近年のMokum Recordsは日本のハードコア・プロデューサーをフィーチャーしたコンピレーション『Fucking Hardcore Tokyo』を始動させ、M-Projectのアルバム『Over The Top』『Tokyo Gabbers』『Supermax』(M-Project & Kamikaze名義)やシングル『Feel Your Body And Mind』(M-Project & DJ Dynamax名義)を発表しており、先日リリースされたコンピレーション『Acid Special』にはMiyuki OmuraがAlarma Raversとのコラボレーション・トラックを提供するなど、日本のハードコア・シーンとの繋がりを深めており、今後も日本のハードコア・プロデューサーのリリースを控えているという。

上記で挙げた日本人ハードコア・プロデューサーの作品をキッカケに再び国内でMokum Recordsへの注目が高まっていた抜群のタイミングで30周年記念イベントが開催されることになった。去年からスタートしたMokum Recordsの30周年記念イベントはオランダ、ドイツ、スイス、オーストラリア、イギリス、フランスで行われていたが、まさか日本でも開催されるとは思わなかったので驚きである。

『Acid Special』に参加したMiyuki OmuraによってオーガナイズされるMOKUM IN TOKYO - 30 YEARS ANNIVERSARY -はレーベルと所縁のある国内プロデューサーを軸に彼女が信頼を寄せるDJ達が集結。さらに海外からはThe Twins ArtcoreとRHZが初来日し、新旧ガバ/ハードコア・ヘッズにはたまらないランナップとなっている。
Mokum RecordsのオフィシャルTシャツがゲットできる前売りチケットのセットはコチラのサイトにて販売中。受注生産となるのでお早めにどうぞ。

2024/7/13(Sat)
MOKUM IN TOKYO – 30 YEARS ANNIVERSARY –
Nakano heavySICK ZERO
OPEN 14:00 – CLOSE 21:00

ADV: ¥3,500(+1D)
DOOR: ¥4,000(+1D)

【Main Floor】
The Twins Artcore
RHZ
DJ Sharpnel/IRL
Dynamax
Kamikaze
M-Project
Miyuki Omura

【Second Floor】
Dave The 3rd
DieTRAX
Kanon
DJ OFFt
Reverse16
wapico

Mokum Recordsの歴史

1993年にオランダのアムステルダムにて活動を開始させたMokum Records。レーベルの第一弾作品としてDaniël Leeflang(DJ Dano)とDov Elkabas(The Prophet)によるユニットVitaminの12"レコード『The Point』を発表。以降、Vitaminは『Muffin' In Mokum』『De Ongestelde Flamingo』という2枚の12"レコードをMokum Recordsからリリースし、Daniël LeeflangはDJ Dano名義、Dov ElkabasはCookiemunstaやPineapple Jack名義でも12"レコードを残し、Mokum Recordsの活動初期を支えた。

Vitamin『The Point』に続いて、Hooihouse『Pien An De Eure』、Chosen Few『Freedom』、Haardcore『Hakken』、Tellurian『My Name Doesn't Matter』、Lenny Dee & Ralphie Dee『Mokum Traxxx』といった初期ガバ・クラシックを連続してリリース。Mokum RecordsはRotterdam RecordsやRave Recordsと共に最初期ガバ・シーンの土台を作り上げ、第一次ガバ・ムーブメントを盛り上げた。

初期のMokum Recordsはダッチハウスやテクノからの影響も垣間見えるフロアでの機能性を重視したシリアスでハードなガバを展開しており、これらの初期作品は様々なハードコアのサブジャンルに大きな影響を与えていると思われる。
当初から多様なサウンドを受け入れて新たなスタイルを生み出そうとする姿勢が表れており、90年代中頃からはハードなサウンドにフォーカスしつつもTechnoheadやSearch & Destroy(The Speed Freak)によるハッピーハードコアも手掛けていき、多角的にガバ/ハードコアの可能性を押し広げていく。

「Mokum代表のFred Berkhoutは、凄い人物だった。(The Outside Agencyが)契約した当時、MokumはRoadrunner Recordsというインターナショナルなメタルのレーベルの傘下にあったんだ。そんな大手の傘下でも、Fredの思うがままにやって良いという感じだったんだ。FredはとにかくMokumを楽しみながらやっていたし、実験的な音が好きで、そういうアーティストの作品をリリースすることを恐れない人だったから、俺達との相性はばっちりだったね。それによって俺達が何か根本的に変わったということでは無いけど、当時の他のミュージシャンと比べると、実験する機会を多く与えられていた。」

Eye-D(The Outside Agency) インタビュー/『ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編』から

Mokum Recordsはレーベル設立からレイシストやファシストへの反対を強く表明し、レコード・スリーブには「United Gabbers Against Racism & Fascism」 というステートメントを掲げ、Chosen Few 「Chosen Anthem(Against Racism)」やParty Animals「Die Nazi Scum」という曲をリリースしている。Mokum Recordsのステートメントはレーベルの象徴的なものとして認識され、長年に渡ってその活動を持続させている事実はMokum Recordsが人々から称賛されている理由の一つだろう。
一昨年には『United Hardcore Against War - Always Peace』というコンピレーションを発表し、ハードコア・ミュージックを通じてポジティブなメッセージを届けていた。

Mokum Recordsの数多くある功績の中でもTechnohead「I Wanna Be a Hippy」をヒットさせたことによって、ガバ/ハードコアを一般層にまで届けたことが挙げられる。

Cheech Marinが出演した映 画『Rude Awakening』でのDavid Peel「I like Marijuana」を引用したTechnoheadの「I Wanna Be a Hippy」は、1995年に Mokum RecordsからリリースされたTechnoheadの12"レコード『Mary Jane』のB面に収録されていたものがオリジナルであるが、ミュージック・ビデオが作られたFlamman & Abraxasのリミックスのほうが広く知られているだろう。

Flamman & Abraxas、The Speed Freak、DJ Dano & No Sweatなどのリミックスが収録されたシングル『I Wanna Be a Hippy』はオランダ、ドイツ、オーストリア、ベルギーのチャートで1位に輝き、イギリスの有名なTV番組Top of the Popsに2度出演。ドイツでは 25万枚、イギリスでは20万枚の売上を記録し、日本盤CDも作られた。

Technoheadはアルバム『Headsex』というハードコア史における名盤もリリースしており、『Happy Birthday』『Banana-na-na』といったシングルもヒットさせ、Mokum Recordsを代表するアーティストとして活躍していたが、90年代後半から徐々に音楽活動からフェードアウトする。長年のブランクを経て2020年から活動を再始動させ、ブランクを取り戻すかのようにハイペースでシングル/EP/アルバムをMokum Recordsからリリースした。

「僕達は新しいレコードを沢山買って、テクノを中心にDJをするようになって、よりハードでハイスピードなサウンドを聴くようになったんだ。Go Bang Recordsから GTO『Pure』をリリースしたんだけど、それを契約した FreddyBがMokum Recordsを立ち上げた。自分達のハードなスタイルをフィーチャーするためにTechnoheadという名前を使おうと思ったんだ。」

Michael Wells(Technohead)インタビュー/『ハードコア・テクノ・ガイドブック オールドスクール編』

Technohead、Party Animals、Hakketanzといったハッピーハードコアのリリースで商業的な成功を収めながらもMokum Recordsは設立当初から推し進めていたハードでシリアスなハードコアをプッシュし、アメリカのメタル・バンドFear FactoryのリミックスEP『The Gabber Mixes』を手掛け、サブレーベルFukemではよりハードなサウンドにフォーカスしていた。

1997年にはインダストリアル・ハードコア界のトップユニットであるThe Outside Agencyのデビュー作『Break It Down』をリリースしており、続けて『The Case Of The Black Bubbles』『We Are As Fresh As Ice Is Cold』という12"レコードも発表。他にも、Oliver Chesler(The Horrorist)のNarcanosis、DJ Dano & Liza N Eliaz、Blue Calx(Naoto Suzuki)などのレコードをリリースし、ダークコア~インダストリアル・ハードコアの発展においてもMokum Recordsは関わっている。

「Noël(DJ Hidden)と二人でデモのカセットテープを制作して、1992年から 1996年の間、大体4ヵ月ごとに送り出していたんだ。レーベルからは一切返事が無かった。かなりモチベーションが下がったよ。音楽制作は、やることそのものが報酬であって、そうあるべきだと信じているけど、しばらく制作を続けていくうちに、作品によっては俺達のお気に入りのレーベルでリリースされているトラックに勝るとも劣らないものが出来ていると感じていたから、納得がいかなかった。1996年に、最後にもう一度だけデモを送り出すことにしたんだ。もしそれでダメだったら、俺は諦めるつもりだったんだと思う。Rave Records、Rotterdam Records、Ruffneck Records、Mokum、Coolmanといった当時好きだったビッグレーベル全てに送ったよ。驚いたことに、数週間後にCoolman RecordsのTim Brouwersから電話がきたんだ。

電話ではとにかく平静を装って、レコードレーベルとの取引に慣れている風に話すようにしたんだけど、絶対先方にはバレていたはずだね。Timは俺の「The Underground」という曲にとても興味を持ってくれていた。レーベルの事務所でRob Janssen(DJ Rob)とTimと会って、二人は俺達の最初のレコードに収録する4曲を選んだ。何年もの努力の末に取れたレコード契約だったから、本当に報われた気持ちになった。それで、信じられないことに数ヶ月後には、他のレーベルからもどんどん連絡が来たんだ。正確には、母親のところに連絡が来たんだけど。当時はまだ実家に住んでいたから、電話は必ずと言っていいほど、母が最初に出るんだ。レーベルの担当者は皆決まって、「The Undergroundをうちで出せないか」と訪ねて、こっちがもうリリースが決まっていることを伝えると、向こうは決まって「そうか。残念。じゃあな」となる。でも、MokumのFred Berkhoutが電話してきた時だけは、少し違った。彼は、「そうか。残念だな。あの曲は気に入ってたんだ。じゃあ新しいのを四曲作ってくれないか ?」と来たんだ。それがMokumとの付き合いの始まり。最初のユニット名の X-Factor名義だと、 Coolmanとの専属契約の縛りで使えないから、Noëlが考えたThe Outside Agencyという新名義でやることにした。Mokumのリリースから数ヶ月後にCoolmanのレコードが出たんだけど、正確にはCoolmanの方が俺達のファーストレコードということになる。

正直に言うと、初期に送り出していたトラックは、自分達で思っていた程優れていなかったということなんじゃないかな。1995~ 96年に制作していたものは、もっと良くなっていた。あとは、やっぱり運だね。Mokumの事務所にはレーベルに届いた大量のデモテープを入れた箱があって、その中からテープを掘り出して聴いて貰えたというのは、相当運が良かったとしか言えないね。巨大な箱だったよ。常時100本以上、カセットが入ってたと思う。きっと、そのままその箱の中に埋もれてしまって、日の目を見なかった名曲が沢山あるんだろうな。Fredはたまに思い立って、テープを掘り出しては聴いてみるという具合だった。数秒以内に心を捉える何かが無いとなれば、そのままゴミ箱行き。」

Eye-D(The Outside Agency) インタビュー/『ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編』から

2000年代に突入してからリリースペースは落ち着いていくが、DJ SHARPNELのリミックスを収録したThe Speed Freakの12"レコード『Psychotoxic』やFrazzbass、The Twins Artcore、Painbringer、Peckerhead、Tha KroniKといった次世代プロデューサーのデジタル・シングルをリリースしていき、Mokum Recordsの伝統的なサウンドはハードコア・シーンに継承されていった。特にその中でも、今回来日するThe Twins Artcoreの作品を聴くとMokum Recordsのビジョンとサウンドを明確に受け継ぎ伝統を守りながらも新たなハードコアの可能性を追求しているように思えた。現在のMokum Recordsを代表するアーティストの一人であるThe Twins Artcoreのプレイは見逃せないだろう。

以上、駆け足でMokum Recordsの歴史を振り返ってみたが、まだまだ紹介すべき素晴らしい作品をこのレーベルは残しているので気になった方はまずBandcampからチェックしてみて欲しい。そして、7月13日の30周年記念イベントではMokum Recordsのクラシックから最新曲までプレイされると思うので、ガバ/ハードコア・ヘッズは是非とも足を運んでみてください。




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